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2008/11/30

世界の日本人ジョーク集

世界の日本人ジョーク集
著者:早坂隆
★★★☆☆

世界中で語られているジョークの中から、日本人が関係しているものをいくつか集めたジョーク集。特に日本人がオチになっているものだけではない。
ジョークの合間、合間に、著者のコラムがついてくる。海外旅行などしたことのない私には、興味深いものだった。

各国の国民性がよくあらわされているものが多く、大笑いはできないが、ニヤッとできる。
ただし、国民性といっても、それが当たっているのかどうかは不明。ただ何となく、この国の人ならこうだろうなぁという程度のものだと思って読んで欲しい。
たとえば、こんな感じ。

***以下引用***

【時間に正確】
ある時、世界的な音楽コンクールが行われた。
開始一時間前にドイツ人と日本人が到着した。
三〇分前、ユダヤ人が到着した。
一〇分前、イギリス人が到着した。
開始時刻ピッタリにアメリカ人が間に合った。
五分遅刻して、フランス人が到着した。
一五分遅刻して、イタリア人が到着した。
三〇分以上経ってから、スペイン人がようやく現れた。
ポルトガル人がいつ来るのかは、誰も知らない。

***引用終了***

日本人はドイツ人と並んで、遅刻などするはずがないという位置いるが、これが私の住む沖縄だったらどうだろう?
たとえば飲み会で、「6時集合で」といったら、早い人で6時15分頃に来るだろう。遅い人は2時間くらい経ってから、こちらから連絡して「あ、今から行くよ」となるかもしれない(苦笑)。
同じ日本人でも、これだけ感覚が違うのである。一概には言えない。
しかし、何となく各国民のイメージというものがある。それを揶揄しているのが面白い。
ま、世代によってもイメージというものは異なってくるだろうけれど。

寝る前のひととき、飛行機や新幹線で移動中のひととき、見るべきテレビも読むべき新聞もないような出張先でのひととき、そんなときの暇つぶしのお供に適しているのではないだろうか。

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2008/11/29

税金を払う人使う人

税金を払う人使う人―加藤寛・中村うさぎの激辛問答
著者:加藤寛、中村うさぎ
★★★★★

税務に携わる仕事に就いて、十数年が経つ。それだけに、「税」とつくものには多少は他の人よりも興味を持っていると思う(もともと経済音痴ではあるが...)。

税金というと、みな「盗られる」という。それを私は「納める」のですよと言ってきた。
「盗られる」も「納める」も、その金額に見合った何かを求めていない言葉だ。
税金というのは、行政サービスを国民に提供するために集めているお金である。よって、その額に見合った対価を納税者は求めるべきなのだと、本書を読んでそう思った。
自分が支払った税金が、どのように運用され、活用されているのか、それに対しての国民の意識が、以前よりは高まってきた昨今。「税金」とは本来なんなのか、どのように集められ、使われるべきなのか、基礎の部分をとてもわかりやすく説明してくれる本である。

税金の素人の代表である「中村うさぎ」氏に、税金の玄人「加藤寛(元政府税調会長)」氏が、優しく丁寧に「税金」について解説している本書。
私も税金については半分素人、半分玄人である(半分以上「素人」かもしれないが(汗))。それでも、新しい見方を教わった気分である。
「税金」の基礎知識のほかに、現在の日本財政の危機的状況、それをどのように立て直していくべきなのかというところまで、本当に易しい言葉で説明されている。

「税法」というのは、非常にわかりにくい条文ばかりである。長ったらしい条文の中にカッコがあり、その中にまたカッコがあり、その中にまた...というのが続いて、最後に述語にたどり着く。述語にたどり着いた頃には、主語は何だったんだっけ?と、もう一回最初っから読み直さなければならない。
また、本法で決められたことが、附則では全く違ったことになっていたり、規則ではまたおかしなことをいっていたり、本当に難解。
国民にカラクリをばらしたくないために、わざと難しくしているのではないかと思うくらいだ。
難しいことを難しく説明するのは、簡単なこと。誰にでもできる。
難しいことを易しく説明することが大切なのである。
法律を作るのは結構だが、その内容を国民に易しく伝えてほしいと思う。

税金の無駄遣いがマスコミで報道されるたびに、国民のみなさんから強い風当たりを受けるのは、現場で働く税務職員なのである。悪いことをしたり、無駄遣いをしたりしている人たちではない。
税務職員も納税者の一人。納める苦労、徴収する苦労を知っているだけに、ムダに税金が使われるのを見ているのは、本当に腹が立つ。

しかし、官僚はともかく、法律を作る機関である立法府の議員たちを選出しているのは、主権を持っている「国民」なのだ。税金の集め方、使い方について、意見を反映させることのできる行為が「選挙」なのである。
国会議員だけではなく、地方自治体の議員についても同じことが言える。
一般の公務員は、立法府で作成された法律等に従って、業務を行っていく。
税金の徴収に訪れた職員に意見(文句?)を言う前に考えて欲しい。法律を作ったのは、皆さんが選んだ議員で構成される議会なのだということを。「選挙(参政権)」という貴重な権利をムダにしないで欲しい。
自分たちの貴重な「税金」を安心して任せられる人を、選ぶ目を持たなければならない。

この本は2001年に発行されたものであるので、多少現状とは違う部分があるが、それでも基礎を学ぶのに不足のない本である。

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2008/11/28

失言辞典

失言辞典
編著:失言委員会
★★★☆☆

初版発行日が2008年03月。
結構、新しめのから、古いヤツまでの「失言」を集めて、解説した本。
森元首相の「イット(IT)革命」から石田純一の「不倫は文化だ」まで、その発言者も幅広い。
中には、ホントにその言葉が発せられたのかどうか不明な伝説的発言も含まれる。
前述の2人は、まさにその伝説的失言である。

あぁ、こんなのもあったな~といった感じに時代を振り返りながら、笑ったり、考えさせられたり、できる一冊。全部で100の失言が、発言の背景などに触れている解説付きで掲載されているので、改めて勉強になったりもする。

本書の使い方が、冒頭に書かれているので、ご紹介。

***以下引用***
本書の使い方
本書は、雑学を楽しむ(一人でくすくす笑う、ちょっと賢くなったような気分になる、友達に自慢気に話してみる)ことを目的に製作いたしました。目的外の使用(失言に対して憤る)には適しません。リラックスしてお読みください。
***引用終了***

うん、そのとおりの内容だと思う。

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2008/11/27

ハロウィーン・パーティー

ハロウィーン・パーティー
著者:アガサ・クリスティ
訳者:中村能三
解説:長谷部史親
★★★☆☆

楽しいパーティで少女が残酷な方法で殺害された。
水で満たされたバケツに頭を押さえ込まれ、溺死させられたのだ。
その少女、パーティの準備中のおしゃべりの中で、過去に殺人を見たことがあると口にしている。パーティに招かれていた推理作家のオリヴァ夫人は、それが原因ではないかとポワロに謎解きを持ちかける。
さて、彼女が目撃したと思われる「殺人事件」。
過去に起こったいくつかの事件が候補としてあげられるのだが、いろんな話がゴチャゴチャと並べられているような気がして...。もう少しポイントを絞ってくれたら、まだ読みやすかったのに。

トリックらしいトリックというのもないし、晩年の作品によくある小説の雰囲気や人間関係の機微を楽しむストーリーといったところだろうか。ポワロものじゃなくてノンジャンルだったらよかったかもしれない。

