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2008/10/31

もの言えぬ証人

もの言えぬ証人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:直井明
★★★★☆

捜査依頼の手紙を受け取り、その現場に向かったときには、時既に遅し。当の依頼人は死亡した後だった。医者も病死だったと断言しているその死に疑問を抱き、捜査を開始するポワロ。依頼人のいない事件だから、捜査するにしてもすんなりとはいかない。あれやこれやと嘘のオンパレード。ポワロの口の上手さには、舌を巻くばかりだ。疑り深い田舎の人々を信用させては、いろんな事実を聞き出していく。

被害者エミリイの死に対して、ポワロだけが殺人事件なのだとこだわり続ける。中盤まではヘイスティングズでさえも、あきれるほど。ポワロが殺人だと確信した理由はなんだったのか...。

キッカケは『手紙』だ。書かれている日付から2カ月も過ぎて届いたエミリイからの手紙。しかもその内容は、エミリイの命が危険にさらされている可能性を示唆するものだった。それに興味を覚えて依頼人を訪ねてみると、既に死亡したという。
死亡原因は肝臓病によるものとされていたが、死の直前に起こったエミリイの階段からの転落事故について聞き、その階段に足を引っかけるように故意に糸を張ったらしい形跡をみつける...。エミリイの死は病気によるものだったかもしれないが、殺意を持った人間がこの場所にいたことだけは確かだと、そういってポワロは犯人を追い始めるのだ。
結局はエミリイの死自体も、殺人だったということになるのだから、ポワロの殺人事件に対する嗅覚は、本当に犬のようだ。

犯行の手口は、それほど目新しいものではない。しかし、犯人の心理というか、性格は、クリスティ作品らしいと思う。また心理的なミスディレクションも見事なもの。
誰もが疑わしく思える中で、終盤に近づくにつれ、ある一人の人物に疑いが集中する。そして最後の最後で、関係者が集められポワロが明らかにした真犯人は、非常に意外な人物だった。

この手の犯人は好きだな。決して"お友達"にはなれないけれど、ミステリの犯人としては魅力的。
自分の立場を充分に理解した上で、その役回りを上手に利用している。とても頭のいい犯人だと思う。

このミステリのタイトルにもなっている"もの言えぬ証人"ことボブ君。
クリスティ自身、大の犬好きだったそうで、ボブ君もとても生き生きと描かれている。やんちゃな犬ならこんなこと考えてそうだなとか、こんなふうにちょっかいだしてきそうだなとか、そんなシーンが一杯。
私も犬がとても好きなので、作者の犬への愛情も伝わってくるような気がした。

クリスティはこの作品の中でも過去の作品について触れている。ポワロがかつて解決した4つの事件の関係者の名前を口にするのだが、解説されている直井明氏のおっしゃるとおり、まだこの4つの作品を読んでいない方は、ここだけは飛ばしたほうがいい。というより、この作品を読む前に読まれることをお薦めする。
クリスティも罪なことをするものだ。

ちなみにこの4つの作品というのは、『雲をつかむ死』『スタイルズ荘の怪事件』『アクロイド殺し』『青列車の秘密』である。

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2008/10/30

ひらいたトランプ

ひらいたトランプ
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:新保博久
★★★★☆

ブリッジの勝負の真っ最中に殺人事件が起こる。そこに居合わせたポワロは、ブリッジの得点表をもとに関係者の心理を分析し、真相を追い始める。

ブリッジのルールを知らないため、関係者の心理の動きがよくわからず、1回読んだだけの作品だった。
今回、15年ぶりくらいに読み返したが、なかなかどうして、非常に面白い作品だ。先入観はいけないな...。

被害者のシャイタナ氏は、人の秘密を嗅ぎつけてはその人をチクチクいじめて楽しむ悪魔のような男。ポワロは、そのシャイタナ氏からあるパーティへ招待される。そこで、かつて完全犯罪を犯した殺人犯のコレクションをお見せしますと言われるのだ。危険だからやめなさいというポワロの忠告を無視したシャイタナ氏は、案の定、そのパーティで殺害された。

容疑者は4人。全てが過去に殺人を犯した可能性のある人物ばかり。
そしてそのパーティに招待された探偵役も4人いた。現役の警視であるバトル。有名な探偵作家オリヴァ夫人。諜報局員であるレイス大佐。そしてエルキュール・ポワロ。
4人の殺人者に4人の探偵。
シャイタナ氏らしい悪趣味なパーティだ。これだけ殺されても仕方ないと思わせる被害者も珍しい。

前述したように、この作品を読むのは2回目。しかし、すっかり騙された。ずっとある人物が犯人だと思いながら読んでいて、最後の最後でドンデン返し。気持ちがよくなるくらい、完璧に騙された。
容疑者4人の過去の"犯罪"が暴かれていく様も見事である。

ブリッジのルールを知らなくても、充分にこの作品の面白さは味わえる。しかし、ルールを知っていれば、もっと楽しめると思う。この作品の再読にあたってとても参考になったサイトをご紹介しよう。ブリッジも面白そうなゲームだ。
 
かずちゃんのブリッジって何?

クリスティ作品でよくある他のミステリへのコメント。この作品でもでてくる。
ポワロがある女性に過去の犯罪の凶器を見せてあげると言うのだ。12人の人々が1人の男を刺したという短剣。有名な作品だが、どのミステリか、おわかりだろうか?

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2008/10/29

メソポタミヤの殺人

メソポタミヤの殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:石田善彦
解説:春日直樹
★★★☆☆

被害者の付き添い看護婦の回想録として書かれている。
この事件で初めてポワロと出逢った彼女から見たポワロも新鮮。
私立探偵と聞いて、シャーロック・ホームズのようなイメージを抱いていたレザラン看護婦。実際にポワロと会ったときには、きっとすごく驚いたことだろう。

中近東らしい妖しい雰囲気の中、麗しい美女が寝室で頭を殴られて殺される。その寝室に出入りできる人物は、一緒に暮らしていた遺跡調査隊のメンバーだけ。一体誰が犯行に及んだのか...。
みんながみんな何かしらの蔭を背負っているようで、誰もが犯人のように思えてしまう。

思いやりがあって美しくて、頭もきれる。こんな誰もが愛さずにはいられなくなる女性が、被害者ルイーズである。
ただし、これは表面上だけのこと。実際の彼女は、自分が中心にいなければ気が済まないタイプ。頭がいいから、ごまかすことが上手で表面に出すことはしないが、巧みに人の心を操って、自分に関心を向けさせようとする。そんな彼女の性格が、自らの命を落とす要因となった。

ポワロも捜査当初から、被害者の性格をつかむことに専念する。物質的な証拠ではなく、ルイーズの性格こそに真相を暴く鍵があるというのだ。最後に真相にたどり着きはしたが、犯行を裏付けるだけの"物質的な"証拠は何もない。しかし"心理的な"証拠は充分だった。

最近読んだポワロものの中では自己中心的で同情の余地のない犯罪者ばかりと出会ってきたが、これは非常に悲しい殺人だ。自分勝手な犯行ではないとは言えないが、"冷たい"犯罪ではない。

この事件を解決したポワロは、ロンドンへ戻るときにオリエント急行に乗る。
ここであの有名な殺人事件に出逢うのだ。

いつか、ポワロの事件年表を作ってみたい。ハヤカワのクリスティ文庫の順番じゃないようだ。

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2008/10/28

春にして君を離れ

春にして君を離れ
著者:アガサ・クリスティ(メアリ・ウェスト. マコット)
訳者:中村妙子
解説:栗本薫
★★★★★

ほかのクリスティ作品と違って、誰も殺されないし、何も盗まれない。
ただ一人の主婦の回想物語。
しかし、さすがクリスティ!と思わせる一冊である。

「可愛い子供たちに囲まれ、優しい夫にも恵まれ、私って、なんて幸せなんでしょう。」と思っているジョーン。
バグダッドに住む末娘の見舞いからイギリスに帰る途中、天候不順のため数日間、動きがとれなくなってしまった。話す人も誰もいない、読むべき本もないところで、できることは自分について考えることだけ。考えるにつれて、愛に満ちていたはずの家族との関係に疑問を抱き始める。
彼女が何におびえているのか、何をおそれているのか、読み進めるうちに徐々に明らかになり、ついに彼女は、夫の本当の姿、子供たちの本心を知ることを無意識に避けている自分を見つける。それを知ったときのジョーンのとった行動もまた、彼女らしいものだった。

夫の言葉、子供たちの言葉が、ジョーンの心の動き次第で別の意味を帯びてきて、「幸せ」というものの儚さを感じずにはいられない。

ジョーンの心の描写だけで話は進んでいくのだが、全く飽きさせることのないクリスティの力に感服。

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2008/10/27

ABC殺人事件

ABC殺人事件
著者:アガサ・クリスティ
訳者:堀内静子
解説:法月綸太郎
★★☆☆☆(2個半かな)

