001)アガサ・クリスティ(ポワロ)

2008/11/27

ハロウィーン・パーティー

ハロウィーン・パーティー
著者:アガサ・クリスティ
訳者:中村能三
解説:長谷部史親
★★★☆☆

楽しいパーティで少女が残酷な方法で殺害された。
水で満たされたバケツに頭を押さえ込まれ、溺死させられたのだ。
その少女、パーティの準備中のおしゃべりの中で、過去に殺人を見たことがあると口にしている。パーティに招かれていた推理作家のオリヴァ夫人は、それが原因ではないかとポワロに謎解きを持ちかける。
さて、彼女が目撃したと思われる「殺人事件」。
過去に起こったいくつかの事件が候補としてあげられるのだが、いろんな話がゴチャゴチャと並べられているような気がして...。もう少しポイントを絞ってくれたら、まだ読みやすかったのに。

トリックらしいトリックというのもないし、晩年の作品によくある小説の雰囲気や人間関係の機微を楽しむストーリーといったところだろうか。ポワロものじゃなくてノンジャンルだったらよかったかもしれない。

しかし、最後の最後にちゃんとオチを準備しているところが、クリスティらしい。

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2008/11/26

第三の女

第三の女
著者:アガサ・クリスティ
訳者:小尾美佐
解説:石川絢士
★★★☆☆

なかなか事件が起こらず、一体全体何に向かって行くのかわからなくなる。クリスティの中期以降の作品には多い。事件が起きるまでに相当の時間を費やすものが。

ポワロが幸せな朝食を堪能している最中に、若い女性が飛び込んでくる。ポワロを訪ねた理由というのが、
「私、殺人を犯したらしいのです...」

結局ポワロが歳をとりすぎているように見えるから依頼できないと言い残して彼女は帰ってしまうのだが、ポワロは気になって仕方がない。「歳をとりすぎている」と言われたことも相当悔しかった様子。友人である探偵作家オリヴァ夫人の協力もあって、不思議な言葉を残して去った女性の身元を突き止めることに成功した。ただしかし、彼女の言う「殺人」が見つからない。死体なき殺人の謎...。
本当に「謎」が多すぎて、なかなか解きほぐせないせいか、進展が遅く感じた。

それでも結局はあるパターン通りの結末かな。作品中で何度も強調されているものは、やはり重大な意味を持っているのだ。そのあたりに注目して読み進めると、何となく犯人にたどり着く。

ハッピーエンドの結末はクリスティっぽくていい。

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2008/11/25

複数の時計

複数の時計
著者:アガサ・クリスティ
訳者:橋本福夫
解説:柿沼瑛子
★★☆☆☆

正直言って、つまらなかった。
クリスティ作品、特にポワロものに甘い私でも読むのがつらかった...。
やっぱりスパイやなにかが絡んでくると面白くない。
ポワロが安楽椅子探偵に徹しているせいもあるかもしれない。なんだか歳をとってひがみっぽくなった感じがして、ポワロが好きなだけに読むのがしんどかった。クリスティ自身、あまりポワロが好きじゃなかったのか...。

冒頭部分はとてもよかった。
タイプ引受所から派遣されたタイピストがある家を訪れると、沢山の時計があり、全てが4時13分を指している。実際は3時過ぎにもかかわらず、だ。そして床の上には男の死体...。それが何者かもわからないときている。

第一発見者であるシェイラも出生の秘密を抱えているし、その家の持ち主である盲目の女性もなんだか謎めいているし、とても期待を持たせる始まり方だったのに、読み進めるにつれて段々とつまらなくなっていくのだ。
何故だろう?
たぶん飾りが多すぎたんだな。謎のてんこ盛りって感じだった。

読み終わったあとも「やっと終わったか...。」という感想しかなかった。登場人物にも魅力を感じなかったし。

ただ、ポワロが語るミステリ談義は読む価値有り。この部分が一番楽しかった。クリスティのミステリ感が出ている。

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2008/11/23

鳩のなかの猫

鳩のなかの猫
著者:アガサ・クリスティ
訳者:橋本福夫
解説:浅暮三文
★★★☆☆

上流階級のお嬢様たちが競って入校したがるような名門女子校メドウバンクで連続殺人事件が起きる。教師が次々と殺害され、最終的には4人が死んでいくのだ。

その事件の少し前、ある王国では革命騒ぎが起きていた。国王が命を狙われ、王国から逃げ出すため、側近と共に極秘に飛行機に乗り込む。その飛行機は事故で大破し、2人の死亡が確認され、国王の一族が蓄えていた何十万ポンドもの宝石の行方がわからなくなってしまったのである。

