011)東野圭吾

2009/10/23

さまよう刃

さまよう刃

著者:東野圭吾
★★★★★

重い。とにかく重い。
最近の東野作品は、とにかくテーマが重いのだ。

妻を亡くした男の家族は、愛する一人娘のみだった。
その一人娘が、人間として扱われず、ただの肉の塊のように暴行され殺害され、ゴミのように捨てられた。
そのときから、一人の凶暴な殺人者が誕生した。

娘を殺したのは少年たち。
警察に捕まったところで、そう重い刑にはならない。
少年法に守られているとでもいえばいいのか。
それならば、自分の手で、自分たちのしたことを、心の底から後悔させ、あの世へ送ってやりたい。
そう思う被害者の家族・遺族の気持ちもあるだろう。

刑事たちだって人間だ。
被害者の遺族の犯罪も認めるわけにはいかない。
もちろん、少年たちの犯罪も。
だが、彼らに遺族を捕まえることに、心の底から納得している人間がどのくらいいるだろう。

加害者、被害者の遺族、刑事たち。
どの人間の気持ちも、私には「わかる」とは言えない。
ほんの少し、想像できるだけだ。
本当にその立場に立ったものだけが「わかる」と言えるのだろう。

東野氏の作品の中には、過激な性描写の多いものもある。これもその一つだ。
それに嫌悪を感じる読者も中にはいるだろう。
しかし、それなくしては、被害者の父たちの怒りの感情の大きさは表現できなかったのではないかと、今回は思う。

手元に置いてから半年寝かせて読んだ本書は、本当に心を重くする作品だった。
少年法がどうのとか、被害者の遺族の気持ちをもっと裁判に反映させるようにとか、そういった議論になっていくべき話なのかもしれないが、読了したばかりの私には、何も言えない。
何が正しくて、誰がどうすべきだったのか、考えがまとまらないのだ。
ただただ苦しくて、悔しくて、悲しい。
どこに救いを求めるべきだろう。
私はそれを見つけることができない。
少なくとも、今は...。

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2009/05/01

放課後

放課後
著者:東野圭吾
★★★★☆

言わずと知れた東野圭吾氏のデビュー作である。そして、江戸川乱歩賞受賞作でもある。
東野圭吾氏の作品は、文庫化されたものはほとんど読んでいるのだが、できるだけ時系列に再読していく予定。
今回はほぼ3年ぶりの再読だった。
東野圭吾作品=学園ミステリー
みたいなところも印象づけた作品なのだと思う。

名探偵の掟」や「どちらかが彼女を殺した」など、いろんなタイプの作品を書く方だというイメージを持っていたので、このデビュー作はどんな感じなのだろうかと、ずいぶんワクワクしながら手に取った覚えがある。

主人公はある女子高校の数学の講師。
特に教師になりたくてなったわけではなく、生活のために学校で働いているだけという、どこかクールな男性である。
著者はエンジニアから小説家になったと聞いていたので、教師の経験はなかったのではと思うのだが、どうなのだろう?
この作品の後もいろいろと学園ものの作品を書かれていて、細かい雰囲気までリアルに描かれている。
この女子高校には、様々なタイプの女学生が登場し、どの子もみんな個性的。
こんなに個性的な少女が集まってくる高校であるが、そのこだわった雰囲気作りで違和感なく読めるのである。

体育祭の迫ったある日、生徒指導の教師が青酸中毒で死んだ。しかも、その場所は密室。その謎が解けたか解けなかったかという時期に、第二の殺人が行われた。
本当は誰が誰を殺すつもりで、犯人のミスで殺されたのか、犯人の思い通りに殺人が決行されたのか、すごく曖昧なまま話が進んでいく。そのため、誰をどう疑っていいのか、わからないのだ。

密室トリックや犯人や動機については、だいたい覚えていたので、細かい伏線が張られていることに驚きながら再読した。ショックだったのは、最後の最後の結末。一番大きなオチだし、忘れちゃいかんだろうと思うところが、スポ~ンと記憶から抜けてしまっていた。忘れていた自分に、少し腹が立ったほど。

著者は、この殺人の動機をどのようにして思いついたのだろう...。男性である著者が描く女性の心理。男性だからこそ思いついた動機かも知れないとも思うし、男性である著者が思いついたことに驚きもする。

密室トリックとともに、動機にも特徴のある本格ミステリーだと思う。

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2008/10/26

名探偵の呪縛

名探偵の呪縛
著者:東野圭吾
★★☆☆☆(2個半かな)