クリスティの代表作の一つだと言われている。私はあまり好きな方の作品ではないのだが...。
どちらかというと「謎解き」がメインというよりは、ドキドキするスリルを味わう作品なのかという気がした。
ヘイスティングスの記述と、第三者の記述を交互に入れるという手法も、そう思わせる要因かも。

閉ざされた人間関係の中で起きる殺人事件が出てくることが多いクリスティ作品だが、この作品では、いくつもの人間関係の輪っかが登場する。全く関係のない輪っかが、殺人者ABCによって鎖のように繋がっていくのだ。

ただ単にアルファベット順に選ばれただけに見える被害者たちを結びつけるものは何なのか...?
なぜポワロに殺人予告の挑戦状を送ってくるのか?
犯人の姿が見えない状態から、徐々に真相へと近づいていくポワロ。
終わりに近づくにつれ、緊張感が増してくる。

最初の3つの殺人には、犯行の動機も機会もある人間が、すぐ近くにいる。この犯人は、確かに個々の殺人の中で、他の人を巻き込まないように気を遣っていたかもしれない。全て「ABC」の犯行であると思わせるために。
だけど、結局は一番卑劣な方法で人を陥れようとした。ポワロがいうように、全く「フェアではないし、スポーツマンらしくない」犯行である。

この作品の冒頭で、久しぶりにヘイスティングスと再開したポワロが彼に語る。
最近はどうですかと問うヘイスティングスに対して、

***以下引用***

「つい最近も、危ないところだったんです」
「失敗しそうだったんですか」
「とんでもない」ポアロはぎょっとしたようだった。「だが、わたしが - わたし、このエルキュール・ポワロが、もう少しで抹殺されるところだったのです」
わたしはヒューッと口笛を吹いた。
「大胆な殺人者だな!」
「いや、大胆と言うよりは軽率です」

***引用終了***

これって、「三幕の殺人」のことだよな。
また、ジャップ警部との会話にも過去の事件が出てくる。
列車の殺人...。これは「オリエント急行殺人事件」かな。
航空機内の殺人...。これは「雲をつかむ死」。
そして、上流社会の殺人...。これも「三幕の殺人
こういうのって、見つけると嬉しい。ちょっとした宝探しみたいな感じで。

そしてもう一つ。
最初の方でどんな殺人事件を注文しますかとヘイスティングズに聞かれたポワロが答える。

***以下引用***

「四人の人間がブリッジをしていて、それに加わらない一人が暖炉のそばの椅子に座っている。夜更けになって、暖炉のそばの男が死んでいることが発見される。四人のひとりが、ダミーになって休んでいるときに、そこにいって彼を殺したが、ほかの三人はゲームに夢中になっていて気づかなかった。ああ、それがあなたにふさわしい犯罪ですよ! 四人の内の誰がやったのか?」

***引用終了****

注文通りの犯罪にその後関わることになった。
ひらいたトランプ』だ。
この作品については、近日掲載予定。

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2008/10/26

名探偵の呪縛

名探偵の呪縛
著者:東野圭吾
★★☆☆☆(2個半かな)

導入部は、なかなか話の流れについていけず、困った。
名探偵の掟』を読み終えた直後だったせいかもしれない。
その世界を引きずったまま、読み始めたため、上手く切り替えられなかった。
出てくる探偵は両方とも「天下一探偵」だし、「大河原警部」も登場するのだが、小説の色は全然違う。

天下一が迷い込んだ街は、歴史のない街だった。
誕生してから百数十年しか経っていない街にもかかわらず、誰がどのように創り上げてきた街なのかが全く不明な街。
その街で、街の創設者(クリエイター)らしきミイラが発見され、そばに埋められていたはずの『何か』が盗まれる。
その謎を解くように依頼された天下一が、訪れる先々で関係者が殺害されていくのだが、その街は「本格推理」という概念が欠如した世界だった。密室殺人が起きても、誰も何も疑わず自殺だと決めつけてしまうような。
しかし、天下一探偵が謎を解き明かしていき、最後の最後に、この小説全体の謎が解き明かされるわけだ。
この街を作ったのは誰なのか、盗まれたのは何なのか、誰が盗んだのか...。

この本も「謎解き」をメインに読む本ではない。
著者の「本格推理」への想いを綴った小説だろう。
読み終えた後の満足感はそれなりに得られるのだが、「それなりに」だ。
「本格推理」自体を読みたい人には、お薦めできない。

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2008/10/25

レベル7

レベル7(セブン)
著者:宮部みゆき
★★★☆☆

最初に記憶を失った男女が登場。
お互いに、相手が誰かも、自分が誰かもわからない状態の二人。
登場人物二人も、読んでいるこちらも、何から何まで謎だらけ。
それが次第につながり始めていく...。

途中で本を置くことができずに、一気に読み切ってしまう一冊だ。
結構厚めの本だが、それを感じさせないほど。

ただ、「犯人」登場後は、何か肩すかしをくらったような気がした。
「犯人」について、そして「犯行」の背景について詳しく描写しないのは、あえてそうしたのか。
しかし、ちょっと物足りないな...。
途中までが、展開も良くて、勢いがあったものだから、余計にそう思うのかもしれない。

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2008/10/24

理由

理由
著者:宮部みゆき
★★☆☆☆

初めて読んだ宮部みゆき氏の小説。

すでに解決した事件の関係者への取材という形式をとって、事件が描かれていく。
正直言って、とっかかり部分はなかなかなじめなかった。
徐々に小説の中に引き込まれていった感じ。
文庫本で670頁を超える小説だけど、200頁あたりから一気に読み進めた。

しかし、「推理小説」ではないなと思った。
「ミステリー」ではないな、と。
ドキュメンタリーに近いか。

登場人物の描写はとても素晴らしくて、だから小説の世界には、ぐんぐんと引き込まれていった。
人と人との関わり方、いろんな家族のあり方についての描写は、魅力的。
が、一番重要な人物について、その人生の背景を描かなかったのは...?
そのあたり、私には少し物足りなかった。
事件がなぜ起こったのかは、読みとることができないままで、少し消化不良気味だった。

「事件の謎解き」よりも「人・家族のあり方」に重点を置いた小説なんだな、と思った。
「推理小説」だと思いこんで読んだこちらが悪かったかもしれない。

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2008/10/23

うつ病を体験した精神科医の処方せん

うつ病を体験した精神科医の処方せん
著者:蟻塚 亮二

失礼ながら、今回の記事は読後記ではない。
本日、著者である蟻塚 亮二氏の講演会が沖縄・那覇市であった。
以前から本書を書店で目にしており、買おうか買うまいか迷っていたところだったので、その著者の講演会ということで、足を運んでみた。

本を読む前に何故記事を書こうと思ったか。
それは、次の蟻塚氏の話に感銘したからである。

病気を治すということはどういうことか。
病気が治ったとはどのような状態か。

たとえば、骨折が治ったとは、骨が以前の状態に戻ったことをいうのであろう。
たとえば、インフルエンザが治ったとは、熱も通常通りになり、体調が元の状態に戻ったことをいうのであろう。
では、うつ病が治ったとは?

私は意識的にか無意識にかはわからないが、うつ病にかかる以前の自分に戻ることだと思っていたようだ。
しかし、蟻塚氏は言う。
うつ病になる前の状態に戻ったら、あなたはまた、うつ病になりますよ、と。
なんだか、とても大切なことに気づかされた思いだった。

以前から、生活改善、思考改善と言われてはいたものの、おそらく心では理解はしていなかったのだろう。
そのことを、初めて認識できた気がする。

うつ病が治るということは、以前の自分に戻ることではなく、新しい人生を始めることに等しいのだ。
人生の軌道を、ほんの少し以前の自分とずらしていく。

全てに対して0%か100%かで判断しないようにする。
1つの物事にとらわれすぎないようにする。
今までの自分を振り返って、少し柔らかくできる部分を探してみる。
自分にも他人にも、少しゆるめの考え方を許してみる。
頼まれたことを全てできなくても、構わないんだと思ってみる。
自分の能力は、それほど高くないことを認めてみる。
少しずつでいいから、軌道修正していくことが大切なのだ。

そんな感動を受けて、まだ記憶の新しいうちに記事に残しておこうと思った。
次に書店に寄った時には、蟻塚氏の本を購入しようと思う。

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雲をつかむ死

雲をつかむ死
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:紀田順一郎
★★★☆☆

大空を飛んでいる飛行機という密室の中で起きた殺人事件。
ポワロから数メートルも離れていないところで犯行に及ぶなんて、大胆な犯人だ。

犯行可能な人物は、乗務員とポワロを含めて13人。
それほど広くもない機内で、誰にも気づかれずに被害者に近づくなんて無理な話。
ましてや被害者の首筋に毒矢を刺すなんて...。
だけど殺人が行われたのは事実。
そこには心理的なトリックが隠されていた。