しかし、最後の最後にちゃんとオチを準備しているところが、クリスティらしい。

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2008/11/26

第三の女

第三の女
著者:アガサ・クリスティ
訳者:小尾美佐
解説:石川絢士
★★★☆☆

なかなか事件が起こらず、一体全体何に向かって行くのかわからなくなる。クリスティの中期以降の作品には多い。事件が起きるまでに相当の時間を費やすものが。

ポワロが幸せな朝食を堪能している最中に、若い女性が飛び込んでくる。ポワロを訪ねた理由というのが、
「私、殺人を犯したらしいのです...」

結局ポワロが歳をとりすぎているように見えるから依頼できないと言い残して彼女は帰ってしまうのだが、ポワロは気になって仕方がない。「歳をとりすぎている」と言われたことも相当悔しかった様子。友人である探偵作家オリヴァ夫人の協力もあって、不思議な言葉を残して去った女性の身元を突き止めることに成功した。ただしかし、彼女の言う「殺人」が見つからない。死体なき殺人の謎...。
本当に「謎」が多すぎて、なかなか解きほぐせないせいか、進展が遅く感じた。

それでも結局はあるパターン通りの結末かな。作品中で何度も強調されているものは、やはり重大な意味を持っているのだ。そのあたりに注目して読み進めると、何となく犯人にたどり着く。

ハッピーエンドの結末はクリスティっぽくていい。

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2008/11/25

複数の時計

複数の時計
著者:アガサ・クリスティ
訳者:橋本福夫
解説:柿沼瑛子
★★☆☆☆

正直言って、つまらなかった。
クリスティ作品、特にポワロものに甘い私でも読むのがつらかった...。
やっぱりスパイやなにかが絡んでくると面白くない。
ポワロが安楽椅子探偵に徹しているせいもあるかもしれない。なんだか歳をとってひがみっぽくなった感じがして、ポワロが好きなだけに読むのがしんどかった。クリスティ自身、あまりポワロが好きじゃなかったのか...。

冒頭部分はとてもよかった。
タイプ引受所から派遣されたタイピストがある家を訪れると、沢山の時計があり、全てが4時13分を指している。実際は3時過ぎにもかかわらず、だ。そして床の上には男の死体...。それが何者かもわからないときている。

第一発見者であるシェイラも出生の秘密を抱えているし、その家の持ち主である盲目の女性もなんだか謎めいているし、とても期待を持たせる始まり方だったのに、読み進めるにつれて段々とつまらなくなっていくのだ。
何故だろう?
たぶん飾りが多すぎたんだな。謎のてんこ盛りって感じだった。

読み終わったあとも「やっと終わったか...。」という感想しかなかった。登場人物にも魅力を感じなかったし。

ただ、ポワロが語るミステリ談義は読む価値有り。この部分が一番楽しかった。クリスティのミステリ感が出ている。

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2008/11/24

ほぼ日手帳公式ガイドブック

ほぼ日手帳公式ガイドブック あなたといっしょに、手帳が育つ。
編著:ほぼ日刊イトイ新聞
★★★☆☆

ほぼ日刊イトイ新聞が企画・発売した「ほぼ日手帳」。愛用するようになってから2年が経った。
1ページ1日。とにかくなんでも書き留めたくなる私にはピッタリの手帳だ。
カバーもいろいろと選べるし、1ページごとの下に書いてある「日々の言葉」も楽しい。
しかも1月始まりと4月始まりの2種類がある。
で、2009年度版からは日曜始まりと月曜始まりが選べる。

この手帳の2007年版、2008年版のガイドブックも購入したのだが、つい2009年度版も購入してしまった。
内容は、ほぼ日のサイトに掲載されているものが本になったものだと思っていい。
なので、サイトで見られれば充分、という方には必要のない本だろう。
いちいちPCを立ち上げるのも面倒だし、いつでもちょこちょこ見られるようにしたい私は、つい3年間も買い続けてしまった。しかも、この3年間、掲載されていることはあまり変わらないので、どれか1年度分を購入して、変化した部分だけサイトで確認、というほうが賢い。

内容はというと、ほぼ日手帳の仕様や、47人のユーザーの使い方の紹介。そんな感じか。
他人の手帳を少しだけど見ることができるので、手帳の使い方の参考になる。

今までは文庫本サイズのみだったが、2009年度版からA5版のCOUSIN(カズン)が発売される。
昨年度、文庫本サイズを2冊購入し、1冊は読書記録用、1冊は普段使いの手帳と使い分け...ようとした(結局、1冊はほとんどサラのまま2008年は終わる...)。
2009年版は、カズンの1月始まりを1冊、文庫本サイズの4月始まりを1冊購入しようかと思っている。

今の自分の気持ちや、その日に起こった出来事などを長々と書いてしまう私には、文庫本サイズにぎっしり書いてもまだ書き足りないということも多かったので、カズンの発売は大歓迎だ。

ガイドブックは本屋さんやAmazonなどでも購入できるが、「ほぼ日手帳」自体は、ほぼ日サイトかロフトでしか購入できない。
ネットで購入される方は、こちらで。
ほぼ日刊イトイ新聞-ほぼ日手帳CLUB
1月始まりの手帳は、今ならまだ申し込みが可能のようだ。
4月始まりの手帳(SPRING)は、2月から申し込み開始。

使い始めるとやみつきになる、面白い手帳だ。
(結局「ガイドブック」ではなく「ほぼ日手帳」のお知らせになってしまったか...。)

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2008/11/23

鳩のなかの猫

鳩のなかの猫
著者:アガサ・クリスティ
訳者:橋本福夫
解説:浅暮三文
★★★☆☆

上流階級のお嬢様たちが競って入校したがるような名門女子校メドウバンクで連続殺人事件が起きる。教師が次々と殺害され、最終的には4人が死んでいくのだ。

その事件の少し前、ある王国では革命騒ぎが起きていた。国王が命を狙われ、王国から逃げ出すため、側近と共に極秘に飛行機に乗り込む。その飛行機は事故で大破し、2人の死亡が確認され、国王の一族が蓄えていた何十万ポンドもの宝石の行方がわからなくなってしまったのである。

この国王の従姉妹がメドウバンク校に入校したことから、宝石が彼女に預けられたのではないかと、あれこれ怪しい人物が近づいてくる。

3教師の連続殺人事件は宝石紛失と関係があるのか、それとも個人的な怨恨によるものなのか...。最後は、意外と言えば意外、そうじゃないと言えばそうじゃない、二面性のある結末となった。
2つの動機が絡む連続殺人。1つの動機には全く魅力を感じないし興味もないが、もう1つの方は私の好きなタイプの犯罪。
無機質な殺人ではなく、非常に人間的な殺人。
だからこそ、何とも言えないもの悲しさが漂う。

それにしても、この作品。ポワロものじゃなくてもよいと思うのだが。浅暮三文氏が解説でも触れていたが、この作品は犯人を当てる「推理」に重点を置いたものとは思えない。
「消えた宝石はどこに!」といった感じのハラハラドキドキを楽しむものだ。だからポワロが活きてこない。ポワロファンとしては、もったいないなと残念に思ってしまう。
ポワロが出てこない方がかえってよかったかもしれない。

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2008/11/22

死者のあやまち

死者のあやまち
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:横井司
★★★☆☆

この作品も10数年ぶりに読み返したのだが、詳細はほとんど記憶になかった。何となくこんな感じだったかなという程度で、一番のキーポイントである「屋敷の持ち主は誰か?」についてはすっかり忘れていた。
動機に繋がる大事なポイントなのに。

