★★★★★

2009/12/06

黒い部屋の夫 上下巻


黒い部屋の夫 上下巻

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書評/

★★★★★

本が好き!」より、献本いただきました。

まず、本書冒頭の箇所を引用したい。
「私の元夫は、私が妊娠した直後にうつ病になりました。出産や私の入院を経て六年間、家事育児と仕事、夫との闘病に私なりに力を注いだつもりでしたが、力尽きて離婚。私は新しい生活と、やがて新しいパートナーを得、元夫は自殺しました。」

そういう話である。

私は精神疾患をもつ家族の立場に立ったこともあるし、誰にも言えず一人うつ病と闘っていた時期もある。
今は、病院にかかり、うつ病を治療中の立場にある。
患者の家族の気持ちもわからないではなく、うつ病患者本人の気持ちもわからないではない。

今は、本書とは逆に夫に負担をかけながら、家でゴロゴロしている。
夫は出勤の支度をしながら朝食の準備をし、帰宅してからは夕飯の準備をする。もともと家事が得意ではない私は、うつ病というお墨付きを得て、それに甘えながらこの数年間、都合が悪くなると「動けない」と泣き言を言って逃げてきた。
そんな私が本書を読んで、何を語ればいいのだろう。
著者に対して何を伝えればいいのだろう。

突然うつ病になり、しかし自分の好きなことには生き生きと活動し、実家から援助をしてもらっている立場でいながら趣味に大金を費やす夫。にもかかわらず、妻には完璧を求め、仕事も家事も育児も手伝う様子をみせない。
著者は夫から渡されるわずかなお金をやりくりし、食事などの生活費を捻出するのに頭を痛める日々を送る。

うつ病患者は励ましてはいけません。
人はそういう。しかし、自分勝手に甘え放題している夫に対して、それでも励ましてはいけないのか。不満をぶつけてはいけないのか。妻としてどう接すればよいのか。彼女は答えを探して悩み続ける。
そして答えが出ないまま苦しみ続け、結局は離婚という決意をするのである。自分と娘を守るために。

離婚後、元夫は自殺する。
六年間、自分は夫を支え続けた。自分のことを顧みる余裕さえない日々を過ごした。なのに離婚後数ヶ月で元夫を死なせてしまった義父母。二人を恨む気持ちもあったようだ。死に逃げを求めた夫に対する恨みもあった。
死んでしまったら、文句も言えない。何もできない。
何故、死んだのか。誰が悪かったのか。
自分を責めるべきか、いや本人を責めるべきか、いつまで彼女は堂々巡りを続けるのだろう。

死んでしまった彼は、希望通りか否か、彼女の記憶から消えることはないだろう。
彼女が本当に心から笑える日はやってくるのだろうか。

うつ病患者、経験者が読むには、少々辛い本だった。
リアルすぎて、身近すぎて、恐怖さえ覚えた。
ただ、自分で自分の死を選んではいけない。
それは自分のためではなく周りの人間のために。
死んだ人間はそれでジ・エンドだろうけれど、周囲の人間はそうはいかない。重い十字架を背負って歩くようなものなのかもしれない。
それだけは、忘れないようにしたい。

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2009/10/27

トウシューズはピンクだけ


トウシューズはピンクだけ

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書評/ミステリ・サスペンス

★★★★☆

アメリカの田舎町で起こった老婦人キャロラインの失踪事件。
愛犬も荷物も車も残し、元バレーダンサーだった彼女は、降る雪が溶けるが如く消えてしまったのだ。
それに不審に思ったのが、妊娠6ヶ月の主婦ルーシー。
重いお腹を抱えながら、あちこち動き回る彼女。
けれど、キャロラインの行方は全く手がかりさえ掴めず、時だけが過ぎていく。

そんなこんなしているうちに、金物屋の主、強欲爺さんが殺されてしまう。
第一発見者は、よりにもよって妊娠中のルーシーだった。
そして、ルーシーの友人が犯人として捕まってしまう。