当初から乗客の所持品にこだわり続けたポワロ。
所持品のリストから、早々と犯人の目星をつけてしまう。
後でポワロの推理を聞いてみれば「なるほど...」と思うのだが、普通は気づかないだろう。
それぞれの人物らしい所持品ばかりで、違和感は無かったのだから。
それでもやはり「ちょっとした違和感」は感じてもおかしくないんだよな。
そこに目をつけるポワロって、やはりスゴイ。

他人の恋愛ごとに手を貸すのが好きなポワロ。
ここでもまた...。
2人がうまくいったのかどうかは最後までわからないが、きっと幸せに楽しく暮らすことになるのだろう。

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2008/10/22

三幕の殺人

三幕の殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:長野きよみ
解説:日色ともゑ
★★★☆☆

このミステリでは、3人殺害されるのだが、非常に動機が特殊である。
利己的な殺人者の出てくるミステリは、これまでにもたくさん出逢った。
しかし、これほどまでに自分の都合だけで行われた殺人は初めてだ。
小説の中のこととはいえ、被害者の遺族の気持ちを考えると、たまらない。
こんなことで殺されるなんて...。

このミステリの特徴は、「動機」。
ポワロをもすら悩ませた殺人の「動機」。
人間って、こんなことで殺人を犯すものか?
だけど、この犯人ならやりかねない。
そんな風に感じさせるのは、クリスティの人物描写の上手さなのかもしれない。

さて、このミステリにはクィン氏のシリーズでおなじみのサタースウェイト氏が登場する。
ということは、必然的に彼は犯人じゃないってこと...?
いやいや、時々びっくりするようなドンデン返しが起きるクリスティ作品。
簡単にサタースウェイト氏を除外するわけにもいかない。

この事件はポワロ最大の危機が迫った事件でもある。
この言葉の意味は、ミステリの最後の1ページで明らかに。

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2008/10/21

裁判長!ここは懲役4年でどうすか

裁判長!ここは懲役4年でどうすか
著者:北尾トロ
★☆☆☆☆

えっとね...。
面白くないわけではないんだな。
文体も読みやすいし、基本的にワイドショーを観るおばさまたちと同じような野次馬的視点から裁判を見ているから、わかりやすいといえば、わかりやすい。
しかし、ところどころ「?!」と思うところもある。
殺人事件やレイプ事件、痴漢事件などに対する著者の語り口に、心に受け入れられない部分が出てくるのだ。

レイプ事件では、被害者本人の証言の際などには、傍聴者を退場させることが多いらしいのだが、「そこが一番聞きたいところなんだよ!」と言ってしまうあたり、事件の重さを認識しているのかどうか、疑問に思う。
痴漢事件での傍聴談のところでも、「ぼくも以前、一度でいいからチカンをしてみたいと思って何日間か電車に乗り込んだが...」と書いてしまうし。
やはり、視点のレベルの低さを感じるんだよね。
逆に言えば、その視点の低さによって、裁判所というものの敷居をも低くしてくれているのかもしれない。

でも、不快感はぬぐえないなぁ。
ワイドショーなどでも何度か取り上げられた幼児殺害事件の傍聴の際にも、「こんな事件の裁判を傍聴してみたかったんだよな。面白そうだな。ラッキー♪」といったようなノリで語られてしまうと、やはり不快だよ。
あえて、そういう口調で語っているのか、本音なのかはわからないけれどね。

いろんな種類の裁判について、(あくまでも著者の視点ではあるが)語られているので、裁判員制度導入の前に読んでおくのも悪くはないかなとは思う。
ただ、読む側の姿勢によっては、「面白い」「面白くない」、「愉快」「不愉快」の評価が綺麗に分かれる一冊だろう。

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2008/10/20

オリエント急行の殺人

オリエント急行の殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:中村能三
解説:有栖川有栖
★★★☆☆

クリスティのミステリの中でもとても有名な1冊。

国籍も、階級も違う乗客たちが乗り合わせた列車の中で殺されたのは、その昔、幼い少女を誘拐し殺害したにもかかわらず無罪となった男だった。
大雪のため動けなくなった列車の中で起こった殺人。
全ての乗客にはアリバイがある。
証言にも矛盾がない。
それでもやはり、犯人はこの中にいるのだ。

中盤までは全く五里霧中の状態だった。
誰にも殺人なんてできるはずがないのだから。
全ての乗客に完璧なアリバイがある。
それが後半に入ったとたん、次から次へと色んな事実が明らかになっていく。
証言に隠された嘘が明らかになるにつれ、意外な人間模様が見えてくる。

初めて読んだときには、それはそれは衝撃を受けた。
今回、約15年ぶりに読み返した。
もちろん犯人は覚えていた。
だからこそ、このミステリの巧妙さに改めて感動したのだ。
何も知らずに読んだ時の衝撃、知った上で読んだ時の感動。
いつも言うが、クリスティの作品は、何度でも楽しめる。

「殺人」という犯罪に対して、常に厳しい態度を崩さないポワロが、この事件では2種類の推理を披露する。
真実を示した推理と、犯人は列車外へ逃げてしまったという推理の2種類。
そして、列車の責任者に対し、どちらかを選ぶようにと話す。
真犯人への同情からだろうか。
真犯人は誘拐事件の被害者である幼い少女の関係者。
誘拐犯が無罪となったときの無念さ、自ら死刑を執行しようとした気持ちもわからないわけではないけれど、常に真実の味方であったポワロらしからぬ結末に、少しスッキリしない。
なので、★3つなのである。

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2008/10/19

エッジウェア卿の死

エッジウェア卿の死
著者:アガサ・クリスティ
訳者:福島正実
解説:高橋葉介
★★★★☆

エッジウェア卿の妻、ジェーン・ウィルキンスンの魅力の虜になってしまった。
これほどまでに自分自身を演じきられたら、お手上げだ。
常に他人の目から見た自分を計算して行動している女性。
生まれついての女優なのだろう。
それが成功していることを自覚しているからこそ、男性は全て自分に従うものだと信じて疑わない。

一個人の離婚問題などを手がけることなど考えもつかないポワロに、夫に離婚を承諾してもらうように話してくれと依頼するなど、彼女しかできまい。
戸惑いながら断るポワロを、最終的にはイエスと言わせてしまうジェーン。
そのときのポワロと彼女の友人のやりとりが印象的だった。

***以下引用***
「ムッシュー・ポアロ、あなたもやっぱりつかまりましたね。わがジェーンはあなたを説き伏せましたか? 彼女の味方になってくれるように。無理はありません。遅かれ早かれ、彼女のいうとおりにならざるを得ないのですからね。彼女は"ノー"って言葉を知らないんですよ」
「おそらくまだ"ノー"に出会ったことがないのでしょう」
****引用終了***

誰からも"ノー"と言われたことがない女。
それがジェーン・ウィルキンスンなのだ。
「この作品の魅力=ジェーンの魅力」だと私は思う。

もちろんトリックの方も、負けず劣らず、ではある。
あのポワロまでもが途中まで犯人の思惑通り騙されてしまったのだから。
物語の冒頭でヘイスティングズが語っているように、道ばたで偶然すれ違った見知らぬ男女の会話から、真相にたどり着いたポワロ。大胆すぎる犯行であるがために、かえって真相が見えにくくなってしまったのだろう。もしその男女とすれ違うことがなかったら、さすがのポワロも、まんまと犯人にしてやられることになったのかも...。

本書の最後に犯人の手記が書かれている。
あまりに利己的で、ある意味で無邪気な犯罪に、ゾッとした。
一度読んだら忘れられないミステリのひとつである。

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2008/10/18

P.S.アイラヴユー(映画)

原作の感想はこちらで。

原作は、ちょっとガッカリ★2つだったのだけれど、映画の予告は、とても好印象だったので、観てきた。
原作を上回る映画って、あまりないよなと思いつつ、これは例外かも...と期待していたのだ。

が、登場人物の設定が原作とあまりに違っていて、最初、すごく混乱した。
主人公ホリーの母親が、なんで近くに住んでんの?とか。
ダニエルの設定は何者なの?とか。
この辺は、原作を読んでいない方がわかりやすく受け入れられたのかもしれないな。

原作では、夫を亡くしたホリーの投げやりな生活ぶりが、すごく伝わってきたんだけれど、映画のほうでは、それほど落ち込んでる風に見えなかったんだよね。
友人の幸せに嫉妬する場面とかも、イマイチ伝わりにくかったかな。
短い上映時間で、ホリーの混乱ぶり、一喜一憂する様を描くのは、ちょっと難しいだろうね。