オリヴァ夫人にはからきし弱いポワロの困った様子が出ている冒頭部分がいい。
いきなりオリヴァ夫人から電話がかかってきて、「とにかく今すぐこちらに来てくれ、訳は言えない」と言われたポワロ。不満に思いながらも好奇心からか旅支度を始めてしまうのだから、オリヴァ夫人の作戦勝ちといったところか。上手いことポワロを引っ張り出した。

オリヴァ夫人が知人に頼まれ、ある田舎の大きな屋敷でのパーティで行われる殺人犯人捜しゲームの筋書きを担当することになった。
オリヴァ夫人がポワロをこのパーティに参加するようにと頼む。なぜなら、なにか悪い予感がするからだというのだ。
その予感は見事的中。ゲームの最中に被害者役の少女が、本当に殺されてしまう。しかも、パーティが行われた屋敷の夫人も行方不明に...。

実は、あまりオリヴァ夫人は好きではない。本当に支離滅裂すぎるので。
今回もいろいろな推理を展開していたが、少し邪魔だなと感じてしまう。
直感はいいので、ポイントを突いていることは多々あるのだが、なんせ非論理的なのである。

真相に絡むある老婦人のエピソード自体は好きだ。このエピソードだけなら10点満点。母親の切なさが出ている。

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2008/11/21

ヒッコリー・ロードの殺人

ヒッコリー・ロードの殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:高橋豊
解説:JET
★★★☆☆

とある学生寮で小さな盗難事件が連続して発生。盗まれたものは...

靴の片方、安物のブレスレット、
化粧用のコンパクト、高価な指輪、
聴診器、イヤリング、シガレットライター、
古いフランネルのズボン、電球、
箱入りのチョコレート、絹のスカーフ、
リュックサック、ホウ酸の粉末、
バスソルト、料理の本

ポワロがこの寮に乗り込んだすぐあと、一人の寮生が、このうちのいくつかは自分が盗んだんだと告白する。しかし、次のものは盗んでいないと主張するのだ。

聴診器、電球、リュックサック、ホウ酸の粉末

さて、これらは何のために誰によって盗まれたものなのか...?
最後にはポワロの推理によって、全てのものがあるべき場所に収められていくのだが、一見すると何の意味もなさそうなものばかりなのに、それぞれがちゃんとした役割を担っているのだ。ここが面白い。

ただやはり大きな組織とかが絡んでくると、その分だけ私の評価は下がってしまう。個人的な犯行であっても、こういう組織の存在があると、なんだか面白みが減ってしまう。
私の好みには合わないようだ。

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2008/11/20

パソコンマナーの掟

パソコンマナーの掟―今さら人には聞けない「べからず!」集
著者:きたみりゅうじ
★★★★☆
※私が購入したのは単行本ですが、上記は幻冬舎文庫版へとリンクします。

「非常に面白い(ガリレオ風に)」。
笑い事じゃないかも...と思いながらも笑えた。
エピソードに4コマ漫画がついており、楽しみながら読める。
一つ一つのエピソードには、必ずこうした方がいいという「教訓」が添えられているため、読み終わる頃には新しい常識が身に付いているだろう。

比較的すんなりとパソコンになじんでしまった私には、思いもよらないことが書かれていた。しかし、パソコンが苦手な妹は、「わかる、わかる」とうなずきながら読んでいた。

パソコンが苦手だった上司が徐々にパソコンに慣れていき、初めて買ったデジカメで撮った何十枚もの忘年会の写真のファイルを、全く圧縮せずにメールに添付し、同じ課の社員十数名に同報で送信した。
メールへのファイル添付の仕方も覚え、同報メールの送信の仕方も覚えたこの上司。「どうだ。オレもすごいだろ」とばかりに得意げにふんぞり返っていたところ、課内のあちこちの席から「あれっ?」「なんで?」「おい、急に通信が重くなったよ」などと声があがり始めて、「ん? ナニが起きたんだ?」と人ごとのようにつぶやく。
そんな場面が描かれている。

苦手だから...と恐る恐るパソコンに触れ、わからないことが出てくるといつも誰かにヘルプしてもらう、というのも問題だが、もっと問題なのは、ちょっと覚えたての人が、パソコンを触ることの楽しさを知って、知識もないのにあれこれやっちゃうってヤツ。「コレやっちゃ~ぁ、イカンでしょ...」というのを平気でやってしまう人もいるのだ。

パソコンが苦手だと思っている方にはもちろん読んでいただきたい一冊ではあるが、パソコンに対して一度も苦手意識を持ったことのない方にもお薦めだ。
苦手な方がどんなところで悩んでいるのか、つまづいているのかが、わかるかと思う。

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2008/11/19

葬儀を終えて

葬儀を終えて
著者:アガサ・クリスティ
翻訳:加島祥造
解説:折原一
★★★★★

裕福な一家の当主リチャードが死亡し、その葬儀の後で無邪気な末妹コーラが言い出す。
「あら、リチャードは殺されたんじゃなかったの?」と。
その翌日、彼女が惨殺死体で発見される...。
当然リチャードの死が疑われることになる。
病死と診断されていた彼は、本当に「病死」だったのか?
コーラは何かを知っていたために殺されたのか?

殺人のトリックや巧妙な伏線やミスディレクション、どれも素晴らしい作品なのだが、一番の魅力は何と言っても犯人のキャラクターにあると思う。私好みの犯人だ。
自分の欲望のためなら他人の命など簡単に消してしまえるある種の無邪気さを持った犯人には、背筋が寒くなるような怖さを感じる。夢見る中で行われた冷酷な犯行。一度読んだら忘れられない殺人犯だ。

スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズで本作品が映像化された。「名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 2」に収録されている。
トリックがトリックだけに映像化は非常に難しいように思えたが、こちらも素晴らしい作品だった(ネタバレにはなっていないと思うが、未読の方の興趣を削いでしまったとしたら、お許しいただきたい)。
再度鑑賞した後に、感想をアップしたい。

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2008/11/18

マギンティ夫人は死んだ

マギンティ夫人は死んだ
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:仁賀克雄
★★☆☆☆

スキャンダルなどとは何の縁もなさそうなごく普通の掃除婦が自宅で撲殺され、30ポンドの現金が盗まれた。ただ一人の間借人ベントリイの服に彼女に血が付着していたことから、彼が逮捕され、死刑が確定する。
しかし長年の刑事の勘から彼は犯人ではないと感じたスペンス警視は、ポワロに再調査を依頼することに。

一番問題なのは「動機」だ。
財産を持っているわけでもなく、痴情沙汰に巻き込まれそうもない老婦人を殺そうと思う人間がいるだろうか。確かに30ポンドの現金が盗まれているが、それが果たして殺人の動機になるかどうか...。
「動機」を見つけるキーポイントは、彼女の職業。彼女は「掃除婦」だった。いろんな家に出入りすることができたし、その家の秘密も知り得る立場にいたのだ。彼女に秘密を知られてしまった人物、それが犯人である。
(「家政婦は見た!」シリーズみたいだな(苦笑))

確かに二転三転する展開に驚かされるが、私の評価はあまり高くない。15年ぶりくらいに読み返したのだが、詳細はほとんど記憶に残っていなかった。
オリヴァ夫人が登場していたことも忘れてしまっていた。
クリスティ作品の中では少し長めの作品なのだが、話のテンポが遅いというか、なんというか...。
つまりは冗長なのだ。謎解きよりもポワロの愚痴に付き合わされているような、そんな印象を受けた。
トリックはそれほど悪くないのに、少し残念。

