102)ホラー

2009/07/28

聖ロザリンド

聖ロザリンド
著者:わたなべまさこ
★★★★★

ホラーコミックである。
初めて読んだのは、小学生の頃だっただろうか? それとも中学生だっただろうか?
一度読んだら一晩中は明るくしなければ、眠れないくらいなのに、何故か何度も読んでしまうのである。

主人公は可愛い美少女ロザリンド。
金色の髪、バラ色のほほ、天使のような微笑みが美しい少女。
しかし、彼女には「人の死」というものが理解できないのである。
自分の欲望を満たしたい、あるいは、その人を助けたい、そのために選ぶ手段が殺人なのだ。だが、「人の死」が理解できない彼女には悪いことをしたという罪悪感は全くない。無邪気に殺人を繰り返す。そこがゾッとするところだ。また、子供であるがゆえに殺人の手段が残酷だったりするんだ。
人を助けたいと思うがゆえに、その人を殺したりするんだよ。
たとえば、何かの弾みで「もう死んでしまいたいわ」なんて言ったりすると、殺されちゃう。
あぁ、怖いよ~、ロザリンド。

1970年に描かれたコミックなので、現在では入手は困難。中古であればまだ手にすることは可能である。私も今回、中古本を購入。思ったよりキレイだったのでホッとした。

ホラーコミックの頂点だと思う一冊だ。

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2009/01/17

恐怖はこうして作られる

恐怖はこうして作られる
著者:藤ダリオ
★★☆☆☆

小さい頃は怪談が苦手だった。部屋を暗くして、子どもたちを集めて、父が怖い話をすることがよくあった。そんなときは、手で耳をふさぎ、コタツに潜り込んでいた。
大きくなるにつれ、ミステリが好きになり、本の中の怖い話は、克服できた。
しかし、お化け屋敷は相変わらずNGである。あと、スプラッタものの映画もNG。サイコ的なサスペンス(そんなもんがあるのかどうかわかんないけど)は、好き。
なんだかねぇ、いきなり「ワ~ッッ!」っつって驚かされるのが苦手なのであって、じわじわ的な怖さは好きなのである。

本書の著者は脚本家であるということもあって、そこからの目線で書かれている。
脚本ができたにもかかわらず上映中止になったりすることもあるのだそう。ま、出演者のスキャンダルであったり、経済的な問題だったりすることだってあるんだけれど、映画の中とかぶるような事件が実際に起きた場合なども、上映中止されることがあるそうだ。事実は小説より奇なりとはいうものの、映画の内容とかぶっちゃう事件が起きたりしたら、やっぱり上映できないよねぇ。

内容は、ホラーにかかわらず、いろんな作品の脚本の描き方に通ずるものなので、ホラーに興味がない方でも読んでみて欲しいと思う。

一番面白く読めたのは、最後に古典落語の「もう半分」を例に挙げて、脚色の仕方を説明している部分。脚本・演出次第で、同じ物語が全く違った印象を与えることになるんだなと驚いた。

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2008/12/14

七つの怖い扉

七つの怖い扉
著者:阿刀田高、小池真理子、鈴木光司、高橋克彦、乃南アサ、夢枕獏、宮部みゆき
★★★☆☆

上記の作家7人の短編小説が1つずつ掲載された本書。
テーマは本書の表紙裏にある紹介文を引用しよう。

***以下引用***

「ねえ、私、生まれてから一度も〈怖い〉と思ったことがないの。あなたのお話で、私に〈怖い〉ってどんなものか教えてくださいな。」---ある作家は哀切と戦慄が交錯する一瞬を捉え、またある作家は「予感」でがんじがらめにする秘術を繰り出した。そしてまたある作家は、此岸と彼岸をたゆたうが如き朧な物語を紡ぎ出した....。
当代きっての怪異譚の語り部が腕によるをかけて作り上げた恐怖七景。