ラストは、原作とは思いっきり異なってた。
どっちがいい?って聞かれたら...。
どっちもどっち、っていうかな(苦笑)。

予告編は100%のできだったのになぁ。
本編が原作と同じく★2つなのは、残念。
期待外れだった。

あ、ただ、私の大好きな「フレンズ」に出てくるフィービー役のリサ・クドローが出演していたのがサプライズで、この映画を観てよかったなぁと思った唯一のところだった(^^)

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「7kg痩せろと言われても。」「リバウンドするなと言われても。」

7kg痩せろと言われても。
リバウンドするなと言われても。
著者:鳥居志帆
★★☆☆☆

ダンナと二人揃って人生最高体重を更新中の昨今、「ダイエット」が我が家のキーワードである。
幸い近所にスポーツジムができて、早速入会。
週末2日の午前中に通うも、なかなか効果は現れず。
しかし、同じものを食べ、同じように動いていると思われるダンナは、どんどん痩せていくようだ。何故...?
基礎代謝の違いだろうな~。

ま、そんなこんなで、「ダイエット本」であることと「マンガ」であることを理由に、ダンナから購入を許されたのが、この2冊。何らかの参考になれば、と思って買ったのだが...。

まずは1冊目「7kg痩せろと言われても。」
イラストレーターである著者は、出版社の編集者からダイエットをテーマとした企画本の依頼を受けるのだ。
まずは、5ヶ月で7kg痩せるという企画だった。
甘い物好きで動くことはあまりすきではない、おまけに代謝が悪いという著者。
私となんだか似ている気がする(苦笑)。
では、少し参考にさせてもらおうと読んでみた。

が...。ちょっとは参考になるかもしれない。
ある程度は、知識が増えるかもしれない。
あぁ、こんなダイエット方法があるのね~みたいな、知識が。
でも、ダイエットのための費用は全部出版社持ちという著者と同じ方法が安月給の私に真似できるとでも...?!
結局、ただただ流して読んで、はい終わり、という感じで読み終えた。

いろいろとお金をかけて、様々なダイエット方法を試みた著者は、見事に5ヶ月間で7kgを落とした。
それは、まぁ、これだけお金かけりゃな...、というひがみがないでもない。
ダイエットの参考になるかどうかはわからないが、暇つぶしに読んでみるにはいいかなと思う。

さて、2冊目「リバウンドするなと言われても。」編。
ここからは「7kg痩せろと言われても」を読んでからがよいかも。

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2008/10/17

邪悪の家

邪悪の家
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:石崎幸二
★★★★☆

殺人のトリックらしいトリックは無い。
ただ中盤まで殺人の動機が不明なのだ。
その動機が明らかになったとき、おのずと犯人に迫っていく。

動機がわからないから、誰を疑っていいのかわからない。
しかも、みんながみんな何かを隠しているようで、誰もが疑わしい。
ポアロが真実にたどり着くきっかけとなったのは、ヘイスティングズの他愛ない一言。
その一言を聞くまでは、ポワロですら犯人の思惑通り、全然違う方に向かって推理を展開していたのだ。
最後まで読んで真実を知った後なら、なるほどと思うのだが、そのときは何がなにやらわからなかった。
ポワロが何にそんなに驚いているのか、何に気がついたのか...。

この犯人、かなり魅力的。
すごく利己的で、狂気に近いほどの執着心を持っていて、大胆不敵。
ポワロの名声を知った上で、彼を利用しようとするんだもんな。
一度読んだら忘れられない殺人者の一人だ。

そうそう、本書ではポワロが最後まで解けなかった謎が出てくる。
最後の最後に、謎を投げかけた本人に尋ねて、その謎は解決。
何の罪もない女性が殺害された重い事件だったのに、締めくくりのユーモアのおかげで、少しさわやかな気分で本を閉じた。

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2008/10/16

イマイと申します。-詐欺を追いつめる報道記者

イマイと申します。―詐欺を追いつめる報道記者
著者:日本テレビ「報道特捜プロジェクト」
★★★★☆

沖縄では日本テレビの番組は、イレギュラーな時間帯に放送される。
たとえば、「ザ!鉄腕!DASH!!」は、土曜日の夕方に放送されるし、「世界一受けたい授業」とかは、放送時間があまりにあちこち変わるので、しょっちゅう見逃してしまう。
なので、この「報道特捜プロジェクト」も沖縄で放送されたかどうか、よくわからない。
少なくても、私は見た覚えがないんだよね...。
で、なぜこの本を手に取ったかというと、フジテレビのスマスマで、「ナマイ記者」というコーナーを知っていたからなのだ。冷静な中居くんと、追い詰められて慌てふためく香取くん。この2人のやりとりが面白かった。
この元ネタが「イマイ記者」だと知ったので、興味を持ってページをめくってみた。

いやいやいや、これほどまでにぶっ飛んだやりとりがなされているとは...。
騙す方も、いろいろなんだな。
世界をまたにかけて詐欺行為をしているグループもあれば、20歳そこそこの若いヤツらが3,4人集まって、ちょっと儲けてみようか的な雰囲気で軽~くやっちゃってるグループもある。

ネタは海外の宝くじだったり、架空請求だったり、懸賞詐欺だったりするのだけれど、なんか騙すならちゃんと準備しろよ~ってツッコミたくなるようなものもあった。
番組の視聴者から送られてきたハガキをもとに、イマイ記者が懸賞詐欺の会社へ電話をする場面があるのだが、詐欺会社が「お名前は?」と訪ねる。もちろん、そのハガキはイマイ記者に送られてきた訳ではないのだから、会社の方に登録はされていないはずだ。
しかし、詐欺会社のオペレータは言う。「イマイ様ですね。お客さま、見事A賞のほうでご当選なさったということで、こちらに、通知のおハガキのほう、送らせてもらったんですね。」と...。
ハガキの送付先くらい、メモっとけよ!って思うのは私だけだろうか...?

スマスマの「ナマイ記者」と違うところは、こちらは報道魂のこもった取材を続けているところだ(当然だが)。
住所や電話番号を相手方から聞かれた場合も、嘘をつくことなく、いろいろと工夫をして相手の懐に飛び込んでいく。どんなに脅されても、呆れられても、なだめられても、無視されても、相手の正体を暴くため、執念深く追いかけていく。時には海外まで。

詐欺グループとイマイ記者とのやりとりには、笑わされる部分もたくさんあるが、詐欺の手口を報道するための真剣さを感じた。
ただ本書は、相手方との丁々発止のやりとりのほうがメインテーマで、手口の解明等にはそれほど触れられていないようで、そこは少し残念。
でも、読んで損はしないと思う。
薄いし、価格も手ごろ(400円+消費税)なので、ちょっとした空き時間にでも読んでみてはいかがだろうか。

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2008/10/15

「私はうつ」と言いたがる人たち

「私はうつ」と言いたがる人たち
著者:香山リカ
★★★★☆

2年前に出勤できなくなった。
しかし、これは突然起きたことではない。
何年も前からいろんなことが積み重なった結果、ほんのちょっとのきっかけで起こった現象だと思っている。
これは今現在、冷静に振り返ってみて気づいた。

本書の中で、「あなたはうつ病です」と告げられた患者の反応の違いについて触れられている。
以前は、「うつ病です」と告げられた瞬間、助からない病気だと宣告されたかのように肩を落としてしまう人が少なくなかったという。
今でも、病休制度等が整っていない小さな会社に勤めている人は、同じような反応をするとのこと。
会社に「うつ病」などとバレてしまっては、クビになってしまうというのだ。

逆に、メンタルヘルス対応等の制度が整っているような会社や官公庁に勤めている人の中には、「うつ病ではないですよ。一時的な落ち込みでしょう。」と告げられてガッカリする人もいるらしい。
「うつ病」=「私が仕事ができないのは病気のせい」=「私は休むべき」という式が成り立つということだろう。
確かに能力不足のために仕事ができないと思うより、病気のせいでできないんだと思う方が楽ではある。

では、振り返ってみて私はどうだったか...。
自分には現在の仕事が向いていない→自分が担当じゃなければもっとうまく事業が進んでいたはずだ→自分なんかいない方がまし、という流れを経て、「仕事を辞めるしかない」と思った。自分が辞めれば、もっと優秀な誰かがうまく業務を運んでくれるだろうと思ったのだ。自分が残れば、ただの給与泥棒になってしまう。

それよりなにより、数年前からいつも公私ともに何らかのトラブルを抱えていて、休日であろうと業務時間外であろうと、いろんなことで悩み続けるのに疲れていた、というのが正直なところかもしれない。
通勤途中など、「死にたいな...」と独り言でつぶやいているのに気づいてゾッとし、「いやいやいや...。そんなことはない」と否定することも何度もあった。