クリスティ後期のポワロシリーズは、こんな感じのものが多い気がする。

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2008/11/17

オトナ語の謎。

オトナ語の謎。
著者:ほぼ日刊イトイ新聞
監修:糸井重里
★★★★★
※私が購入したのは単行本ですが、上記は新潮文庫版へとリンクします。

ほぼ日刊イトイ新聞発のものは、「言いまつがい」なども好きだが、まずはこちらからご紹介。
「オトナ語」というのは、いわゆる「業界用語」なんかも含んでいたりして、サラリーマン(特に営業関係かな?)特有の言葉遣いを指す言葉のようだ。
たとえば、最初の一つ目は次のような言葉。

***以下引用***

『お世話になっております』
オトナの世界はこのひと言より始まる。いわば「お世話になっております」はオトナの世界における万物の始まりといっていい。使いかたの基礎を述べるとすると、ほんとうにお世話になっているかどうかは関係がない。
とにかく、開口一番、あっという間にそう述べるべきだ。
「お世話になっております」
そう、たとえあなたがまるでお世話になっていなくても。
「お世話になっております」
むしろオレがおまえをお世話しているのだと思っても。
「お世話になっております」
あなたと私は絶対に初対面ではあるけれど。
「お世話になっております」
たとえ先方の電話に出たのがベッカムだとしても。
「お世話になっております」
たとえメールを送る相手がローマ法王だったとしても。
「お世話になっております!」

***引用終了***

こんな感じで始まる。
確かに職場で電話に出ると、たとえどこの誰であっても「お世話になっております」と言ってしまうかも...。
以下こんな感じで、「よろしくお願いいたします」「おはようございます」「お疲れさまです」と続いていくのだ。
オトナ語をただ普通に並べただけじゃなく、うまいツッコミ解説が入っているのも◎。

ところどころにあるコラムも面白い。
「男女の別れをオトナ語でアレンジ」などでは、

***以下引用***

『別れの提案』

「いつもお世話になっております。えー、さっそくではございますが今回は、お別れのご提案でございます。といいますのも、先日ワタクシ夏期休暇を利用いたしまして郷里に戻ってまいりました。その際にですね、今年のゴールデンウィークの帰省のときについナニした同窓生、え、こちら仮にA子さんといたしましょう。彼女からですね、そのー、ジュニアができた、というご報告を受けまして。もう時期が時期だけに物理的に待ったナシとのことで、きんきんに身辺整理し、その結果をフィードバックするようにというのが先方さんのご要望でして...。ここはひとつ泣いてくれませんか」

***引用終了***
(長文引用、失礼!)

この返事もまたオトナ語でアレンジされているのだが、本当に「コミカル」という言葉がピッタリである。
昔話のオトナ語アレンジもお薦め。

日本語なんだか外国語なんだか不明な変な言葉。それが「オトナ語」。
単語、単語の意味はわかるけど、結局何が言いたいんだか具体的にはわからない言葉。それが「オトナ語」。
ツボにはまるといきなり大爆笑!になりかねないので、人前で読むのは避けた方がよいのではないかと思う。

なるはやで次の記事サクッと仕上げちゃいますんで、もしアレなら、明日(ミョウニチ)も当ブログをご高覧くださいますと、こちらといたしましてもモチベーションが上がって、毎日更新するということに特化したブログをご提供できますので、ウイン・ウインの状況でお互いハッピーな感じになるかと存じますが...、どうですかね?

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2008/11/16

カタログが読める本

パソコン・周辺機器・デジタル家電のカタログが読める本
著者:エクスメディア
★★★☆☆

基本的に家電は好きだ。PCも好き。
がしかし、得意なのはマニュアルを見ながら、あーだこーだと遊ぶことであって、スペックがどうたらこうたらというのは、全く興味がなかった。

「デジカメ、買ったよ~」
「へぇ~、画素数はどんくらいなの?」
「え~と...。わかんない...。」

「USBメモリ、買ったよ~」
「へぇ~、転送速度ってどのくらい?」
「うっ...。わかんない...。」

といった会話を交わしてきたわけである。
で、周囲にも家電大好き人間がうようよといて、あの機器のなんたらがどうたらとか、なんたら端子がこうたらとか話しているのを意味がわからないまま聞いているのも、ちょっと(いや、かなり)悔しいなと思い、手に取ったのが本書。

いろんなAV端子の違いとか、CPUの基本的な種類等や、PCのインターフェースの種類など、詳しい人にとってはどうってことないことを、説明してくれている。

これももう3年前の本なので、時代遅れになってしまっている部分もある。
今時の家電選びに役立つことはないかもしれないが、家電大好き人間との会話に多少はついていけるようになるんじゃないかなと思う。
が、もともとあまり興味がないせいか、なかなか内容が記憶に残らないのが難点(本ではなく自分の問題)。
(正直、「使えりゃ、何だっていいじゃん」と思う)

*****************
こういう本って、3年も経つとほとんど手に入らないようだ。
この本もおそらく古本屋さんでしか売ってないかも。

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2008/11/15

メーラーだえもんさんへの手紙

メーラーだえもんさんへの手紙
著者:メーラだえもん
★★★★★

メールアドレスを間違えて送信すると、相手が見つからず、メールサーバーから「このアドレス間違っていませんか? もう一度確認してください」といった内容のメールが返信されてくる。
が、これが英語で送られてくるものだから、いろんな勘違いが起きるのだ。

この「アドレス間違ってますよ~」というメールに返信する人々がいるらしく、その返信されてきたメールを集めたのが本書、「メーラーだえもん(MAILER-DAEMON)さんへの手紙」である。

「あなた誰なの?何度も何度もむかつくんですけど」「外人からメールがきたよ」「良かったらメル友になりませんか」など、「おい、おい、おい」と突っ込みたくなるものが満載。
この勘違い返信に対して、だえもんさんが一言メッセージを添えているのだが、それまた笑える。
電車の中など、他人のいる場所で読むと危険かも。突然の笑いに襲われる可能性が高い。

3年前の本なので、今では勘違いして返信する人はそんなにいないかもしれない。
それとも、携帯メールなどの利用層が広がっているから、増えているのかな。

こちらがネタもとになっているらしいので、ご紹介。
メーラーだえもんさんへのお手紙

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2008/11/14

33分探偵 シナリオ・ガイドブック

33分探偵 シナリオ・ガイドブック
★★★★☆

2008年08月から09月までの間、フジテレビの土曜ドラマ枠で放送されていた、堂本剛主演のドラマの関連本。
普通なら5分で解決してしまう簡単な事件を、33分持たせることに心血を注ぐ33分探偵鞍馬六郎(堂本剛)。このドラマのなんだかゆる~い設定にはまって、ガイドブックにまで手を出してしまった...。

主演の堂本剛のインタビューはもちろん、33分持たせるためのキーワード辞典、探偵事務所の解説、脚本・監督をつとめられた福田氏のインタビューと、なんやかんやで盛りだくさんである。
しかしやはり、一番のお薦めは全9話分のシナリオ。
関連する場面の写真もなく、文字だけなんだけど、ドラマのシーンが頭によみがえってくる。
よって、ドラマを観たことのない方には、読んでも全く何がなにやらわからないだろうと思うので、DVD「33分探偵 DVD-BOX 上巻」「33分探偵 DVD-BOX 下巻」との同時購入をお薦めしたい。
私は経済的な事情により、現段階での購入予定はない(いつかは購入したいと思う)...。
今のところは記憶を頼りにシナリオを読むことだけで、我慢しておこう。

