ナ・バ・テア
- 森博嗣
- 中央公論新社
- 680円
書評/SF&ファンタジー
★★★★☆
「スカイ・クロラ」シリーズの2冊目。
ただし、このシリーズを時系列に並べたときには、一番最初にくるべきなのは本書だ。
episode 1:gride
確かにこれがこのシリーズの初めなんだ。
「スカイ・クロラ」での「僕」である「カンナミ」の上司であった「クサナギ」が「僕」として登場している。
「スカイ・クロラ」では、謎の多い人物であった「クサナギ」。
暗い過去を一人で背負っているような人物であった。
その理由が明らかにされていくのか、それはまだわからない。
ただ、2人の「僕」は似ている。
それも2人を関連づけて考えさせるファクターのひとつかも。
2人は、ただの上司と部下ではない。
それは前作を読んでそう感じた。
過去に何かがあったんだ。
それは一体なんだったのだろう。
ますます面白くなってきた。
episode 2:loop
新しい地へ赴任してからの初めての戦いらしい戦い。
それに乗り慣れた散香(戦闘機の機種名)で戦える。
クサナギは珍しく心が浮揚していたらしい。
クサナギは、地上にいると何だか苦しそうだな。まるで水からあがったペンギンが、ヨチヨチと歩きづらそうにしているように。水の中では、スイスイ泳げるのにね。
クサナギもそう。空に居るときはスイスイ思い通りに動ける。地上に帰ると、歩くことさえ、いや呼吸することさえ苦しそうだ。
戦闘機と一体になって、思うように動き回っているクサナギは、楽しそう。たぶん、敵に撃たれて墜ちたとしても、それを楽しんでいるような気がする。
整備士の笹倉以外、同じ基地の仲間たちと不自然なほど距離を取るクサナギ。「人間」が嫌いなのかな。自分も含めて。自分を完結させたいのにどうしたらいいのかわからない。そんな風に見えて仕方がない。
こんなクサナギを変えてしまう何かが今後起きるはずだ。
一体何がクサナギを変えてしまうのだろう。楽しみだ。
episode 3:stall
初めて「クリタ」の名が出た。
「スカイ・クロラ」で「カンナミ」の前任者の名だ。
ここでクサナギとクリタが出逢うのか...。
クサナギの疑問。
自分たちは普通じゃないのか?
クサナギいわく、自分たちは普通の大人にはなれないけれど、普通の子供であると。
「普通」があるから「普通じゃないもの」ができる。
じゃ、「普通」ってなんなんだってことになる。
自分たちが作り出した
「大人にならない子供たち」
「戦うために生み出した子供たち」
それを自分たちとは違うものとして特別視する。
考えてみれば、勝手な話だ。
チームの一人が戦いで死んでしまう。
このことが思いの外、クサナギに大きな影響を与えたようだ。
いつも冷静な、というより投げやりなクサナギが動揺している。
その結果...。
なるほど、そういうことだったのか。
それともこれから先の展開でそうなるのか。
クリタとクサナギとの関係も気になる。
何があった?
何が起こった?
知りたい。
じゃ、次の章へ進んでみるしかないか。
episode 4:turn & epilogue
クサナギにとって、そしてその上司であるティーチャにとって、大きなターニングポイントだったのかもしれない出来事が起きた。
いや、すでに起きていた。
ただそれが発覚しただけ。それを確認しただけ。
「キルドレ」
戦うためだけに生み出された「子供」。大人にならない、老化しない、いつまでも「子供」。
それを興味深く、物珍しげに観る輩が居る。無神経な質問を「上品ぶって」投げかける輩が居る。
それに腹を立てるほど、クサナギは「子供」ではなかった。
一体なんのために戦っているのだろう。
何故、自然に生まれた子供ではいけなかったのだろう。何故、人工的に作り出されたモノではなくてはならなかったのだろう。
空にしか逃げ場所がない子供を作ってしまう。矛盾を抱えた子供を増やしてしまう。
それは大人たちのエゴではないのか。
矛盾を抱えたまま生きている子供は、きっと正常な心のバランスがとれなくなり、やがて自滅していくかもしれない。
全てが、クレイジーな世界だ。
| 固定リンク
「019)森博嗣」カテゴリの記事
- クレィドゥ・ザ・スカイ(2009.09.12)
- フラッタ・リンツ・ライフ(2009.07.11)
- ダウン・ツ・ヘヴン(2009.07.01)
- ナ・バ・テア(2009.06.26)
- スカイ・クロラ(2009.06.22)
「★★★★☆」カテゴリの記事
- COURRiER Japon 2010年1月号(2009.12.20)
- わが家の母はビョーキです(2009.12.19)
- 医者を悩ます「ニュータイプなうつ病」がわかる本(2009.11.29)
- 相棒 警視庁ふたりだけの特命係(2008.12.15)
- ブーリン家の姉妹〈下〉(2009.11.13)





コメント