いつしか、「とにかく全てから解放されたい」ただそれだけしか考えられなくなっていた。
そんなとき、仕事を辞めるという決断をする前に心療内科に行ってみようという同僚の薦めに従って、1軒目の病院を訪ねた。そこでは、「とにかく自分が変わらなければ、何も変わらない。周りを変えようと思うのは無理なこと。」と言われ、やはりそうかと納得した。自分を変える気力すら残っていなかったので、「ということは、やはり辞めろということだな」と思ったのである。
しかし、同僚は2軒目の病院を探してくれた。
そこでの診断は「典型的なうつ病です」であった。
そういわれて、ホッとしたというのが正直な感想である。

私は幸運にも官公庁に勤めている。
よって、休職制度を活用できる環境が整っていた。
病気だよと診断されたことで、しばらくの間、何も悩まずにすむ時間を得ることができる。
それがとても嬉しかったのだ。

「うつ病」と診断されてホッとした...。
このことは、偽うつ病だと思われても仕方のないことだろうか。
そう言われてしまうと、何も言い返せない...。

「うつ病セレブ」と呼ばれる人たちが、少なからずいるらしい。
職場にはいけないけれど、その休職期間中にリハビリと称して短期海外留学に行ったり、転職活動を行ったりする人がいるそうだ。私は大好きな読書すらできず、寝てばかりの状態が続いていた時期もあったので、そんな気力があるなら「うつ病」じゃないだろうと感じるのだが...。
「会社には行けないけれど、それ以外ならOK♪」
そんな状態でも、精神医療上は「うつ病」と診断されるのか? 非常に疑問。

それとは対極的なのが「うつ病難民」。
フリーターであったり、ネットカフェ難民と呼ばれる人たちは、その日その日の収入が得られなければ生活ができない。「うつ病」だからといって休むわけにはいかないのだ。だから、余計に心の病を深刻なものにしてしまう。
こんな「うつ病難民」の救済策はないものだろうか。ただでさえ、先行き不安な生活を送っており、精神的な落ち着きを失っているだろうと思われるのに...。

それにしても、今は心の問題について、何でもかんでも「○○症候群」や「○○障害」等の病名をつけることが多いような気がする。そうやって、身体的な病名がつけば、なにかと安心するのだろうか。

だが、どんな病気もそうだろうけれど、他にばかり頼っていては何の解決にもならない。
自分がその状態に至った原因を考え、この先どうすれば克服できるか悩むことは、必要なのだ。もしかしたら、薬よりそちらのほうが大切かもしれない。

当然、うつ病初期の頃は、無理な話であることは経験上承知している。
だが、徐々に状態がよくなっていったならば、自分で心の改良点を見つける努力は必要である。
心を病むに至った原因(主に自分特有の物事のとらえ方かと思う)を、認識することは大事。
再発予防にも役に立つ。
それをせずに、「私、うつ病だから...」といって、いつまでも周りに甘えてしまうのは、本当に苦しんでいるうつ病の人々に更なる苦しみを与えているように思う。
うつ病になったことのない人には、「甘えているうつ病患者」と「苦しんでいるうつ病患者」との区別が難しいからである(私も少し甘えている部分もあるように思えるので、自戒の意味を込めて、書いてみた)。

「うつ病」という病気について、自分を振り返りつつ再考するよい機会を得た一冊。
「軽症うつ」と「うつ病」、「プチうつ」という言葉、患者に対する精神科医の対応、目に見えない「心」の状態についての考え方など、いろいろと参考になった。

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2008/10/14

私をクレーマーと呼ばないで

私をクレーマーと呼ばないで
著者:多田文明
★★★☆☆

以前にご紹介した「ついていったら、こうなった-キャッチセールス潜入ルポ」と同じ著者の作品である。

「クレーム」というのは、本来「(当然の権利として)要求する。(注意を)求める。」といった意味があるそうだ。
しかし、現在の使われ方というのは、「いちゃもんをつける」という意味合いが強い。
自分のことだけを考えて文句をいうのと、相手の企業(店舗)の将来を思って意見を述べるのと、ごっちゃまぜに「クレーム」と呼んで、「クレーム」という人は「クレーマー」として、企業(店舗)から嫌われる対象となったりするのは、おかしいような気がする。

店などで、買い物中に少し嫌な思いをしたとする。
それに対して相手方にクレームをいうのは、自分のためだけではなく、相手方のためにもなるはずだ。
同じように嫌な思いをする客を減らすことができるし、店にとっても客の意見を正しく受け止めることはよりよい営業につながることになるだろう。
客からのクレームを、ただの「いちゃもん」だと決めつけ、ただひたすら右から左へ流すような店は、遅かれ早かれ消えて行かざるを得ないと思う。それなのに、その消えていってしまうような店舗(企業)から「嫌なヤツだ(または細かいヤツだ、ウザいヤツだ)」と思われることを恐れるあまり、何も言えないといったことがよくある。
自分だけが嫌な思いを飲み込んで、相手は何事もなかったかのように同じような対応を続けていく。なんだか少し悔しいな。

しかし、クレームも、ただ言えばいいというものではない。
クレームの付け方にもテクニックがあるのだ。
本書を読むことで、そのテクニックを習得できる(たぶん)。
同じ内容についてクレームをつけるにしても、いろんなアプローチ方法があるのだ。
悪質な「クレーマー」となるか、良質な「クレーマー」となるかは、そのテクニック次第。

自分のクレームが相手に本当に受け入れられて、その不備が改善されるか。
これにもテクニックが必要だし、それにプラスして忍耐力も必要になる。
改善が見られるまで、相手に要求し続けていく。
相手に一方的な悪意をもたれない「しつこさ」。
あきらめないこと、これが大事だと思う。

サービスの質を向上させていくためには、消費者のクレーム(意見・要求)を言う勇気も、それを受け入れる企業の努力も必要である。
クレームを全く言わないというのも、社会のためにはならないということなのだ。不作為の罪といったところか。

モンスター・ペアレンツやモンスター・ペイシェントなどが話題となる昨今。
自分が「モンスター」になることなく、クレームを付ける方法を学んでおくのも、大切なことかもしれない。

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2008/10/13

名探偵の掟

名探偵の掟
著者:東野圭吾
★★★★☆

ミステリ・サスペンスのパロディを集めた作品。
超・殺人事件』では推理作家を皮肉って、この本では推理小説(トリック)そのものを皮肉って...。
上手いなぁ。
有名なミステリを元ネタにしているものも何編かあり、それが何か判れば、ますます面白味が増す。

読者も承知している使い古されたトリックを、さも難しい謎のように演出しなければならない名探偵天下一。
名探偵よりも先に謎を解いて、その上で絶対真相には近づかずに的はずれな推理を展開しなければならないワトソン役の大河原警部。
2人の掛け合いが、絶妙。
ミステリ好きの方なら、時折推理小説の世界から離れて語られる2人の本音に、ニヤリとせずにはいられないだろう。

もちろん、この本は「ミステリ」ではない。
トリックとしては無理があるものも少なくないし。
「本格ミステリのパロディ」として、軽く楽しめる本だ。

一番笑ったのは、第十一章の「禁句」。
そんな理由で首を切り落としたの~?って感じである。
あとは、第八章「トリックの正体」ね。
小説ならではのオチだな。

今思えば、「33分探偵」に少し雰囲気が似てるかも。
いや、ちょっと違うか(苦笑)。

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2008/10/12

交通事故示談屋

交通事故示談屋
著者:吉田透
★★★★☆

私が住んでいる沖縄は、電車というものがない。
ある程度の距離になると、移動手段はバス、タクシー、または自家用車がメインである。
私も車を運転するようになってから12年ほど経った。
その間、事故を起こしたことがないといえば嘘になる。
急ブレーキを踏んだ車に後ろから追突してしまったり、雨の日にブレーキの効きが悪くなり前の車にコツンとやってしまったりした経験がある。
幸いにもこの2つのケースでは、相手の方が見逃してくれたので助かった。
(1番目のケースでは、私の軽自動車のほうが破損がひどかった(^^;)
また、実家の敷地内で親戚の車にぶつけたり、電信柱にこすったり、結構ひどいものである。
それでも、まだ事件になるような交通事故を起こしたことがないのは、単に運がよかったからかもしれない。

もし、もめるような事故を起こしてしまったり、巻き込まれたりした場合、どうしたらよいのだろう。
正直言って、どう対処したらいいか全く見当がつかない。
でも、そのような事故に遭う可能性は、決して小さくないのだ。
そこで、本書を手に取ってみた。
実際に起きた事故というのは、どのように解決されていくのかを知りたかったからだ。