「なんやかんやは....、....、なんやかんやです!!」が、私の今年の流行語大賞だ。

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2008/11/13

小説イキガミ

小説イキガミ
著者:百瀬しのぶ
原作:間瀬元朗
★☆☆☆☆

ヤングサンデーコミックスでヒットした同名のコミックを、小説にしたもの。
コミックのほうも、3巻ぐらいまで読んだかな。
最初に言ってしまうと、コミックのほうが「まだ」矛盾感を抱かずに読める。
何となく絵にごまかされてしまうというのか....。
文字だと、そのごまかしがきかない。矛盾は矛盾としてしか受け入れられないのである。

このストーリーの中の世界には、ある法律がある。
「国家繁栄維持法」というものだ。
この国の国民は小学校入学と同時に、「国繁予防接種」というものを受けさせられる。これは「義務」である。
その「予防接種」の中身とは...。
ワクチン1,000本に1本の割合(0.1%)で、あるカプセルが混入されており、そのカプセルが混入されたワクチンを打たれた者は、18歳から24歳までの間に、そのカプセルが体内で爆発し、死んでしまうというもの。
カプセルを注入された者には、死ぬ24時間前に役所の役人によって「死亡予告証(逝紙)」が届けられる。
つまり、小学校入学の段階で、1,000人に1人が若いうちに死ぬと決められるわけだ。
もちろん、誰の身体にカプセルが注入されたのかは、逝紙が届くまで誰も知ることはできない。

何故こんなワクチン接種が義務なのか...。
それは、国民がその時期が来るまで「自分が死ぬのでは」という危機感を常に抱きながら成長することになるため、「生命の価値」に対する意識が高まり、より健全な国家意識と倫理観を醸成し....云々と言うことらしい。

で、このストーリーの主人公は、「逝紙(イキガミ)」配達人となった藤本である。
配達人には、役人の中から選ばれたエリートしかなれないそうだ。
藤本は、このイキガミ配達の職務を行いながらも、本当にこの法律がいいものなのかどうかを悩み続ける。悩み続けるが、配達も続ける。

そのイキガミを受け取った4人の24時間を描いたのがこの小説。

さて、前述した法律。現代の日本で、成立しうるものだろうか?
この法律について反対意見を口にすると、「退廃思想者」として、例のワクチンが注入される。
ということは、成立したが最後、この法律をなくすことができないということになるんだよな...と、思うのだがどうだろう?
イキガミを受け取るのは18歳から24歳までの若者。
「生命の価値」を知り、生きている間の自分の時間を1分1秒、大切に生きるというのであれば、特に若者に限らなくても良いだろうに。24歳を過ぎてしまえば、「あぁ、自分は外れだったのか。よかった。」で終わってしまうのでは?
これはたぶん、若者の死を描いた方が、より切なさや、やるせなさがアップするからなのだろうな。

小説を読んでいる限り、この小説の舞台となっている国は現代の日本とあまり変わりないように思える。いじめもあるし、犯罪もあるし(生命の価値に対する意識が高まり...云々の効果があまりない)。
なのに、こんなむちゃくちゃな法律がまかり通っている。
この法律で誰が得をするというのか...。ワクチン会社か?
ともかく、その矛盾点ばかりが気になるのだ。

ま、1つのストーリーの最後で、反対のため立ち上がろうとする男が登場するのが救いかな。また、小学校入学時のワクチン接種を拒む母親も登場する。
普通はそうでしょうよ。0.1%の確率で「死(計算された死)」が当たってしまうかもしれないワクチン接種を、我が子に受けさせたい親がどこにいるっていうのよ。

矛盾点を抱いたまま、その世界に入り込めないで読むと、「あぁ、ここで感動させたいのね」というのが見えてしまうので、余計にしらけてしまう。

コミックはまだ続いているようだが、良い方向へと転換していくのだろうか。それとも、延々と同じようなストーリーが続くだけなのか。
それはともかく、中途半端に同じようなストーリーを並べただけのこの小説はいただけない。

法律による強制的な死亡ではなく、ウィルス等による死だとしてストーリー展開していけば、どうだっただろうな。
あちこちで使われたネタだけど。
ウィルス感染によって死を迎えるんだけど、それが発覚するのが24時間前である、とかさ。ちょっと浅知恵っぽいかな(苦笑)。
矛盾さえ感じさせなければ、それなりに読めると思うんだよね。
だから★1つ。

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2008/11/12

満潮に乗って

満潮に乗って
著者:アガサ・クリスティ
訳者:恩地三保子
解説:中川右介
★★★★★

前日に引き続き、魅力的な女性が登場する作品。
気が強くて負けず嫌いなリン・マーチモント。
か弱くて無垢な心を持った女性ロザリーン・クロード。
2人とも非常に個性のある魅力的な女性だ。
私はリンのほうに、より好意が持てる。

戦地から田舎に戻ってきたばかりのリン・マーチモント。戦争が終わって何もかもが高価になる中、日々の食事の準備にさえも心を悩ませる母を憐れに思いながらも、裕福だった叔父の遺産を狙おうとする母や親族に嫌悪感を抱く。婚約者であるローリーに対しても...。

リンの婚約者であるローリーは戦争中は出征せず、ずっと田舎にとどまっていた。戦地での日々を経験したリンからみれば、彼は少々退屈に見えてしまう。
彼と結婚し退屈な一生を送ることに迷いを感じているとき、見るからに危険な香りのする男と出逢った。裕福だった叔父と結婚したばかりの若い未亡人ロザリーンの兄、デイヴィッド。叔父の遺産を奪った相手になるわけだ。
最初は敵対心を抱くが、徐々にデイヴィッドに惹かれていくリン。それに気付き、ローリーは焦り始める。

デイヴィッドとローリー、リンとロザリーン。
この4人の恋物語としても非常に面白い作品だが、もちろんミステリとしても読み応えのある一冊でもある。
このミステリでは、3つの死体が出てくる。
果たして殺人なのか、自殺なのか、はたまた事故死なのか..。それすらよくわからない。
最後の最後に1人の人間が本性をあらわす。それが少し突拍子ないと言えなくもないのが少々難点だが、驚かされることには間違いはない。
このミステリのポイントも「動機」。
一見単純な犯行に見えるけれど、絡まった糸のように様々な人間の思惑が入り組んで、なかなかほどけてはくれない。

この物語で一番印象に残ったのは、戦争についてのリンの言葉だった。

***以下引用***

子供のころからいつも彼女は、はっきりした頭脳の持主で、ものごとを明快に裁ける人間だった。自分の望んでいることと望まないことをつねにはっきりできる人間だった。いままでは、あなたまかせなふらふらした動きかたをただの一度もしたことがないのだ。
そうだ、それなのだ。そのふらふらした動きなのだ!
あなたまかせの、はっきりした目的のない生き方。それが彼女の故郷に帰ってからの毎日だった。
あの戦場の日々への郷愁が波のようにリンの心を襲った。各自の責任がはっきり規定され、生活は一糸みだれぬ計画にしたがってはこばれ、そして個人の裁断などというものが必要とされなかった日々がリンにはなつかしかった。
だが、そう考えてゆくうちに、リンは急にぞっとしてきた。みんなこんなことを考えているのだろうか、心ひそかにみんなが願っているのはこんなことなのだろうか? これがつまり戦争が人々の心に植えつけていったものだろうか?
戦争の本当の怖ろしさは、けっして肉体的なものではなかった。海にかくれた水雷、そらからの爆弾、荒野を走る車にうちこまれるライフル弾のうなり、そんなものは、肉体だけの記憶でしかないのだ。本当に怖ろしいのは、考えることをやめればずっと楽に生きていかれるということを知る、精神の記憶なのだ。
現在のリン・マーチモントは、入隊したときの頭脳明晰な決断力に富んだ娘ではなくなっている。彼女の頭脳は、職場では専門化され、整然と分類された範疇の一つにはめこまれてしまっていた。そしていま、ふたたび自分自身の、そして自分の生活の主人に戻ったリンは、自分の個人的な問題を把握することから顔をそむけているような心のあり方にぎょっとさせられている。