導入部は、なかなか話の流れについていけず、困った。
名探偵の掟』を読み終えた直後だったせいかもしれない。
その世界を引きずったまま、読み始めたため、上手く切り替えられなかった。
出てくる探偵は両方とも「天下一探偵」だし、「大河原警部」も登場するのだが、小説の色は全然違う。

天下一が迷い込んだ街は、歴史のない街だった。
誕生してから百数十年しか経っていない街にもかかわらず、誰がどのように創り上げてきた街なのかが全く不明な街。
その街で、街の創設者(クリエイター)らしきミイラが発見され、そばに埋められていたはずの『何か』が盗まれる。
その謎を解くように依頼された天下一が、訪れる先々で関係者が殺害されていくのだが、その街は「本格推理」という概念が欠如した世界だった。密室殺人が起きても、誰も何も疑わず自殺だと決めつけてしまうような。
しかし、天下一探偵が謎を解き明かしていき、最後の最後に、この小説全体の謎が解き明かされるわけだ。
この街を作ったのは誰なのか、盗まれたのは何なのか、誰が盗んだのか...。

この本も「謎解き」をメインに読む本ではない。
著者の「本格推理」への想いを綴った小説だろう。
読み終えた後の満足感はそれなりに得られるのだが、「それなりに」だ。
「本格推理」自体を読みたい人には、お薦めできない。

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2008/10/13

名探偵の掟

名探偵の掟
著者:東野圭吾
★★★★☆

ミステリ・サスペンスのパロディを集めた作品。
超・殺人事件』では推理作家を皮肉って、この本では推理小説(トリック)そのものを皮肉って...。
上手いなぁ。
有名なミステリを元ネタにしているものも何編かあり、それが何か判れば、ますます面白味が増す。

読者も承知している使い古されたトリックを、さも難しい謎のように演出しなければならない名探偵天下一。
名探偵よりも先に謎を解いて、その上で絶対真相には近づかずに的はずれな推理を展開しなければならないワトソン役の大河原警部。
2人の掛け合いが、絶妙。
ミステリ好きの方なら、時折推理小説の世界から離れて語られる2人の本音に、ニヤリとせずにはいられないだろう。

もちろん、この本は「ミステリ」ではない。
トリックとしては無理があるものも少なくないし。
「本格ミステリのパロディ」として、軽く楽しめる本だ。

一番笑ったのは、第十一章の「禁句」。
そんな理由で首を切り落としたの~?って感じである。
あとは、第八章「トリックの正体」ね。
小説ならではのオチだな。

今思えば、「33分探偵」に少し雰囲気が似てるかも。
いや、ちょっと違うか(苦笑)。

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2008/10/09

むかし僕が死んだ家

むかし僕が死んだ家
著者:東野圭吾
★★★★☆

どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」を読んで、東野圭吾の作品を他に読んでみたくなった。
本屋さんで、あれこれ見て、選んだのがこの本。

小学校入学以前の記憶を全く失った女性が、7年前に別れた彼と一緒にそれを取り戻そうとする話。
買ったその日に、読み終えてしまうくらい一気読みした。

登場人物は、2人。
話の舞台も古い屋敷からほとんど動かない。
なのに、最後まで読者を引っ張っていく力は落ちていかない。
読後感もとてもよかった。
あちらこちらに伏線が散りばめられているが、どれも矛盾を感じることなく、結末までたどり着く。
とても計算されて書かれた本だという印象を受けた。

東野圭吾作品を読むのは、これが3冊目だった。
理知的なミステリを書く方だなと思った記憶がある。

「幻の家」の正体には、ビックリした。
思いも寄らないよ。
こんな家、ホントにあったらすごいよね...。

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2008/10/04

容疑者Xの献身(映画)

★★☆☆☆

今日から公開の映画「容疑者Xの献身」を観てきた。
原作については、こちらに書いてある。

う~ん...。なんとも微妙な感じだ。
映画じゃなくても2時間ドラマとかでもOKだったのではないか?
やはり柴咲コウはいらないと思ったし、福山雅治に湯川は合わないと思った。
(念のため書いておくが、福山雅治は嫌いではない。)
ただ、「ダルマの石神」を堤真一が演じるということで、期待半分、不安半分であったが、結果は最高によかった。
堤真一だけが、唯一光っていたように感じた。

原作のストーリーを基本的には忠実になぞっているとは思うが、それぞれの人間の葛藤というか、そういう細かい部分は表現できていなかったように思う。
石神も、最後の決断をするまでに、いろいろと悩んだはずだよ。
自分をパーフェクトな悪役にするために。

