スタイルズ荘の怪事件
スタイルズ荘の怪事件
著者:アガサ・クリスティ
訳者:矢沢聖子
解説:数藤康雄
★★★☆☆
言わずと知れたポワロのデビュー作。
このころのポワロはベルギー警察を引退したばかりの60歳前後。
ヘイスティングズ30歳。
ヘイスティングズの若さゆえの未熟さが、なんともかわいい。
この作品に使われているトリックは、薬剤師としての経験を活かしたクリスティらしいトリック。
富豪の女性が毒殺され、一番怪しいのは年下の夫。
この夫の犯行だと思われるような証言や証拠ばかり集まってくることに、逆に疑問を抱くポワロ。
ここでのポワロの常人を越えた観察力、推理力には舌を巻くばかり。
ヘイスティングズや読者も、ポワロとほとんど同じものを見聞きしているはずなんだけどな。
ま、ポワロには自分が得たヒントを最後まで隠してしまう悪い癖もあるんだ。
だけど、ポワロもいろいろとヘイスティングズを通して読者にヒントを与えてるんだよ。
でも、それが何を意味するのかは、ポワロにしかわからない。
クリスティ初期の作品ということで、なんだか少しぎこちなさも感じる。
ストーリー展開に影響するほどではないのだけれど。
まだまだ素人とプロの間をさまよっている感じなのかな。
クリスティ作品は、1度目より2度目、3度目も楽しめると思う。
結果がわかった後で読み返すと、様々に散りばめられた伏線に気づくのだ。
ポワロの行動の意味、言葉の意味がわかって、初読と違った感動を得られる。
自分が思っている以上にロマンチストで惚れっぽいヘイスティングズ。
この作品でも、やらかしちゃってる。
勘違いから、ある女性にプロポーズしてしまうのだ。
ヘイスティングズの恋物語もホノボノとした雰囲気でいいな。
一種の清涼剤とでもいうべきか。
これ以降の作品でも仲人役を務めることの多いポワロだが、本書でも2組のカップルを作り上げてしまった。
男女の心の動きに敏感なポワロならでは。
なのに未だ独身と思われるのはなぜ?
女性の心を読むことには長けていると思うのだが...。
やはり、その滑稽な容貌と、几帳面過ぎる性格が災いしているのかな。
初読は20年以上前。
今回で何度目の再読になるのかな。
何度呼んでも飽きないクリスティは最高だ。
しかも、読むたびに作品から受けるメッセージが異なる。
自分の成長とともに、受け止め方も違ってくるんだろうな。
しかし、訳者によって「ポワロ」になったり「ポアロ」になったりするが、どちらが正しいのだろう?
私は「ポワロ」だろうと思っているのだが。
「Poirot」と表記されるのであれば、やはり「ポワロ」だよね...。
DVD
「名探偵ポワロ[完全版]Vol.11」
「名探偵ポワロ 完全版 DVD-BOX 1」
原作を忠実に映像化した作品。
多少登場人物が削られてはいるが、期待を裏切らない出来だと思う。どこにも不満がない。
それにしてもスーシェのポワロは最高!
これほどまでにクリスティーの原作通りのポワロを演じられる人はいない。スーシェ以外のポワロは見る気がしなくなるほどだ。
初めて観る人にもポワロの秩序好き、清潔好きなキャラクタが判るように、細かな動作ひとつひとつが計算されているよう。ヘイスティングスもイメージ通りだし、ジャップ警部も。
イギリスの田舎の田園風景の美しさも、観る価値あり。
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