保険の代理店をされている著者が記したのが本書。
ご自身が体験した事故の対応について、本当に様々なケースが具体的に書かれている。
中には自分がもしこんな事故に巻き込まれたら...と考えただけで背筋が寒くなるような事件もある。

保険代理店選びというものが、こんなに大切なものだとは思わなかった。
誰が対応してくれるかによって、それこそ天と地との差があるものだ。
そして、どの会社にするか。
これも大事な問題である。

親戚から、あるいは友人から頼まれたから加入した。
そんな代理店選びでは、後悔することになるかもしれない。
本職の片手間に副職として代理店業をやっているようなところだと、いざというときに本腰をいれて対応してくれない可能性が高いこともわかった。
著者のように、交通事故に関しての知識も経験も豊富で、信頼できる代理店に出会えるといいのだが。

事故の当事者となった場合、自分自身の対応の仕方によっても結果が大きく違ってくることもある。
いろんな事例を知って、どのように対応するのがベストなのか、勉強することも大切だ。
そういう意味で、本書はとても役に立つ1冊である。

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2008/10/11

犯行現場の作り方

犯行現場の作り方
著者:安井俊夫
★★★★☆

著者は一級建築士。
その目線から10冊のミステリに登場する建築物を検証している。
ちょっと変わった目線からミステリを見てみると、これまた面白い。
出てくるミステリは、すべて国内もの。
ちょっとリストアップしてみよう。

第1章「十角館の殺人」 作:綾辻行人
第2章「8の殺人」 作:我孫子武丸
第3章「長い家の殺人」 作:歌野晶午
第4章「玄い女神」 作:篠田真由美
第5章「十字屋敷のピエロ」 作:東野圭吾
第6章「笑わない数学者」 作:森博嗣
第7章「誰彼」 作:法月綸太郎
第8章「本陣殺人事件」 作:横溝正史
第9章「三角館の恐怖」 作:江戸川乱歩
第10章「斜め屋敷の犯罪」 作:島田荘司

この本を読んだ時点で、私が読了していたのは2作。
東野圭吾「十字屋敷のピエロ」と、横溝正史「本陣殺人事件」だけであった。

本書の中では、各作品の文面から、作中に出てくる建物がどのあたりの地域に建っているかに触れ、建物の構造を想像(創造?)し、実際に建築可能な物件かどうかまでを検証する。
そして、その建物を建てるとしたら、いくらかかるか、ということまで算出。
一級建築士の著者ならではの視点である。

実際には建築基準法などに触れ、違法な建物がほとんどのようである(苦笑)。
また、中には十数億円もかかると算出された建物もあって、ビックリした。
虚構の世界だからこそ、成り立つ建物なのがよくわかる。
しかし、それでも面白いミステリになっている傑作ばかりを選んでいるのだろう。

アガサ・クリスティ、横溝正史、東野圭吾、エラリー・クイーンなどを読み、そろそろ他の作家の作品も読んでみたいなと思っていたところに、この本を目にした。
そして、興味を持った本を、数冊購入。
島田荘司、森博嗣をはじめ、いろんな作家の作品を読むきっかけとなった。

文章で書かれた建物を3次元化してみる。
ミステリを読む上で、特に意味など無いではないかと思われる方もいらっしゃるだろう。
しかし、本書を一読してみて欲しい。
何気なく読んでいたミステリの舞台の裏側が見えるかもしれない。

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2008/10/10

半落ち

半落ち
著者:横山秀夫
★★★☆☆

寺尾聰主演の映画が話題になっていた頃、興味を惹かれた一冊。
読み始めてからは、早かったな。
一気に読み終えた。
ただ、最後はあっけなかったというか、物足りないというか...。

「半落ち」って何だろう?て不思議に思っていたんだけど、刑事仲間の隠語なのかな。
事件の被疑者が全ての容疑を完全に認めている状態を「完落ち」というらしい。
で、中途半端に認めている状態、事件の全てを告白していない状態が「半落ち」。

この主人公「梶聡一郎」は、アルツハイマー症を患った妻を殺したあと自首するのだが、半落ちの状態のまま送検され、裁判を終える。
殺害の事実は素直に認め、その様子もこと細かく語る。
しかし、殺害してから自首するまでの空白の2日間については、遂に最後まで語ろうとしないのだ。

本書は、6つの章に分かれていて、「取り調べた刑事」「検察官」「新聞記者」「弁護士」「裁判官」「刑務官」がそれぞれの章で語り役になっている。
読み進めるうちに、各章で6人が抱くのと同じ気持ちで「この2日間、梶聡一郎はどこで何をしていたのか」が知りたくてたまらなくなっていった。

もちろん最後には、この謎は明らかにされる。
それはそれなりに納得のいく結末ではあった。
「誰かのために生きる」ということについても考えさせられた。
深い内容ではあったと思う。
ただ、読み終えてみると、「謎の2日間」よりも他に主点を置いて読んだ方がいい作品なのかな....という気がした。
結末を知ったあとでも、2度、3度と読み返してみたくなる本だ。
家族が要介護状態になった場合の対応、警察署・検察所・裁判所内の権力に絡む摩擦や矛盾など、そちらの方に興味を惹かれた1冊である。

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2008/10/09

むかし僕が死んだ家

むかし僕が死んだ家
著者:東野圭吾
★★★★☆

どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」を読んで、東野圭吾の作品を他に読んでみたくなった。
本屋さんで、あれこれ見て、選んだのがこの本。

小学校入学以前の記憶を全く失った女性が、7年前に別れた彼と一緒にそれを取り戻そうとする話。
買ったその日に、読み終えてしまうくらい一気読みした。

登場人物は、2人。
話の舞台も古い屋敷からほとんど動かない。
なのに、最後まで読者を引っ張っていく力は落ちていかない。
読後感もとてもよかった。
あちらこちらに伏線が散りばめられているが、どれも矛盾を感じることなく、結末までたどり着く。
とても計算されて書かれた本だという印象を受けた。

東野圭吾作品を読むのは、これが3冊目だった。
理知的なミステリを書く方だなと思った記憶がある。

「幻の家」の正体には、ビックリした。
思いも寄らないよ。
こんな家、ホントにあったらすごいよね...。

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2008/10/08

青列車の秘密

青列車の秘密
著者:アガサ・クリスティ
訳者:青木久恵
解説:北上次郎
★★☆☆☆

このクリスティー文庫で新訳になった作品は、なんだか読みやすくなった気がする。
より「日本語」らしくなったというか。
その分、原書がもつ言葉の雰囲気を上手く伝えられていない部分もあるのかもしれないけれど。
そのあたりは、どうなのかな。
なにぶん原書を読んでいない(読めるだけの語学力もない)ので、よくわからない。
しかし、読みやすくなったことは事実。
このシリーズ以前のクリスティ作品は、言い回しが難解で、とっつきにくい印象があったから(もちろん、だからといって優れていなかったわけではない)。

初めてこの作品を読んだのは、もう20年近く前で、本当に久しぶりに読み返した。
真相は何となく覚えていたが、冒頭の宝石を巡る取引についてはすっかり忘れてしまっていた。
本筋とどのように絡んでくるのか、それを楽しみに読み進めた。
最後の最後で、ちゃんと全てが繋がって、無駄に登場する人物がいないというところは、さすがだ。
読み終えた直後に、また最初のページをめくりたくなってしまった。

それでもやはり、私の好みの作品ではないな。
面白くないわけではないのだが、犯人に魅力を感じない。

だけど、非常に魅力的な女性が登場している。
クリスティは、人物描写が上手い。
殺害の直前に被害者から相談を受けたキャサリン・グレー。
滅多に感情を表には出さないけれど、決して冷たいわけではない。
自分の進むべき道を常に知っている心の強い女性という印象を受けた。
ヘイスティングズの居ないこの作品では、彼女がその代わりになっているよう。
ポアロの良き相棒といったところか。

そのキャサリン・グレーの住んでいた村というのが、あの「セント・メアリ・ミード村」。
そう、ミス・マープルの本拠地だ。
こんなところで登場していたとは、初めて気づいた。

気になるのは、骨董商のパポポラス父娘。
この話から17年前にポアロが解決した事件と関わりがあるらしいのだ。
その事件について、結構細かなところまで語られているのだが、これはクリスティの他の作品になっている事件なのだろうか?
クリスティー文庫を読み進めるうちに、どこかでまたこの父娘に出逢うかもしれない。
でも、この作品の中で犯人についても触れられているから、出逢うことはないかな。
まさか作者自身でネタバレはしないと思うが...。

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2008/10/07

P.S.アイラヴユー

P.S.アイラヴユー
著者:セシリア・アハーン
訳者:林真理子
★★☆☆☆

映画の予告編で、、「亡くなった夫から次々と届くラヴレター。どんな方法で届くのだろう...。」というようなフレーズがあったように記憶していた。
何となくミステリチックな雰囲気が漂うフレーズじゃないか。
それに惹かれて、この本を読んでみたのだが...。
申し訳ないけれど、最初の段階で既にほとんど読む気が失せていた。
手紙が届く方法。
特に謎めいてなどいないじゃないか。