時間的な問題?
そんなの、柴咲コウとのいらないやりとりのシーンを作るなら、そっちを優先してよ。

全体的にヤマがなく、淡々と進んでいくので、途中で少し飽きてしまった。

しかし、最後の石神の切ない咆吼。
堤真一は、スゴイと感動した。
彼の演技を観るだけでも、価値はあるかな。
でも、来年くらいにはテレビで放映されるだろうから、それまで待ってもいいような気はする。

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2008/09/22

私が彼を殺した

私が彼を殺した
著者:東野圭吾
★★★☆☆(3つ半)

「どちらかが彼女を殺した」と同様に、最後まで犯人がわからない推理小説。
初読の時期も、同じく3年半ほど前。

容疑者が2人から3人に増え、全員が当初は自分が殺したと思っているところが面白い。
「どちらかが...」は、全編を通して探偵役である「和泉康正」の視点で描かれていた。
こちらは、3人の容疑者の視点で交互に描かれている。

「どちらかが...」よりは、読後感はすっきりしたような気がする。
同じように犯人は最後までわからないのだが、なるほどなと納得はできた。
しかし、あちらこちらのサイトで指摘されているように、穴がないわけではない。
犯人を指摘できる理由がコレならば、加賀刑事には最初から犯人が特定できたのでは...?とも思う。
逆に、犯人がわかるはずがないのでは...?とも思える。

この作品も、ストーリー展開はお見事。
本の世界に引き込まれていくという快感は、久しぶりに味わった。
最後に容疑者を集めて、推理を展開していくなんて、私の大好きな「エルキュール・ポワロ」そっくりではないか。
それだけで嬉しくなるってもんだ。

人間関係の設定も、すごいよな。
殺される「穂高」もひどい男だが、美和子・貴弘の兄妹も、どうなのコレ?って感じ。
普通じゃない人たちが集まって、普通じゃない愛憎劇が繰りひろげられている。

本物の「読者への挑戦ミステリー」。
前述したとおり、あちこちのサイトで議論が繰り広げられているが、単純に答えがこれしかないっていうミステリーは、おもしろくないかもしれないね。
これだけ、いろんな見方ができる方が逆にいいのかも。
クリスティの名作「アクロイド殺し」でも、作者の答えは間違っているのでは?という説もあるし。
これに関しては、また「アクロイドを殺したのはだれか」で紹介する予定。
いつになるかは、未定だが(苦笑)。

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2008/09/21

どちらかが彼女を殺した

どちらかが彼女を殺した
★★★★☆(4つ半くらいかな。)

初読は、3年半前。
初めて出逢った東野圭吾氏の作品である。

何ともストレスのたまる推理小説だった...。
決して面白くないわけではなくて、それどころか、久しぶりに「歩きながら本を読む」ということをさせられた本だった。
家に帰り着くまで待ちきれなかったもんで...。
しかし、最後の最後まで読んでもはっきりとした回答が得られないというのは、ホントにすっきりしないものだなぁ...。
この推理小説は、最後まで犯人が明らかにされない。
ホントに最後までだ。
袋とじになっている『推理の手引き』があるのだが、これを読んだところで、はっきり『この人が犯人だ』と書いてあるわけではない。
確かに、「こうじゃないかな」って推理することはできる。
「これ以外ないよな」っていうところまではいくのだ。
だけど、「これだっ! こいつが犯人だっ!」って断言することができない。

解説を読む前に、ある程度の推測はできた。
たぶんこれがヒントなんだろうと思う箇所はいくつかあったから。
で、解説を読んで、指摘しているところを再読して、「やっぱ、そういうことなのね」と思うのだけれど、すっきりしないんだよな...。
これで、「こいつが犯人だっ!」って言い切っちゃっていいのかな、って思うのだ。
だってさ、これって「癖」でしょ? 
あんまり書くと「ネタばれ」になってしまうので、このへんにしておこう。

それにしても、見事な展開であった。
『息もつかせぬ』とはこういうことなのかと思うほど。
ラストのドキドキ感は、最高だ。
時間が経つのも忘れるほど、本の世界にのめり込んだのは、久しぶり。
『犯人がわからない』というストレスより、ストーリー展開の見事さが上回った。

これ以降、東野圭吾氏の本を読みあさることになる...。

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2008/09/18

超・殺人事件-推理作家の苦悩

超・殺人事件―推理作家の苦悩
★★★★☆

全部で8つの短編集。
ほとんどの作品の主人公は、ミステリー作家たち。
ミステリーを書いている合間に、その舞台裏がちょこちょこ出てくる。
登場するミステリー作家たちは、ある意味で読者を無視して、自分たちの都合のいいミステリーを作り上げていくのだが、それが売れてしまうのも、また皮肉なものだ。

