113)歴史・幕末

2008/09/25

おりょう 龍馬の愛した女

おりょう―龍馬の愛した女
著者:大内美予子
★★★★☆

こちらは、最後に読んだのは4年ほど前。
ちょっと前に『龍馬のもう一人の妻』で佐那の物語を読んだ後、こちらも読みたくなり、久しぶりに開いてみたのだ。

佐那の物語で感じる切なさとは対照的な、おりょうの姿が印象的な一冊。
ここで描かれる龍馬は、司馬遼太郎著『竜馬がゆく』の竜馬と似ている。
とても、格好いい。
龍馬への想いが叶ったおりょうの目から見て書かれた物語と、叶わなかった佐那の目から見て書かれた物語との差が激しいな。

寺田屋で襲撃された夜の「お風呂」の話がとても心に残った。
薩長同盟が成った夜、龍馬は大歓びで寺田屋を訪れる。
共に喜ぶよりも幕吏に厳しく監視されている場所に龍馬を迎えたことへの不安が先に立つおりょう。
興奮しながら同盟成約の歓びを語る龍馬を抑えて、お風呂に入るように促す。

***以下引用***

「お風呂へ、どうぞ」
と言った。
「風呂か...もう少し後じゃ」
「でも、後になると、冷めますよって」
「冷めたら、焚けばよかろうが」
「そない言わはかったって...」
 おりょうは、おそろしく真剣な顔付きをしていたが、急に涙をぽろぽろこぼした。
「なんじゃぁ」
 龍馬は、あわてた。
「泣くほどのことか」
「そやかて、火ぃ焚いたら煙が出ます...煙が出たら、こんな夜中に怪しまれます...そやさかい、宵の口から、手ぇの入らんほど熱うしておいて...」
 今も、出来るだけ、水の音をさせないように細心の注意をしながら、入りかげんにしてきたのだ - 大げさにいえば、龍馬を風呂に入れるためだけにおりょうは、半日がかりで神経をすり減らして来たのだ。

***引用終了***

この言葉を聞いて、龍馬は逃げるように風呂場に向かう。
そして、お風呂につかりながら思うのだ。
宵の口から手も入らないくらい熱いお風呂を焚いていたならば、この宿の他の人間はどうしたのだろうか、と。
こんな脇目もふらぬことをする女に自分がしてしまったのかもしれない、と。
おりょうには龍馬しか見えていなかったことが、よく伝わってくるシーンだ。

龍馬が近江屋で襲撃され命を落としたことを聞いた時のおりょうの衝撃は、私には思いもよらないほどのものだっただろう。
龍馬が死んだ時、おりょうも一緒に現実の世界から消えたのかもしれない。
龍馬死後の数十年間、おりょうはずっと龍馬と同じ世界で生きていたのだろうか。

佐那もおりょうも、龍馬への思いは「一途」。
その表現方法は全く反対だったが。
「坂本龍馬」が、それだけの男だったということだろうか。

また、「竜馬」に逢いたくなった。
今度は『竜馬がゆく』を読み返してみよう思う。

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2008/09/24

龍馬のもう一人の妻

龍馬のもう一人の妻
著者:阿井景子
★★★☆☆

正直、最後に読んだのは、4年前だ。
視点が違うと、一つの物事が全然違う風に見えるものだということを、改めて感じる作品だった。
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が好きなのだが、その中で描かれている竜馬と、この本の中での龍馬は、違う人のようにも思える。
佐那の視点で見ると、こうなるのか...。
特に「片袖」の話。
『竜馬がゆく』と『龍馬のもう一人の妻』とでは、まるで違う。
どちらが真実なのかはわからないが、『竜馬がゆく』ではさな子(佐那) の気持ちにどう応えたらいいのかわからない竜馬の気持ちが、『龍馬のもう一人の妻』では龍馬を憎いのか愛しているのかわからない佐那の気持ちが、よく表れている。