私は、基本的に恋愛をメインテーマにした書籍は手に取らない。
好みには合わないのだ。
この本も、その謎がなければ、読む意味がないに等しい。
しかも、訳が林真理子。
なぜだかわからないが、私は生理的に彼女を受け入れることができない。
と、思いながらも、せっかく買ったのだからと読んでみた。

主人公ホリーの実家に亡くなった夫からの小包が届くのである。
その中には10通の手紙が。
封筒には、3月から12月までの月が書かれていた。
その月に手紙を開封すること、ということなのだ。
つまり、一度に10通の手紙が主人公ホリーの手元に届き、ホリーは夫の遺志通り、毎月はじめに手紙を1通ずつ開けていくのだ。
映画では、この部分は脚色されているのかもしれない。

突然、若くして夫を亡くしたホリー。
彼女の動揺、孤独感、焦り、いろんな思いが混在していて、混乱している様子がよく描かれている。
夫を亡くしてからは、おそらくずっと現実逃避していたのだろう。
自分自身をも亡くしてしまい、生きているのか死んでいるのか、よくわからない状態だった。
そこへ届いた夫からのラヴレター。

死に直面した夫は、自分がいなくなった後、妻が独り立ちできるかどうかを心配し、彼女がなすべきことを「リスト」として残しておいたのだ。
自然な流れの中で、自分のことを「悲しみ」から「思い出」にできるようにと願ったのか。
それにしても、なんと思いやりにあふれた手紙なのだろう。
本当に妻のことを理解していなければ、こんな手紙は残すことができない。
とても素敵な10通の手紙だ。

前述したとおり「恋愛」ものが苦手な私には、最後まで読むことが少し苦になったけれど、決して面白くない小説ではないと思う。
毎月、封を切られる手紙の内容が楽しみだったし、最後の手紙を開けてしまった後のホリーがどうなるのか気になった。
しかし、最後は若干荒っぽい終わり方になっているような気もする。
そこが残念だな。

読了直後の今は、「やっと、読み終わった~」というのが正直な感想である。

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2008/10/06

やっちまったよ 一戸建て!!

やっちまったよ一戸建て!! (1)
やっちまったよ一戸建て!! (2)
著者:伊藤理佐
★★★☆☆

うちの今のアパートの家賃が高くて、これじゃこの先やってけないぜって話になった。
それで、少し安めのアパートを探しているところなんだけど、これなら家を買った方がいいんじゃない?なんてことも頭をよぎる。
が、問題が1つ。
頭金が無い(苦笑)。

さて、そんな話題が旬の我が家。
ダンナと二人で書店に寄ったとき、このタイトルに目がいき、彼に「買ってもいい?」と聞いたところ、内容が内容だし、中身がマンガだということで、珍しくOKがでた。
たぶん、マンガだったということが大きなポイントだと思う(絶対そうだ!)。

もうすぐ30歳、バツイチ、一人暮らしの著者が、ひょんなことから家を建てることになる。
最初は、とりあえず土地を買っておいて、10年くらいかけてお金を貯めてから家を建てるかぁ~って話だったのに、なぜか土地を買ってから1年半以内に建てなければ土地を買うお金を借りられないってことになってしまうのだ。
家を建てるのに、なんの具体的ビジョンも持っていなかった彼女が、設計士さんにどんな家を建てたいかと訪ねられ、珍問答を繰り返す。
この本、できるだけ人前で読まない方がいいかもしれない。
ついつい、笑いがこみ上げてくるので。

なかなかに味のある不動産屋さん、設計士さん、工務店やさんが、揃いも揃ったものだ。
ま、忘れちゃいけないのが、施工主である著者なんだが、これがまたぶっ飛んだ考え方をするお方で...。

設計士さんとの打ち合わせで、著者が要望を伝えた後に言われた言葉。
「これだと3階建て、ワンルーム1軒家になります」
「スペースが足りずに困った経験はありますが、スペースが余って困ったのは初めてです。」

とにかく、家を建てるために役立つかどうかは不明だが、楽しめるのには間違いない。
ただ、1冊約580円が、2冊というのは高い気もするな...。

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2008/10/05

「死体」を読む

「死体」を読む
著者:上野正彦
★★★☆☆

書店で見つけて、思わずタイトル買いしてしまった本である。
ミステリ好きとして、無視できないタイトルだとは、思わないだろうか?

この本の中では、元監察医である著者が、その経験を基に、エドガー・アラン・ポーの「マリー・ロジェエの怪事件」や、芥川龍之介の「藪の中」、横溝正史の「犬神家の一族」などの殺人事件を検証している。
それぞれの被害者の状況検分や、犯人の検証など、実際の法医学からみておかしな箇所を指摘している。
そういうことにこだわらなくても、面白く読めるのがミステリなので、それはそれでよいのだが。

また、面白い見解を示してくれた。
山の近くで育った犯人は海に死体を捨てに行き、海の近くで育った犯人は山に死体を捨てに行く、というのである。
山で育った人間には、重い死体を担いで山の中を歩き、地面を深く掘って、永久に死体を埋め隠すのが難しいことをよく知っている。
海で育った人間には、海流や時化の関係で、死体が岸へ打ち寄せられることを知っている。
だから、お互い逆の方法を選ぶというのだ。
著者ご本人が多少苦し紛れの説だ、というのだが、私は納得してしまった。
そういうものかもしれないな、と。

ミステリのみでなく、実際の事件についても数件触れられている。

生きている人間を相手にして病原を突き止める臨床医と、死体を前にして何故に死んだかを突き止める監察医。
生きている人間ならば、自分の状態や症状が起きる前後に何をしたかなど、医者に向かって話すこともできるだろうが、死体はそうはいかない。
「死人に口なし」という言葉もある。
が、しかし本当にそうなのだろうか...?
「死体」を事細かく検分することにより、「死体」が自分の死因を語ってくれることもあるのではないだろうか。

著者が指摘しているのは、我が国において監察医の制度が整っているのは、まだ大都市圏のみだということだ。
その他の地域においては、解剖して死因を明らかにしたい場合でも、財政的な問題などで不可能になるケースもあるのだそうだ。
本書を読んで、解剖せずに「病死・自然死・事故死」などと判断された死体が、実は殺害されたものであるというケースも、十分にあり得るような気がしてきた。

自分を死に至らしめた理由を話したがっている「死体」を黙らせてしまっているのは、こういう制度なのだろう。
今後、監察医制度がさらに整備された暁には、「殺人事件」がさらに増加するかもしれない。
いままで表に出てきていなかったものが、浮かび上がってくるからだ。

法医学の重要性を改めて認識できた気がする。
著者の他の作品も読んでみたい。
また、随時、ご紹介していきたいと思う。

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2008/10/04

容疑者Xの献身(映画)

★★☆☆☆

今日から公開の映画「容疑者Xの献身」を観てきた。
原作については、こちらに書いてある。

う~ん...。なんとも微妙な感じだ。
映画じゃなくても2時間ドラマとかでもOKだったのではないか?
やはり柴咲コウはいらないと思ったし、福山雅治に湯川は合わないと思った。
(念のため書いておくが、福山雅治は嫌いではない。)
ただ、「ダルマの石神」を堤真一が演じるということで、期待半分、不安半分であったが、結果は最高によかった。
堤真一だけが、唯一光っていたように感じた。

原作のストーリーを基本的には忠実になぞっているとは思うが、それぞれの人間の葛藤というか、そういう細かい部分は表現できていなかったように思う。
石神も、最後の決断をするまでに、いろいろと悩んだはずだよ。
自分をパーフェクトな悪役にするために。

時間的な問題?
そんなの、柴咲コウとのいらないやりとりのシーンを作るなら、そっちを優先してよ。

全体的にヤマがなく、淡々と進んでいくので、途中で少し飽きてしまった。

しかし、最後の石神の切ない咆吼。
堤真一は、スゴイと感動した。
彼の演技を観るだけでも、価値はあるかな。
でも、来年くらいにはテレビで放映されるだろうから、それまで待ってもいいような気はする。

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アクロイド殺し

アクロイド殺し
著者:アガサ・クリスティ
訳者:羽田志津子
解説:笠井潔
★★★★★

本当は、「ビッグ4」の前に紹介すべき作品だったが、私としたことが、一番大事な作品を飛ばしてしまった...。
ポワロシリーズの長編でいうと、「スタイルズ荘の怪事件」「ゴルフ場殺人事件」「アクロイド殺し」の後に、「ビッグ4」がくる。