***引用終了***

戦後だけじゃなく、現代でも当てはまりそうな感じがする。マニュアル化された世界に慣れれば慣れるほど、そしてそれに慣れることが早い人ほど、同じことを感じるのかもしれない。
決して「マニュアル」自体を否定するわけではないのだが...。

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2008/11/11

ホロー荘の殺人

ホロー荘の殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:中村能三
解説:はやみねかおる
★★★★★

ポワロものの一つだが、この作品の中でポワロはそれほど重要な役割は果たしてない。クリスティが語っているように、ポワロはいなくてもよかったように思う。

この物語にはいろいろなタイプの女性が登場。
その類いまれなる天真爛漫さで周囲を困惑させるにもかかわらず、人を惹きつけずにいないアンカテル夫人。
誰よりも強くて、優しくて、知性にあふれるヘンリエッタ。
報われない愛をいつまでも大事に暖め続けて、自分の道をひたむきに歩いていくミッジ。
ただひたすら夫と子供のことのみに自分の人生を捧げ、その愛にすがって生きているガーダ。
常に人に注目されることを望み、全ての男性が自分にはひざまずくものだと信じているヴェロニカ。

ガーダの夫ジョンの元恋人がヴェロニカ。今の恋人がヘンリエッタ。ミッジはエドワードを愛しているが、エドワードはヘンリエッタしか見えていない。
それぞれの愛が絡み合っている中、悲劇が起こる。ジョンが射殺されるのだ。
動機は...? 嫉妬? それとも...。

ミステリとしても、恋愛小説としても、とても読み応えのある作品だ。登場する女性たちがみんな魅力的。一度読んだら忘れられない人ばかりだ。
それに比べると男性陣は、ちょっと不満足かな。それでも彼女たちにとっては魅力ある男たちなんだろうけれど。
私の評価は、魅力的な女性が登場する作品だと甘くなる傾向にあるな。

最後のシーン。
悲しみに埋もれてしまいたいと願いながらも、それができないある女性の言葉で終わる。常に冷静な第三者が自分の中に存在していることに気づいてしまう彼女。一番悲しい女性かもしれない。

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2008/11/10

五匹の子豚

五匹の子豚
著者:アガサ・クリスティ
訳者:桑原千恵子
解説:千街晶之
★★★★★

16年前に裁判も終了し、一応の解決をみた殺人事件について再調査して欲しいという依頼を受けたポワロ。
依頼人は、カーラ・ルマルション。毒殺されたのはカーラの父。犯人として裁かれたのはカーラの母だった。夫殺しの犯人として獄中死した母は、無実だったのだとカーラは信じている。

事件の関係者は5人。
殺害されたカーラの父アミアスの親友、メレディス。
アミアスを敬愛していたメレディスの弟、フィリップ。
カーラの母カロリンの異父妹、アンジェラ。
アンジェラの家庭教師、セシリア。
そして、アミアスの愛人、エルサ。

まず、ポワロはこの5人を訪ね、この事件について手記を書いて欲しいと依頼する。既に解決した事件を蒸し返して何の意味があるのかと、誰もが不審に思いながらも、承諾する。

一人の気まぐれな芸術家が愛人を家庭に連れ込み、そして毒殺された。第一発見者である妻が、激しい嫉妬から殺害したものとして逮捕された。この事実を、5人それぞれが違う視点から捉え、振り返っている。
同じ会話を聞いていても、同じ行動を見ていても、受け取り方次第でこんなにも解釈が異なるのかと、驚かされた。

16年前の事件であるから、物的な証拠は何一つと言っていいほど残っていない。頼るべきはただ関係者の証言のみ。しかも、それが真実を述べているのかどうかの確証もない証言だ。
それをもとに、当時の警察も見つけられなかった真実をポワロが見つけ出す。最後に関係者を集めてポワロがいつもの謎解きを始めるのだが、その鮮やかさには、惚れ惚れする。
物的な証拠のみに頼らず、関係者の心理面からの捜査を重視するポワロならではのミステリだ。

もちろん最後には真犯人が明らかになる。
クリスティ作品の中でも、一、二を争うほど、哀しい結末だった。

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2008/11/09

白昼の悪魔

白昼の悪魔
著者:アガサ・クリスティ
訳者:鳴海四郎
解説:若竹七海
★★★★☆

このミステリは「伏線の見事さ」に尽きる。冒頭部分から、どんな小さな言葉も、どんな些細な出来事も、ちゃんと真実へ導く手がかりになっている。
クリスティの作品は、伏線がキチンと張りめぐらされているものが多いが、ここまで「計算されてるな」と感心するのも珍しい。初読より、再読したときの方が、感動が大きいかもしれない。

美しくわがままな女性と、一見おとなしいその旦那。
若くて精悍な男性と、気が弱くて悲観的なその妻。
そして、美しい女性と若い男との火遊びが始まり、お互いの伴侶が嫉妬に苦しんでいる中、その美女が殺害される...。

ポワロが登場する中編「砂に書かれた三角形(『死人の鏡』に収録)」と同じシチュエーション。
ただし、結果は...?。

DVD
地中海殺人事件

クリスティ「白昼の悪魔」を映像化。ただし、ポワロ役はピーター・ユスチノフ。
登場人物を絞っている。削られた人物の設定を、他の人物が引き継いだりしている部分がちらほら。全ての人物がみんな被害者アリーナを殺害する動機を持っており、誰も彼もが怪しく見えてしまう。
原作の持つ「悪」の重さは感じられなかったが、風景や音楽など、映画ならではの華やかさはある。

依頼人に旅費の上乗せをねだったり、水着姿になってみたり、私の持つポワロのイメージとは違いすぎるポワロがでてきた。これって、ポワロじゃないよ...。そんなことばかりが気になってしまった。
スーシェのポワロになじんでしまった今となっては、ピーター・ユスチノフのポワロは、なんだか違和感がありすぎ。原作に登場するポワロより、コミカルさだけを強調した感じ。
スーシェは、イギリス人の中にあって、私の目からも一目で"外国人"だとわかるが、 ピーター・ユスチノフは、馴染んでしまっているように見える。
デビッド・スーシェの「名探偵ポワロ 完全版 Vol.31「白昼の悪魔」」も、観たのだが、感想は後ほど...。

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2008/11/08

死神の精度

死神の精度
著者:伊坂幸太郎
★★★☆☆

初めて手にした伊坂作品。
金城武主演の映画の予告が気に入って購入。結局、映画は観てないのだが...。

全体的にサラッと読める文体で、気に入った。
読み始めると、次々にページをめくることができてしまう。
ストーリーは、「死神」が担当した人間の「生」「死」を、約1週間かけて判断するというもの。
ある一人の「死神」:千葉が担当した、6つの生と死を綴っている。

千葉の、冷徹なのか情があるのか、よくわからない不思議な感覚も、なんだか好きである。
淡々と「生」「死」を判断しているようにみえて、その裏の人情の温かさみたいなものも感じさせられる。
人間ではないからこその疑問や思考過程も興味深い。
基本的に短編集なので、どこから読み始めてもOKなのだが、最後の話だけは最後に読まなきゃ意味がない。