この国王の従姉妹がメドウバンク校に入校したことから、宝石が彼女に預けられたのではないかと、あれこれ怪しい人物が近づいてくる。

3教師の連続殺人事件は宝石紛失と関係があるのか、それとも個人的な怨恨によるものなのか...。最後は、意外と言えば意外、そうじゃないと言えばそうじゃない、二面性のある結末となった。
2つの動機が絡む連続殺人。1つの動機には全く魅力を感じないし興味もないが、もう1つの方は私の好きなタイプの犯罪。
無機質な殺人ではなく、非常に人間的な殺人。
だからこそ、何とも言えないもの悲しさが漂う。

それにしても、この作品。ポワロものじゃなくてもよいと思うのだが。浅暮三文氏が解説でも触れていたが、この作品は犯人を当てる「推理」に重点を置いたものとは思えない。
「消えた宝石はどこに!」といった感じのハラハラドキドキを楽しむものだ。だからポワロが活きてこない。ポワロファンとしては、もったいないなと残念に思ってしまう。
ポワロが出てこない方がかえってよかったかもしれない。

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2008/11/22

死者のあやまち

死者のあやまち
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:横井司
★★★☆☆

この作品も10数年ぶりに読み返したのだが、詳細はほとんど記憶になかった。何となくこんな感じだったかなという程度で、一番のキーポイントである「屋敷の持ち主は誰か?」についてはすっかり忘れていた。
動機に繋がる大事なポイントなのに。

オリヴァ夫人にはからきし弱いポワロの困った様子が出ている冒頭部分がいい。
いきなりオリヴァ夫人から電話がかかってきて、「とにかく今すぐこちらに来てくれ、訳は言えない」と言われたポワロ。不満に思いながらも好奇心からか旅支度を始めてしまうのだから、オリヴァ夫人の作戦勝ちといったところか。上手いことポワロを引っ張り出した。

オリヴァ夫人が知人に頼まれ、ある田舎の大きな屋敷でのパーティで行われる殺人犯人捜しゲームの筋書きを担当することになった。
オリヴァ夫人がポワロをこのパーティに参加するようにと頼む。なぜなら、なにか悪い予感がするからだというのだ。
その予感は見事的中。ゲームの最中に被害者役の少女が、本当に殺されてしまう。しかも、パーティが行われた屋敷の夫人も行方不明に...。

実は、あまりオリヴァ夫人は好きではない。本当に支離滅裂すぎるので。
今回もいろいろな推理を展開していたが、少し邪魔だなと感じてしまう。
直感はいいので、ポイントを突いていることは多々あるのだが、なんせ非論理的なのである。

真相に絡むある老婦人のエピソード自体は好きだ。このエピソードだけなら10点満点。母親の切なさが出ている。

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2008/11/21

ヒッコリー・ロードの殺人

ヒッコリー・ロードの殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:高橋豊
解説:JET
★★★☆☆

とある学生寮で小さな盗難事件が連続して発生。盗まれたものは...

靴の片方、安物のブレスレット、
化粧用のコンパクト、高価な指輪、
聴診器、イヤリング、シガレットライター、
古いフランネルのズボン、電球、
箱入りのチョコレート、絹のスカーフ、
リュックサック、ホウ酸の粉末、
バスソルト、料理の本

ポワロがこの寮に乗り込んだすぐあと、一人の寮生が、このうちのいくつかは自分が盗んだんだと告白する。しかし、次のものは盗んでいないと主張するのだ。

聴診器、電球、リュックサック、ホウ酸の粉末

さて、これらは何のために誰によって盗まれたものなのか...?
最後にはポワロの推理によって、全てのものがあるべき場所に収められていくのだが、一見すると何の意味もなさそうなものばかりなのに、それぞれがちゃんとした役割を担っているのだ。ここが面白い。

ただやはり大きな組織とかが絡んでくると、その分だけ私の評価は下がってしまう。個人的な犯行であっても、こういう組織の存在があると、なんだか面白みが減ってしまう。
私の好みには合わないようだ。

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2008/11/19

葬儀を終えて

葬儀を終えて
著者:アガサ・クリスティ
翻訳:加島祥造
解説:折原一
★★★★★

裕福な一家の当主リチャードが死亡し、その葬儀の後で無邪気な末妹コーラが言い出す。
「あら、リチャードは殺されたんじゃなかったの?」と。
その翌日、彼女が惨殺死体で発見される...。
当然リチャードの死が疑われることになる。
病死と診断されていた彼は、本当に「病死」だったのか?
コーラは何かを知っていたために殺されたのか?