***引用終了***

1.迷路---阿刀田高
昌司は、年上の遊び友達から怖い話を聞かされる。「遺伝っていうやつは、先祖のだれかが人殺しをしていれば、それが頭の中に伝わる。けど、しばらくは隠れている。あるとき、ヒョイと出てくるんだ。」
昌司は、ものをよく忘れる。自分のやったことなのか、そうでないのかがわからなくなるときがあるのだ。ある冬、たくさんの雪が積もった。家の裏にある古い井戸の上に落とし穴を作った昌司。ちょうど通りかかった幼い女の子をおびき寄せて落とし穴に落としてしまった。急に怖くなった彼は、その上から雪を覆い被せ、無かったことにしてしまう。雪も溶けた頃、井戸の中をのぞいてみると、女の子のいた形跡がない。アレは本当のことだったんだろうか....。それとも先祖の記憶が残っているのか...。よくわからないまま時は過ぎていく。
昔話を読んでいるような、そんな感じで読み進めていたのだが、最後の1文で、ストンと物語を落としている。
全てが腑に落ちたような気持ちの良い読後感だった。

2.布団部屋---宮部みゆき
時は江戸。代々の主人が短命であることが有名な酒屋があった。その名を兼子屋という。
女は長生きするのだが、男は自分の子供が17、8になるころ、眠ったように死んでいく。
早死にの評判が定着している兼子屋は、無理な注文も受け、商人としてめいっぱいの誠意で得意客の信用をつなぎ止めていた。奉公人にもきびしいのだが、不思議と奉公人が逃げ出したり、不祥事を起こしたりすることがない。他の商人たちがうらやましがるほどである。
そんな兼子屋で、一人の女中が突然頓死する。16歳であった。理由もわからないまま病死ということで片付けられたのだが、この女中の妹の「おゆう」が代わりに奉公することになる。
さて、兼子屋にまつわる不幸の原因とはなんだろう、奉公人が従順な原因とは?
宮部みゆき氏の時代物は「ぼんくら」を持っているが、江戸の商家の様子が生き生きと描かれている。最後の謎解きも心地よい怖さと安堵を残している。さすが、である。

3.母の死んだ家---高橋克彦
ある作家と担当編集者がパーティの帰りに山道で迷ってしまった。夜も充分に更けた頃、ふと気づくと別荘地のあたりをさまよい歩いていることに気づく。しかも、作家の祖父が昔に所有していた別荘のある地である。
その別荘では、作家が幼い頃に母が自殺しているため、できるだけ嫌なことは思い出さないようにと、意識的に自分を遠ざけていた場所だった。幼すぎたため、記憶も曖昧になっている。しかし、別荘地を歩くごとに記憶がよみがえり...。
この物語の最初の一文は次の通り。
「思えば、すべては偶然などではなかったのかも知れない。」
最後にまたこの言葉を思い出すことになる。
この著者の作品は初めて読んだが、他の作品にも興味が沸いた。

4.夕がすみ---乃南アサ
自分の母の妹の子、つまり従妹の「かすみちゃん」が、立て続けに家族を失った。はじめは生まれて間もない妹。次に両親。ひとりぼっちになった「かすみちゃん」を、自分の家で引き取りたいと母が言い出した。
かわいい「かすみちゃん」が大好きな主人公は大賛成。しかし、兄が反対し、祖母も渋っている。そこを上手く説得し、一緒に住むことに決まった。
美しくて可憐な少女「かすみちゃん」。一目見た瞬間、だれでも好意を持たずにはいられないほど、いじらしく健気なのである。渋っていた祖母も、いつの間にか「かすみちゃん」のとりこに。
しかし、兄だけは相変わらず嫌っている。気味が悪いというのだ。
そんななか、今度は主人公の兄がバイク事故で死亡。悲しみに暮れる一家を慰めてくれたのは、家族を失っても健気に振る舞う「かすみちゃん」だった。
この七作の中で一番気に入った短編。無邪気な「かすみちゃん」に、私も惚れてしまった。
彼女の作品も初めて読んだ。やはり同じく他の作品も読んでみたい。

5.空に浮かぶ箱---鈴木光司
目が覚めた主人公が見た世界は、長方形に切り取られた空だった。とあるビルの排水溝のような溝の隙間に身体を横たえていたのである。夢とうつつとの間をいったりきたりしながら、記憶をたどっていく。
自分の状況を確認しようと、かろうじて動く上半身を少し起こしてみたが、足が見えない。自分の大きなおなかが視界を遮っているのだ。妊娠するようなことをした覚えがないが、妊娠していることは確かな様子。思い出すのは、急死した大学の先生の部屋で見つけたビデオテープ。
なんだか「リング」の続き物のような物語。
「リング」はそれなりにおもしろく読めたが、短編であの恐怖をよみがえらせるのは難しいのではないかと思った。