伊坂氏の他の作品も読んでみたいと思わせる1冊だった。

次に読もうと思っている「イキガミ」。
こちらも「死」をテーマにした話で、映画化もされている。
どちらに軍配があがるだろうか...。楽しみだ。


***********
本読みな暮らし:死神の精度

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2008/11/07

愛国殺人

愛国殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:小森健太朗
★★☆☆☆

クリスティお得意の童謡殺人の一つ。マザー・グースをよく知っていたなら、もっと楽しめるんだろうなと思う。
日本の童謡(子守唄、手鞠唄)をモチーフにした殺人が、横溝正史氏の金田一シリーズでもある。童謡の持つ無邪気さと、殺人の残忍さのギャップがあればあるほど、恐怖を感じる。
マザー・グースにあまり親しみを感じていないためか、この恐怖の部分が味わえなくて、残念だった。

英国ではタイトルが「One,Two,Buckle My Shoe」だったそうだ。それが米国版では「The Patriotic Murders」に替えられた。日本での「愛国殺人」というタイトルはここから来ている。最初は内容とちぐはぐな気がして、意味がわからなかったのだが、小森健太朗氏の解説を読んで納得した。なるほど、よく考えられたタイトルである。

しかし、そのタイトル通り、政治色が少し強くて、私の好みには合わなかった...。そうではなくて、遺産狙いや痴情沙汰と絡めるとかだとしたら、もっと面白かったのに。

トリックとしては、派手なものがあるわけではないのだが、いろんなところに細かな伏線が張られていて、読みながら何度も、前の方に頁を戻したりした。この点、犯人がわかった後に読み返してみても、楽しめる作品である。

ポワロに真相を突きつけられたとき、自分以外の命は虫けら同様に価値がないと言う犯人に対し、ポワロが言う。

「私のたずさわっているのは自分の命を他人から奪われない、という権利を持っている個々の人間に関することです。」

例えどんな理由があろうとも殺人は認めないというポワロの一貫した姿勢に改めて感動する一作。

物語の最後に心地よい"オチ"があることの多いクリスティ作品だが、この作品でも、それがある。ある人物にポワロがしてやられるのだ。
ずっと何かを隠しているらしいということは感じていたのに、それを突き止められなかったポワロ。本人からその真相が告げられたとき、ポワロはさぞかし悔しかっただろうな。

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2008/11/06

杉の柩

杉の柩
著者:アガサ・クリスティ
訳者:恩地三保子
解説:山野辺若
★★★★★

バラのように美しい女性メアリイが、エリノアの作ったサンドイッチを食べた直後に、苦しみだし死亡する。
エリノアが幼い頃から愛し続けていた婚約者ロディーが、メアリイに心変わりしたせいで婚約解消になったこともあり、動機も充分。全ての証言・証拠がエリノア有罪を指し示しているように見える中、ただ一人エリノアの無罪を信じようとする医師ピーターの依頼を受けて、ポワロが事件の真相追究にに乗り出す。

真犯人の意外さや殺害のトリックもいいのだが、何より心理描写の巧さが際立つ作品だと思う。
エリノアは、被害者メアリイを心から憎んでいた自分を誰よりも知っている。その死を望んだ瞬間が存在したことも嫌というほど自覚しているため、エリノアの無実を信じようとするピーターの気持ちと裏腹に、自分が殺したも同然ではないかと、その罪を認めそうになるのだ。

幼い頃から婚約者ロディーを全身全霊で愛し、その強すぎる気持ちを隠すために、必要以上に素っ気ない態度をとらざるを得ないエリノア。ロディーは、そんなエリノアの激しい愛には気づかず、表面に現れる彼女しか見えていない。
恋とは楽しいものではなく苦しいだけのものなのだと、恋人との結婚を目前にしていてもなお心からの幸せを感じられないエリノアの心理が、丁寧に描かれている。

まるでドラマを観ているかのように登場人物が生き生きと動いていて、臨場感のある法廷でのやりとりが魅力的な作品だ。

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2008/11/05

ポアロのクリスマス

ポアロのクリスマス
著者:アガサ・クリスティ
訳者:村上啓夫
解説:霞流一
★★★☆☆

冒頭にクリスティから義兄ジェームズへのメッセージがある。
ジェームズが最近のクリスティの描く殺人は洗練されすぎている、血が足りないという不満を述べたとのこと。「もっと血にまみれた、思いきり兇暴な殺人。それが殺人であることに一点の疑いも差し挟む余地のない殺人」を求めたとのことだった。
それに応えるように書かれたのが本書。確かにいろんな意味で「血」にまみれた作品だ。

クリスマス・イヴの夜、家族同士を争わせて楽しむような傲慢で頑固な老人シメオン・リーが、喉を掻き切られて殺害される。殺害された部屋は、中からドアに鍵がかかっていて、窓からも人の出入りができないような密室だった。いわゆる「密室トリック」をメイントリックにした作品というのは、クリスティには珍しい。他には...思い当たらないのだが、あったっけ?

このトリック、ちょっと無理があるような気がするのは、私だけか?
派手だけど、現実味にかけるというか...。
それにポアロが犯人を突き止めた理由というのが、ちょっとあやふやで、決め手に欠けるような気がする。なんだか雰囲気に頼っている感じがするのだ。

一つの家族が登場するだけだが、実に様々なキャラクターが集まっている。みんながみんなシメオンを殺す動機を持ち、それは経済的な理由であったり、恨みであったり。
しかし、最後にポワロが突き止めた犯人は、誰もが思いもつかない人物だった。
この犯人が明らかにされたとき、あるミステリが思い浮かんだ。これも"密室トリック"と"意外な犯人"で有名な古典ミステリだが、あまり詳しく書くと、ネタバレになってしまうかもしれないので、この辺にしておこう。

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2008/11/04

死との約束

死との約束
著者:アガサ・クリスティ
訳者:高橋豊
解説:東野さやか
★★★☆☆

「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」

このミステリは、こんな一言で始まる。
この言葉を発したのは、あるアメリカ人家族の次男レイモンド。話している相手は、彼の妹キャロル。殺してしまわなきゃいけない"彼女"とは、彼らの継母ボイントン夫人。

もと刑務所の看守であったボイントン夫人は、病的なほどに支配欲が強く、自分の子供たちを世間から隔離していた。さらに一種のサディストであった彼女は、子供たちが彼女の支配から逃れたいのに逃れられないと苦しむ姿を見て、喜びを感じていたのだ。

けれど長い間家の中で閉じこめられているうちに、子供らはそんな生活に慣れてしまう。彼らが自分の境遇を受け入れておとなしくなってしまうと、ボイントン夫人はつまらなくなり、刺激を求めて海外旅行にでかけることにした。旅行先で、他人と自分たちの違いを見せ付けることによって、子供らに新たな苦しみを与えて楽しもうというわけだ。

よくもまあ、こんなにひどい人間を創り出せたものだな。これじゃ、殺されても仕方ないかもしれない。それでも「殺人は許されない」というのがポワロの信念。容疑者であるボイントン夫人の家族は、お互いをかばい合って、なかなか本当のことを話そうとしない。殺人が起きたとき現場にいなかったポワロが真相にたどり着くためには、その場にいた人たちの話を聞くしかないのだが、みんながみんな嘘をついている。そんな中から少しの食い違いを見つけ、徐々に真相に近づくポワロのテクニックは見事なもの。