この小説は、佐那の家に奉公にきた少女「よし」の目を通して、佐那とその家族の生涯が語られている。
龍馬を愛したために、他へ嫁ぐことができずに一生を終えた佐那。
縁談がなかったわけではないのにもかかわらず、龍馬にこだわり続けたのは、何故だろうか。
それほどまでに惹かれたのか、佐那の誇り高い性格ゆえだったのか。
ある意味で自分の一生を台無しにした龍馬。
彼を憎みながら、愛した佐那のやるせない気持ちが、「よし」を通して伝わってくる。

この小説で初めて龍馬を知ったとしたら、龍馬を好きにはならないかもしれない。
だって、佐那と婚約までしておきながら、おりょうと出逢ったあと、佐那から逃げてしまったのだから。
大きな夢を追いかけていた龍馬には、佐那の気持ちが重くなったのだろうか。
中途半端に逃げるのではなく、せめてはっきり振ってやればいいのに。
当時と現代では、男女の考え方も全然違うだろうけど。

この小説は、龍馬への佐那の恋物語とは別に、佐那の生家「千葉家」の人々の盛衰の物語でもある。
北辰一刀流の道場として勢いのあった時代から、大政奉還後の佐那をはじめとする娘たちの苦しい生活。
大きな時代の変化の中での人々の戸惑いも描かれている。

龍馬の妻、おりょうの物語『おりょう 龍馬の愛した女』もお薦めだ。
両者の「龍馬」像を比べてみるのも一興かと思う。

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2008/09/02

天璋院篤姫

天璋院篤姫(上)
天璋院篤姫(下)
著者:宮尾登美子
★★★★★

司馬遼太郎の「竜馬がゆく」が大好きで、幕末ものにはそこそこ詳しいと思っていたんだけど、恥ずかしながら「篤姫」の名はNHKの大河ドラマが始まってから知った。
あらすじをサクッと知って、その人生に興味を持ったので、「天璋院篤姫」を買ってみた。ちなみにドラマは観てない。
宮尾登美子の本を読むのも初めてなのだけれど、とても人物描写・登場人物の心理の表現がうまいなと思った。

歴史小説の中には、起こったできごとが延々と羅列してあって、途中でつまらなくなるものもあるんだけど、司馬遼太郎の小説は、登場人物の何気ない仕草や台詞が散りばめてあって、飽きることなくその世界の中に浸っていられる。この小説も同じ感じ。外様大名の家から「幕末」という時期に徳川幕府へ嫁いだ篤姫の複雑な気持ちが、とても伝わってくる。登場人物が生き生きしてるんだな。

歴史小説って、ほとんどがフィクションで、ノンフィクションの部分なんてほんの少しだと思う。だから、起きた事象のみをただただ書かれていても、おもしろくないんだよね。登場人物を「描いて」ほしい。現代からその時代へと読む人の心をいざなってほしい。そういう意味で、この本には満足。

まだ下巻のはじめの和宮降嫁が決定したあたりまでしか読んでないんだけど、ここまでも結構波瀾万丈。その才覚ゆえに、生家から島津家へ養女ゆくことになり、血の繋がった家族とは二度と逢えない運命に。その後また公家の近衛家に養女となり、将軍の正室となる。
学問に秀でている篤姫でさえ、女は自分の人生を自分で決めることはできないと、信じ込んでいるのが不思議な感じ。男の政治的な欲望の道具になっても、仕方がないものと考えている。
これは武家に限っていえることなのかな? だって、和宮は降嫁するのを頑強に拒否し続けたといっているもの。ま、最終的には降嫁するんだけどさ。

このさきの篤姫と和宮とのやりとりが楽しみ。二人とも気が強そうだし。

でもさ、大河ドラマの宮崎あおい。小説の篤姫のイメージとは少し違う気がするんだけど、ドラマを観ていないせいかな? もう少し、キャリアウーマン的な雰囲気を持った人の方がイメージ的にはあうんだけどな。

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