6.安義橋の鬼、人を噉らふ語---夢枕獏
時は鎌倉時代あたりであろうか...。
あるとき若い者が集まり酒を飲んでいた。ひょんなことから安義橋に出るという鬼の話になる。あれやこれやと盛り上がっていると、理屈者の源貞盛が反論する。そんなもの、いるはずがないではないか、と。どこの世界にもこういう人間が1人はいるものだ。酒の勢いもあってか、みなが「そういうなら、今からその橋へ行ってこい」と貞盛に仕掛ける。後に引けなくなった貞盛は、1頭の馬を連れ、橋へと向かった。残った若者達のうちの1人が、ある提案をした。これから自分が鬼に化けてその橋へ行ってやるというのだ。誰かが見に行かなければ、本当に貞盛が橋まで行ったのかどうか、確認できないではないかという。もしやってきたのであれば、鬼の振りをして驚かせてやろうというのだ。言い出したのは菅原道忠。
さて、橋の上では何が起こったか...。
時代物ということもあり、少し取っつきにくい部分もあったが、最後のオチは、さもあらん、という感じである。

7.康平の背中---小池真理子
特にこれといった感想もない。
ちょっとそっけないと言われるかもしれないが、オチも落ちているのかどうかわからないようなものだし、本書の中では、唯一最後まで読むのがつらかった作品である。

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2008/09/14

お葬式

お葬式
著者:瀬川ことび
★★★☆☆

5つの短編が収録されている。

1.お葬式
ホントに笑えるホラー。
こんな『弔い方』が実在したなら、主人公みたいにドライに対応できるだろうか...? 
絶対無理!! 有り得ない!
あまり書くとネタばれになってしまうけど、このお話は小説だから面白いんだ。
映像とか、漫画なんかにしたら面白味が死んでしまう。
面白いんだけど、ほのかに漂う『恐怖』が心地よい感じだった。


2.ホテルエクセレントの怪談
ホテルには付き物の『七不思議』。
自殺者が出た部屋とか、殺人事件があった部屋とか...。
先輩が新人フロントマンをいじめるネタにはことかかない。
だけどホントに怖いのはその『七不思議』誕生に立ち会った時なのかもしれない。
そんな貴重な経験をした新人フロントマンの話である。
『女の一念、岩をも通す』というけれど、こういうこともできてしまうのか。


3.十二月のゾンビ
いやぁ、これも映像化できない物語。
小説だから、スプラッタ嫌いの私でも読めたのだろう。
夜遅くに突然知り合いのゾンビが訪ねてきたら、どうする?
パニックになるしかない。
主人公が冷静に対応しているからこそ、おかしみが生まれている。
気味悪さの中にも、ゾンビになった女の子の切なさが伝わってくるような...。
それにしても、この娘、ちゃんと成仏したのかな...。
気になるところだ。


4.萩の寺
導入部分はホラーらしく、シリアスな感じ。
嫉妬心から彼女を絞殺してしまった男が主人公。
死体を始末するため山奥にやって来たけれど、道に迷ってしまって...。
やっと見つけた荒れた寺で出会った尼さんが語る昔話とは...。
日本昔話の雰囲気が漂う懐かしい気のする話だ。


5.心地よくざわめくところ
この5篇の中では、一番面白くなかった。
『怖さ』を身近に感じるほどに、『おかしさ』も伝わるものだと思うのだが、その『怖さ』をリアルに感じることができなかったのだ。
ヨーロッパで起こった原子力発電所の火災事故を知って、世界滅亡の日がやってくると騒ぎ出す大学生。
この重大事件をみんなに知らせて、一緒に大騒ぎしよう!とハイな気分で事件を触れ回る。
だけど、みんなはもっと身近なことに忙しくて、相手にしてくれない。
それにもめげずにハイテンションでいられる二人の大学生のめでたさに、拍手を送ろう。

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