1.超税金対策殺人事件
突然売れてしまったミステリー作家。
収入が急に増えて気前よくお金を使っていたけど、所得税の概算を見てビックリ!
ちょっとでも税金を減らそうと、経費をでっち上げるためのミステリーを書かなきゃいけなくなってしまった。
めちゃめちゃなこじつけミステリーが読める。

2.超理系殺人事件
全く意味のわからない理系の専門用語が飛び交うミステリー。
最後のオチは、途中から予測はできたけど、読後感はすっきり爽快。
だけど、ほとんど読み飛ばした。
だって、意味わからないし(^^;

3.超犯人当て小説殺人事件
売れっ子作家が、次の新作を賞品にして、自分のミステリーの犯人当てゲームで、担当編集者たちを競わせる。
ちゃんと犯人を当てた編集者に、新作をあげるよってことだ。
 「やっぱりね」っていうオチのあとにも、まだストーリーがあるんだよな。

4.超高齢化社会殺人事件
90歳を過ぎたミステリー作家が、はちゃめちゃなミステリーを書く。
さっき殺されたはずの人が、生き返って証言してみたり。
書いた本人が、誰が殺されたのやら、誰が犯人やらわからなくなってるのだ。
この短編集の中では、一番のお気に入り。
でも、オチは、そんなに意外でもなかったな。

5.超予告小説殺人事件
自分の作品どおりに殺人が起きてしまうミステリー作家の話。
ある時、その犯人から連絡がきて...!
最後はちょっと期待はずれ。
だって、「あの人」が犯人だと思ってたのにさ...。
今ひとつのどんでん返しが欲しかったよなぁ。

6.超長編小説殺人事件
ミステリー界の評価基準は何と言っても「原稿枚数」だってことで、とにかく枚数を増やすことに執念を燃やす編集者と、そんなの無理だよ!と言いながらも、文章を水増しして頑張る作家の話。
最終的に書店に並んだとんでもない「超長編小説」。
買いたいとは思わないけど、見てみたい気はするな。

7.魔風館殺人事件
連載最終回になっても、犯人もトリックも何にも思いつかない作家の苦悩を書いた作品。
何だかなぁ...って感じだ(^^;
でも連載している作家って、案外こういう感じなのだろうか。

8.超読書機械殺人事件
その本を読まなくても書評が書ける機械ができた。
それをきっかけに、出版界に異変が...。
なかなか皮肉たっぷりな作品。
読む本を選ぶ基準を「他人の評価」にばかり頼っちゃいけないよってことなのかもしれないよね。

しかしまあ、この作家さんは幅が広いな。
「白夜行」を書いた人と同じ人とは思えないよ。
いろいろと楽しませてくれる貴重な作家さんだ。

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2008/09/01

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身
著者:東野圭吾
★★★★☆

映画化を前に、やっと文庫化されたよ~。
どんだけ待っていたか...。
あまりに長いこと文庫にならないので、単行本を買おうかと何度も思ったけど、待っててよかった(^-^)
うちには本が溢れてるもんでねぇ。
あまり場所をとらない文庫のほうがよいのですよ。
それはさておき感想を。

中盤あたりで、だいたいのトリックは見当がついたけど、それでも読み終わったあとには、なんとも言えない感動が。
ま、リアリティがないと言えばないのかもしれない。けど、こういう展開もアリなんじゃないかな。
これが果たして「純愛」と呼べるのかどうか、それは疑問が残るけれど。
初めて人を愛した男の衝動的な行動なように思える。
非常に、果てしもなく不器用な「愛」の表現法なのかもしれない。
常人である私には理解しがたいことではあるが。

しかし、最初から犯人はわかってるのに、ラストまで謎を残しながら読者を惹きつけていくのはさすが。

映画の予告編をチラッと見たけど、やはり設定が原作とは異なるようで(草薙を柴咲コウに変えてる時点で思いっきり原作から離れてるんだけどね)、石神を堤真一に、っていうのが、どう影響してくるのか興味ある。彼の主演作「クライマーズ・ハイ」も面白かったし。この原作は、近いうちに読もうと思ってる。
福山雅治は好きなんだけど、湯川のイメージとは合わない。スマートすぎるんだな。もっと不器用さが似合う人がいいような気がする。

映画は見に行く予定。バチスタみたいに期待はずれにならなきゃいいな。原作が好きなだけに。

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