最後に証される犯人は、非常に意外な人物である。クリスティ作品の中で、これほど意外性のある犯人が出てくるミステリも多くないだろう。
ちょっとずるいなとも思う。『そりゃないだろ~』とでも言いたくなるような感じだ。
しかし、伏線はキチンと張られているわけで、インチキしているわけではないのだが...。

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2008/11/03

ナイルに死す

ナイルに死す
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:西上心太
★★★★☆

とても長いミステリ。全部で550頁を超えるくらい。しかも事件らしい事件が起きるのは250頁を過ぎてから。が、全体を包む邪悪な雰囲気に飲み込まれるようにこのミステリの世界に惹きこまれ、長さは全く気にならなかった。
登場人物も多いのだが、それぞれがとても個性的な人ばかりなので、名前は覚えられなくても、誰が誰だかわからないということはなかった。

親友ジャクリーンから恋人サイモンを奪い、自分のものにしてしまったリネット。そのハネムーンの行く先々にジャクリーンが現れ、リネットの神経はボロボロになってしまう。
3人の旅が進むうちに、徐々に緊張が高まっていき、何か事件が起こらずにはいられないような雰囲気に、偶然一緒に旅をすることになったポワロは不安を感じる。

その予感が的中し、ある夜、惨劇が起きた。リネットが射殺されたのだ。
しかし最も容疑の濃いはずのジャクリーンには、強固なアリバイがあった。

リネットのように生まれたときからお金持ちで、人も羨むほどの美貌と知性を持った女性は、自分でも気づかないうちに、いろんな敵を作ってしまうようだ。彼女に身の周りには、その死を望む人が多く隠れていたのである。ジャクリーンだけが殺人の動機を持っていた訳ではなかった。

誰もが怪しい行動をとる中、ポワロが推理を開始。

トリック的にはそれほど目新しいものではないけれど、小説としての完成度は高い作品だと思う。事件が起こるまでの長い前半部分では、展開はスローだが、徐々に高まる緊張感を感じさせながら、読者を引っ張っていく。
事件が起きてからは、次々に容疑者に関する新事実が明らかになり、どんどんスピードアップ。

しかし、よくもまあこんなに裏のある人間のエピソードを集められたものだ。殺人犯以外にも嘘をついている人が大勢いるものだから、真相がなかなか見えないのだ。終盤でポワロが語っているように「事件とは無関係な、まぎらわしいものを全部とりのぞいて、真実だけがみえるように」しなければ真犯人はわからない。
殺人事件とは関係ない小さな事件が絡み合って、より複雑なミステリになっている。

それにしてもポワロはどの時点で真相にたどり着いたのか?
読みようによっては、最初から知っていたようにも思える。非常に暗示的な言葉のやりとりが、あちこちで行われているのだ。

最後まで読んでも解けない謎がひとつ残ってしまった。
作品の冒頭で、とある高級なフランス料理店でポワロが食事をする。どんな有名人でも、どんなお金持ちでも、なかなか特別待遇が受けられないこのお店で、ポワロは非常に大切にもてなされている。
どうやら過去にこの店で殺人事件が起き、それをポワロが解決したらしいのだが、どの事件なのかが思い当たらない...。短編なのか?
店の持ち主の名は「ムッシュー・ブロンダン」。
いつかまたこの名に出逢う日が来るだろうか。それまで忘れないようにしなければ。

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2008/11/02

示談交渉人-交通事故の恐るべき舞台裏

示談交渉人―交通事故の恐るべき舞台裏
著者:吉田透
★★★★☆

以前にご紹介した「交通事故示談屋」と同じ著者の本である。
この本の帯に、次のような文句が書かれている。
「事故れば地獄、その後の示談はなお地獄!!」

以前の書も含めて、この2冊で私が学んだのは、事故を起こしても、または事故に巻き込まれても、必ずしも保険会社が示談交渉してくれるわけではない、ということだ。

また、保険会社=保険代理店ではないということも知った。
多くの保険会社では、保険代理店に交通事故の示談行為を認めていないとのこと。

理由は、まず「保険会社の利益確保のため」。
代理店が示談をすることによって、保険会社の利益を損なわないようにするためということ。

二つ目は「弁護士法に抵触するため」だそうだ。
簡単に言うと、弁護士以外の人間が金をもらって法律行為をしてはいけない、ということらしい。
報酬を受け取って、交通事故に関わる調停だのなんだのに手を出してはならないということだ。

ならば、保険代理人の代わりに保険会社が示談交渉してくれるのか?
これも眉唾もののようだ。
保険会社は、ただマニュアルにのっとって、事務的に作業を進めるのみのように思える。
個々の諸事情には、全く構うことなく。
現場に赴いたり、顧客と顔を合わせず、電話のみの対応で終わることもあるようだ。

筆者は報酬なしで示談交渉に挑んでいる。自分の顧客のために。
筆者は、いわば自分の雇い人である保険会社と悶着を起こしてでも、顧客の権利を守ろうとしている数少ない保険代理人なのかもしれない。

交通事故。これ自体、確かにショックな出来事である。
その後に続く示談交渉。これは継続的な緊張を強いられる状態。
人身事故ともなれば、その心中は決して穏やかになるようなことはないだろう。
このような状態で、自分自身が示談交渉をしなければならないのか?
この交渉を保険会社がしてくれないとなれば、何のために保険に加入しているのか?

以前紹介した本と、この本。
車を運転される方は、是非一度読んでいただきたいと思う。
様々な事例を通して、保険会社と保険代理店、加害者、被害者の姿が見えてくるからだ。
万が一、自分が事故を起こした場合、自分が事故に巻き込まれた場合、そして、保険代理店を選ぶ基準を学ぶために、必ず役に立つと思う。
事故後のただでさえ冷静でいられない場所で、頼りになる保険会社(代理人)がいないとなると...。
非常に怖くなる。
私の保険代理店の方は、大丈夫だろうか...?

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2008/11/01

心が伝わる「文章力」センスアップBOOK

プロの添削でみるみる上達! 心が伝わる「文章力」センスアップBOOK
著者:株式会社インソース
監修:舟橋孝之
★★☆☆☆

本のイラストを「きたみりゅうじ」氏が担当していらして、それに惹かれて「表紙買い」してしまった。ま、それだけではなく「文章力」という言葉に興味も持ったのだが...。
内容は、社会人となったばかりの営業担当社員が、Eメールの書き方、営業報告書の書き方、社内報告書の書き方、議事録の書き方などを、順々に学んでいくというもの。

新人くんである「書野くん」と、先輩である「白戸さん」、上司である「出来留課長」「強木部長」などの対話方式で、話は進んでいくので、サクサク読み進むことができる。

まずは、新人くんが土台となる非常に添削し甲斐のある「文章」を作成。
それを、先輩、上司が助言して、押さえるべきポイントを教えながら添削していくという流れである。

う~ん...。
内容的には問題はないのだけれど、今までも読んできたようなことが書いてあるだけだなという印象。特に「あ、これはっ!」といったような発見はなかった。
それと、本旨から外れた雑談というか余談というか、そういった会話がちょこちょこはさまれていて、私には邪魔に思えた。これが、読みやすさを誘うのだよと言われれば、そうなのかもしれないが、私にとっては「余計なもの」だったな。

可もなく、不可もなく、といったところか。
今まで、この手の本を読んだことのない社会人の方には、お薦めできるかもしれない。
帯に書いてあるとおり、「常識以前の」メール・文書のマナーは身につくかな。

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