殺人のトリックや巧妙な伏線やミスディレクション、どれも素晴らしい作品なのだが、一番の魅力は何と言っても犯人のキャラクターにあると思う。私好みの犯人だ。
自分の欲望のためなら他人の命など簡単に消してしまえるある種の無邪気さを持った犯人には、背筋が寒くなるような怖さを感じる。夢見る中で行われた冷酷な犯行。一度読んだら忘れられない殺人犯だ。

スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズで本作品が映像化された。「名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 2」に収録されている。
トリックがトリックだけに映像化は非常に難しいように思えたが、こちらも素晴らしい作品だった(ネタバレにはなっていないと思うが、未読の方の興趣を削いでしまったとしたら、お許しいただきたい)。
再度鑑賞した後に、感想をアップしたい。

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2008/11/18

マギンティ夫人は死んだ

マギンティ夫人は死んだ
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:仁賀克雄
★★☆☆☆

スキャンダルなどとは何の縁もなさそうなごく普通の掃除婦が自宅で撲殺され、30ポンドの現金が盗まれた。ただ一人の間借人ベントリイの服に彼女に血が付着していたことから、彼が逮捕され、死刑が確定する。
しかし長年の刑事の勘から彼は犯人ではないと感じたスペンス警視は、ポワロに再調査を依頼することに。

一番問題なのは「動機」だ。
財産を持っているわけでもなく、痴情沙汰に巻き込まれそうもない老婦人を殺そうと思う人間がいるだろうか。確かに30ポンドの現金が盗まれているが、それが果たして殺人の動機になるかどうか...。
「動機」を見つけるキーポイントは、彼女の職業。彼女は「掃除婦」だった。いろんな家に出入りすることができたし、その家の秘密も知り得る立場にいたのだ。彼女に秘密を知られてしまった人物、それが犯人である。
(「家政婦は見た!」シリーズみたいだな(苦笑))

確かに二転三転する展開に驚かされるが、私の評価はあまり高くない。15年ぶりくらいに読み返したのだが、詳細はほとんど記憶に残っていなかった。
オリヴァ夫人が登場していたことも忘れてしまっていた。
クリスティ作品の中では少し長めの作品なのだが、話のテンポが遅いというか、なんというか...。
つまりは冗長なのだ。謎解きよりもポワロの愚痴に付き合わされているような、そんな印象を受けた。
トリックはそれほど悪くないのに、少し残念。

クリスティ後期のポワロシリーズは、こんな感じのものが多い気がする。

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2008/11/12

満潮に乗って

満潮に乗って
著者:アガサ・クリスティ
訳者:恩地三保子
解説:中川右介
★★★★★

前日に引き続き、魅力的な女性が登場する作品。
気が強くて負けず嫌いなリン・マーチモント。
か弱くて無垢な心を持った女性ロザリーン・クロード。
2人とも非常に個性のある魅力的な女性だ。
私はリンのほうに、より好意が持てる。

戦地から田舎に戻ってきたばかりのリン・マーチモント。戦争が終わって何もかもが高価になる中、日々の食事の準備にさえも心を悩ませる母を憐れに思いながらも、裕福だった叔父の遺産を狙おうとする母や親族に嫌悪感を抱く。婚約者であるローリーに対しても...。

リンの婚約者であるローリーは戦争中は出征せず、ずっと田舎にとどまっていた。戦地での日々を経験したリンからみれば、彼は少々退屈に見えてしまう。
彼と結婚し退屈な一生を送ることに迷いを感じているとき、見るからに危険な香りのする男と出逢った。裕福だった叔父と結婚したばかりの若い未亡人ロザリーンの兄、デイヴィッド。叔父の遺産を奪った相手になるわけだ。
最初は敵対心を抱くが、徐々にデイヴィッドに惹かれていくリン。それに気付き、ローリーは焦り始める。

