おりょう 龍馬の愛した女
おりょう―龍馬の愛した女
著者:大内美予子
★★★★☆
こちらは、最後に読んだのは4年ほど前。
ちょっと前に『龍馬のもう一人の妻』で佐那の物語を読んだ後、こちらも読みたくなり、久しぶりに開いてみたのだ。
佐那の物語で感じる切なさとは対照的な、おりょうの姿が印象的な一冊。
ここで描かれる龍馬は、司馬遼太郎著『竜馬がゆく』の竜馬と似ている。
とても、格好いい。
龍馬への想いが叶ったおりょうの目から見て書かれた物語と、叶わなかった佐那の目から見て書かれた物語との差が激しいな。
寺田屋で襲撃された夜の「お風呂」の話がとても心に残った。
薩長同盟が成った夜、龍馬は大歓びで寺田屋を訪れる。
共に喜ぶよりも幕吏に厳しく監視されている場所に龍馬を迎えたことへの不安が先に立つおりょう。
興奮しながら同盟成約の歓びを語る龍馬を抑えて、お風呂に入るように促す。
***以下引用***
「お風呂へ、どうぞ」
と言った。
「風呂か...もう少し後じゃ」
「でも、後になると、冷めますよって」
「冷めたら、焚けばよかろうが」
「そない言わはかったって...」
おりょうは、おそろしく真剣な顔付きをしていたが、急に涙をぽろぽろこぼした。
「なんじゃぁ」
龍馬は、あわてた。
「泣くほどのことか」
「そやかて、火ぃ焚いたら煙が出ます...煙が出たら、こんな夜中に怪しまれます...そやさかい、宵の口から、手ぇの入らんほど熱うしておいて...」
今も、出来るだけ、水の音をさせないように細心の注意をしながら、入りかげんにしてきたのだ - 大げさにいえば、龍馬を風呂に入れるためだけにおりょうは、半日がかりで神経をすり減らして来たのだ。
***引用終了***
この言葉を聞いて、龍馬は逃げるように風呂場に向かう。
そして、お風呂につかりながら思うのだ。
宵の口から手も入らないくらい熱いお風呂を焚いていたならば、この宿の他の人間はどうしたのだろうか、と。
こんな脇目もふらぬことをする女に自分がしてしまったのかもしれない、と。
おりょうには龍馬しか見えていなかったことが、よく伝わってくるシーンだ。
龍馬が近江屋で襲撃され命を落としたことを聞いた時のおりょうの衝撃は、私には思いもよらないほどのものだっただろう。
龍馬が死んだ時、おりょうも一緒に現実の世界から消えたのかもしれない。
龍馬死後の数十年間、おりょうはずっと龍馬と同じ世界で生きていたのだろうか。
佐那もおりょうも、龍馬への思いは「一途」。
その表現方法は全く反対だったが。
「坂本龍馬」が、それだけの男だったということだろうか。
また、「竜馬」に逢いたくなった。
今度は『竜馬がゆく』を読み返してみよう思う。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)




最近のコメント