この本は、私が初めて手にしたクリスティの作品。
高校生の頃だったが、この本を読み終えた後、クリスティに夢中になり、小遣いのほとんどをクリスティの本の購入に使ってしまうハメになった。
それから20年以上経った。
その間、10回以上読み返しているが、何度読んでも、楽しめる。
伏線があらゆるところに張られているにもかかわらず無理が無くて、ストーリーがしっかりしているせいかもしれない。

まだ読んでいらっしゃらない方は、是非、何の先入観も持たずに、誰の書評も読まずに、まず本作を読むことをお薦めする。もちろん、DVD化されている映像を先に観るなんてことは、間違ってもしてはいけない。
その方が、絶対に楽しめるはずだ。

この物語では、ポアロの良き相棒、ヘイスティングズが登場しない。
前作のあと、彼は結婚してアルゼンチンへ行ってしまったのだ。
代わりに殺人が起きた村の医師、シェパードが、ポアロのワトソン役を務める。
シェパード医師は、ヘイスティングズと違ってお茶目なところがないので、その点が物足りない。
ヘイスティングズの勘違い推理は、ちょっとしたアクセントになって、楽しいのだが。

この本はクリスティの作品の中でも、かなり有名なもので、ちょっとネットで検索しただけでも、ネタばれすれすれの情報を目にしてしまうことも少なくない。
先にも述べたが、少しでもそんな先入観があると、面白味が半減してしまう。
先入観を全く持っていず、今までクリスティを読んだことのない方には、是非オススメだ。
ポアロもののミステリではおなじみの関係者全員を集めての推理展開、この場面の迫力はスゴイ。
そして、その後の展開も...。
未読の方には申し訳ないので、あまり詳しく内容を語れない。
そのため、中途半端な感想文になってしまったかも(^^;
 
関係書として「アクロイドを殺したのはだれか/ピエール・バイヤール著」がある。

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2008/10/03

理系の人々

理系の人々
著者:よしたに
★★★☆☆

この著者の本では「ぼく、オタリーマン。」の方が有名かと思う。
こちらも気にはなっているのだが、まだ読むには至っていない。
なんだか「文系」「理系」のキーワードが、今のところ私のツボらしい。
前回「理系クン」を紹介した。
その流れでつい買ってしまったのがこの本である。

全編マンガなので、サラッと読み流せる。
基本的に「理系の人々のあるあるネタ」のオンパレードってな感じ。
私の周りにも(ダンナをはじめとして)理系の人々が多いけれど、こんなんだったっけ?というような部分もなくはなかったな。

いくつか、私自身に当てはまるものがあって、「うちあたい」したりした。

*********
「うちあたい」=沖縄の方言。意味は興味がある方は調べてみてください。
なかなか標準語では言い表せない...。
しかし、若い人が使う「うちあたい」と、本来のうちなぁぐちの「うちあたい」は、若干意味合いが異なるようです。
*********

たとえば、料理の味付け。
かつおだしの素を入れるときは、「イノシン酸だな」。
味の素を入れるときは「グルタミン酸だな」。
とかって、考えてしまう。
う~ん、うちあたい...。

あと、職場とかで「あれってなんだっけ?」みたいな話が出ると、つい検索サイトを開いて検索してしまう。
う~ん、うちあたい...。

あじさいの色をみて、土壌が酸性かアルカリ性かを考える。
う~ん、うちあたい...。
これはミステリ好きのサガでもあるかもしれない。
「青いあじさい...。 死体が埋まってるのか?!」なんてね。

行きたい場所と言えば、「家電量販店」または「本屋さん」
う~ん、うちあたい...。

「燃えるゴミ」と書かれていたものが「燃やすゴミ」に、「燃えないゴミ」とかかれていたものが「燃やさないゴミ」に変更されていることにこだわる。
う~ん、うちあたい...。
でも、これは文系ゆえに言葉にこだわっているのかと思っていたのだが、違うのかな。
私は、ちょっとした言葉の使い方が気になる。

たとえば、公園などで「犬のフンは飼い主で処分してください」という看板があったとする。
というか、いつもの犬の散歩コースに、そういう看板があるのだ。
これは「飼い主で」ではなく「飼い主が」ではないかと、以前からずっと気になっているのである。
また、最近のテレビなどでは「....を醸し出している」というべきところを「...を醸す」と言ったりすることがある。
これまた、気になる。
報道番組内でさえ、さんざん使われているのだから、「醸す」というのも間違いではないのか?と、少し自分を疑い始めているところだ。

ま、この辺で閑話休題。
以上のような、理系の人々の生態がおもしろおかしくマンガで読める。
文系の女の子たちにはウケが悪い理系の男の子たちのお話がメインかな。
理系チックな言葉遣いに、ザザッと引かれてしまったりとか。

いや、しかし「文系」というのが、よくわからなくなってきた。
今度は「文系サン」みたいな本が出てくれないかな。
ちょっとは逆の立場から見たものも読んでみたいものだ。

「理系クン」「理系の人々」。
この2冊を読んで、結局のところ、私は「理系」だということがハッキリしたようだ。

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2008/10/02

ビッグ4

ビッグ4
著者:アガサ・クリスティ
翻訳:中村妙子
解説:若島正
★★☆☆☆

基本的に、スパイものは、あまり好きではない。
この本は、ポアロものには珍しくスパイ・スリラー仕上げになっている。
ポアロものじゃなかったら、よかったかも。
ポアロが好きなだけに、そう思った。

謎の犯罪組織「ビッグ4」の世界征服という野望を打ち砕くべく立ち上がったポアロだが、直接対決の前に、いくつかの小さな事件が起きる。
そのいずれも、ビッグ4に関係のある事件ではあるのだが、なんだか細切れにされたお話を無理矢理くっつけたよう。
ストーリー全体を通しての流れというのが感じられなかった。
それもそのはず、この話って、もともと短編だったものを一つの話に作り直したものらしい。
短編のままの方がよかったんじゃないかな。
一つ一つのエピソードは、それなりに楽しめたし。

で、なんだか話が大きすぎて、リアリティがないというか何というか...。
相手が「世界征服をたくらむ」組織なのだから、壮大にならざるを得ないんだろうけど。
リアリティがないといえば、ポアロの勘、良過ぎ。
「いくら灰色の脳細胞が優秀でも、なんでそこまで読めるのよっ」ってところが気になった。

ゴルフ場殺人事件』が解決した後、アルゼンチンに旅立ったヘイスティングズが、久しぶりに帰ってきた。
ポアロの好敵手でもあり好意を寄せる女性でもある、ロサコフ伯爵夫人も登場。
そしてなによりも、この物語の目玉はポアロの双子の兄弟アシール・ポアロ!
エルキュールはヘラクレス、アシールはアキレス。
両方ともギリシャ神話の英雄だ。

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2008/10/01

絢爛たる暗号 百人一首の謎を解く

絢爛たる暗号 百人一首の謎を解く
著者:織田 正吉

田辺聖子氏の「田辺聖子の小倉百人一首」で紹介されていたのをきっかけに読み始めた。

この「百人一首」。
藤原定家がなぜこの百首を撰んだのかは、とても不思議な謎のようだ。
私には歌の善し悪しはわからないが、古今の歌に通じている定家が撰んだとは思えない歌が混じっているという。
また、有名な歌人の歌が取られていないのに、無名に近い歌人の歌が取られていたり...。
そして、「百人一首」には同じ言葉を持つ歌が、非常に多い(そこが、カルタ取りでお手つきを誘ってる。)。
なぜ、似たような歌を集めたのか、その理由もわからないままなのだ。
そんな謎を解くべく、それまでのアプローチとは全く違った方向から検証してみたのが、この本。

一首一首を独立した歌だと見るのではなく、「百人一首」として全体を見なければ謎は解けない、というのが前提である。
それぞれの歌が、別の歌と関連していて、百首全てがクロスワードのように絡み合っていて、ジグソーパズルのようにピースをあるべき場所に戻してこそ、全体像が浮かび上がってくるのだと、そういう展開になっている。
そして最後に、このクロスワードに定家が込めた想いとは何だったのかを解き明かす。

百人一首の謎とは何なのかから始まり、定家がこの百首を撰んだ理由、その中に込めた想い、それが読み進めるうちに順々に解かれていく、ミステリを読んでいるのと同じ快感が得られる一冊だ。

百首をクロスワードの形にした配置図が載っているのだが、これをエクセルで作ってみた。
カルタの読み札をその形に並べてみるのが早いのだろうが、手元に無かったので。
実際に歌を見ながら配置してみると、本当に面白いようにそれぞれが繋がっていることが見えてくる。

この説が必ずしも正しいわけでは無くて、これからまた色んな検証がなされていくと思うが、とても興味深いアプローチの仕方である。

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