111)歴史・平安

2009/06/11

春はあけぼの殺人事件


春はあけぼの殺人事件

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書評/歴史・時代(F)

★★★☆☆

田辺聖子氏の「むかし・あけぼの」を読んでから、私は清少納言と定子中宮のファンになった。逆に紫式部をちょっと嫌いになったりした。しかし、源氏物語は面白い。当然、著者の「あさきゆめみし」も大好きである。

本書はコミック文庫である。
表題の「春はあけぼの殺人事件」は、闊達で物怖じしない清少納言らしい物語だ。
あるとき、一条天皇の母、女院のいる梨壺に鬼が現れるという噂がたち始めた。鬼だの幽霊だのを信じない清少納言は鋭い観察力で鬼の正体を暴いてみせる。
「さすが!清少納言!」とかけ声のひとつもかけてみたくなるほどの活躍。
定子中宮も一条天皇も美しく、散りゆく直前の華やかさを感じた。

同時に収録されているのは「レディミツコ」
時は明治。商家の娘である光子は、オーストリアの伯爵ハインリッヒと恋に落ちる。国境も人種も越えた恋である。なんの壁もないはずがない。いろんな人間からの嫌がらせや、想いが通じない悲しみ。
こちらは実話を元に描かれた作品。

両作品とも、読み応えのある作品である。

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2008/09/15

むかし、あけぼの

むかし・あけぼの―小説枕草子〈上)
むかし・あけぼの―小説枕草子〈下〉
著者:田辺聖子
★★★★★

初めて読んだのは、高校生の頃。
図書館においてあったのを偶然手に取っただけだが、読み終わった後から、平安の世界に惹かれてしまった。
ありふれた現象の中にも、ふと覚える感動。
それは全く気にも留めない人だっているわけで、だからこそ同じ気持ちを分かちあえる人に出逢ったときに、更なる感動を得る。
定子中宮に出逢ったときの清少納言も、そう思ったのだろう。

父である藤原道隆が関白でいる間は、力強い後ろ盾のもとで、主上の愛情を一身に受け、とても華やかな後宮生活を送っていた定子中宮。
しかし、父が病死したあと、関白の位が叔父である道長に移るとともに、その生活は一変して不安定になる。
主上の定子中宮への愛は変わらないが、それだけではどうにもならない世界がそこにはあったのだ。
そんな中でも、やはり明るさと強さを忘れない中宮と、それを支えようとする清少納言。
いつでも前向きに、生きることの美しさ、楽しさを追求しようとする姿は、とても羨ましいものだ。

殿上人との機知あふれる言葉のやりとり、宮中での様々な行事の様子など、本当に生き生きと描かれている。
文章自体も語り口調で書かれているから、とても読みやすい。

下巻では、中宮の死も描かれる。
若宮出産とともに突然の死を迎える中宮。
中宮が逝った後の空虚感といったものが、私にも感じられた。
小説なのだから、読み返せばまた中宮に出逢えるのだが、何度読んでもこの部分では中宮を失う大きな寂しさを感じずにはいられない。
それほど、在りし日の中宮の姿が生き生きと輝いているのだ。
清少納言の、泣くこともできないほどの悲しさも伝わってくる。

私の中の『清少納言』像は、この小説から作られたものでしかない。
この小説の中の清少納言は、勝ち気で楽しいことが大好きで、ウジウジクヨクヨが大嫌いな人。
そして、一途に一人の人を愛すことのできる熱い気持ちを持った人。
そんな清少納言に共感を覚え、大ファンになってしまった。
次は、『枕草子』を、原文で読んでみたいと思う。

清少納言と定子中宮との物語としてだけではなく、清少納言と則光、清少納言と棟世、そして、主上と定子中宮との恋愛小説としての楽しみ方もできる一冊である。

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