デイヴィッドとローリー、リンとロザリーン。
この4人の恋物語としても非常に面白い作品だが、もちろんミステリとしても読み応えのある一冊でもある。
このミステリでは、3つの死体が出てくる。
果たして殺人なのか、自殺なのか、はたまた事故死なのか..。それすらよくわからない。
最後の最後に1人の人間が本性をあらわす。それが少し突拍子ないと言えなくもないのが少々難点だが、驚かされることには間違いはない。
このミステリのポイントも「動機」。
一見単純な犯行に見えるけれど、絡まった糸のように様々な人間の思惑が入り組んで、なかなかほどけてはくれない。

この物語で一番印象に残ったのは、戦争についてのリンの言葉だった。

***以下引用***

子供のころからいつも彼女は、はっきりした頭脳の持主で、ものごとを明快に裁ける人間だった。自分の望んでいることと望まないことをつねにはっきりできる人間だった。いままでは、あなたまかせなふらふらした動きかたをただの一度もしたことがないのだ。
そうだ、それなのだ。そのふらふらした動きなのだ!
あなたまかせの、はっきりした目的のない生き方。それが彼女の故郷に帰ってからの毎日だった。
あの戦場の日々への郷愁が波のようにリンの心を襲った。各自の責任がはっきり規定され、生活は一糸みだれぬ計画にしたがってはこばれ、そして個人の裁断などというものが必要とされなかった日々がリンにはなつかしかった。
だが、そう考えてゆくうちに、リンは急にぞっとしてきた。みんなこんなことを考えているのだろうか、心ひそかにみんなが願っているのはこんなことなのだろうか? これがつまり戦争が人々の心に植えつけていったものだろうか?
戦争の本当の怖ろしさは、けっして肉体的なものではなかった。海にかくれた水雷、そらからの爆弾、荒野を走る車にうちこまれるライフル弾のうなり、そんなものは、肉体だけの記憶でしかないのだ。本当に怖ろしいのは、考えることをやめればずっと楽に生きていかれるということを知る、精神の記憶なのだ。
現在のリン・マーチモントは、入隊したときの頭脳明晰な決断力に富んだ娘ではなくなっている。彼女の頭脳は、職場では専門化され、整然と分類された範疇の一つにはめこまれてしまっていた。そしていま、ふたたび自分自身の、そして自分の生活の主人に戻ったリンは、自分の個人的な問題を把握することから顔をそむけているような心のあり方にぎょっとさせられている。

***引用終了***

戦後だけじゃなく、現代でも当てはまりそうな感じがする。マニュアル化された世界に慣れれば慣れるほど、そしてそれに慣れることが早い人ほど、同じことを感じるのかもしれない。
決して「マニュアル」自体を否定するわけではないのだが...。

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2008/11/11

ホロー荘の殺人

ホロー荘の殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:中村能三
解説:はやみねかおる
★★★★★

ポワロものの一つだが、この作品の中でポワロはそれほど重要な役割は果たしてない。クリスティが語っているように、ポワロはいなくてもよかったように思う。

この物語にはいろいろなタイプの女性が登場。
その類いまれなる天真爛漫さで周囲を困惑させるにもかかわらず、人を惹きつけずにいないアンカテル夫人。
誰よりも強くて、優しくて、知性にあふれるヘンリエッタ。
報われない愛をいつまでも大事に暖め続けて、自分の道をひたむきに歩いていくミッジ。
ただひたすら夫と子供のことのみに自分の人生を捧げ、その愛にすがって生きているガーダ。
常に人に注目されることを望み、全ての男性が自分にはひざまずくものだと信じているヴェロニカ。

ガーダの夫ジョンの元恋人がヴェロニカ。今の恋人がヘンリエッタ。ミッジはエドワードを愛しているが、エドワードはヘンリエッタしか見えていない。
それぞれの愛が絡み合っている中、悲劇が起こる。ジョンが射殺されるのだ。
動機は...? 嫉妬? それとも...。

ミステリとしても、恋愛小説としても、とても読み応えのある作品だ。登場する女性たちがみんな魅力的。一度読んだら忘れられない人ばかりだ。
それに比べると男性陣は、ちょっと不満足かな。それでも彼女たちにとっては魅力ある男たちなんだろうけれど。
私の評価は、魅力的な女性が登場する作品だと甘くなる傾向にあるな。

最後のシーン。
悲しみに埋もれてしまいたいと願いながらも、それができないある女性の言葉で終わる。常に冷静な第三者が自分の中に存在していることに気づいてしまう彼女。一番悲しい女性かもしれない。

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