正義感あふれるルーシーとその仲間たち。
ルーシーも探偵としての溢れる好奇心が抑えきれない。

田舎町に立て続けに起きる事件の数々。
無謀とも思えるルーシーたちの大冒険。
最初はのんびりムードで始まった物語が、中盤を過ぎたあたりから、ドキドキハラハラが強くなっていく。終盤へ向けてのスピード感は素晴らしかった。一気に読み進めずにはいられなかったほどだ。

ミステリとしては、まぁまぁといったところだけれど、傲慢で残虐な男に立ち向かうか弱い女性といった構図があちらこちらに散りばめられていたり、仕事と家庭のどちらを選ぶのが幸せなのだろうかとか、女性として考えさせられるところは多くあった。しかし、女性も侮れない。いざとなったら強いものだ。

ルーシーが4人目の子供を授かる最後のシーンもさわやかで、好感を持てる一冊のミステリだった。

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2009/10/23

さまよう刃

さまよう刃

著者:東野圭吾
★★★★★

重い。とにかく重い。
最近の東野作品は、とにかくテーマが重いのだ。

妻を亡くした男の家族は、愛する一人娘のみだった。
その一人娘が、人間として扱われず、ただの肉の塊のように暴行され殺害され、ゴミのように捨てられた。
そのときから、一人の凶暴な殺人者が誕生した。

娘を殺したのは少年たち。
警察に捕まったところで、そう重い刑にはならない。
少年法に守られているとでもいえばいいのか。
それならば、自分の手で、自分たちのしたことを、心の底から後悔させ、あの世へ送ってやりたい。
そう思う被害者の家族・遺族の気持ちもあるだろう。

刑事たちだって人間だ。
被害者の遺族の犯罪も認めるわけにはいかない。
もちろん、少年たちの犯罪も。
だが、彼らに遺族を捕まえることに、心の底から納得している人間がどのくらいいるだろう。

加害者、被害者の遺族、刑事たち。
どの人間の気持ちも、私には「わかる」とは言えない。
ほんの少し、想像できるだけだ。
本当にその立場に立ったものだけが「わかる」と言えるのだろう。

東野氏の作品の中には、過激な性描写の多いものもある。これもその一つだ。
それに嫌悪を感じる読者も中にはいるだろう。
しかし、それなくしては、被害者の父たちの怒りの感情の大きさは表現できなかったのではないかと、今回は思う。

手元に置いてから半年寝かせて読んだ本書は、本当に心を重くする作品だった。
少年法がどうのとか、被害者の遺族の気持ちをもっと裁判に反映させるようにとか、そういった議論になっていくべき話なのかもしれないが、読了したばかりの私には、何も言えない。
何が正しくて、誰がどうすべきだったのか、考えがまとまらないのだ。
ただただ苦しくて、悔しくて、悲しい。
どこに救いを求めるべきだろう。
私はそれを見つけることができない。
少なくとも、今は...。

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2009/10/17

ファントム〈下〉

ファントム〈下〉
著者:スーザン・ケイ
訳者:北條元子
★★★★★

何度目かのエリックとの別れを終えた。
何という喪失感。
何度経験しても同じように喪失感を覚える。

下巻は、エリックがペルシャから去り、フランスへ戻るところから始まる。自分の生まれ故郷へと戻るのだ。
そして、今はもう誰も住んでいないだろうと思って訪れた生家には、驚くことに母がまだ住んでいたのだ。

エリックは、自分が出て行ったあと、母は新しい愛を見つけ再婚して、可愛い子供を授かっていると信じていたのだ。それが、たった一人でまだこの家に住んでいたとは...。エリックの想いはどんなものだったのだろう。
しかし、訪ねるのが遅すぎた。
訪ねた日の3日前、母は死んだのだった。

初めて母に触れることが出来る、キスが出来る、そう思って母の亡骸を見たとき、エリックは母が自分に触れるのを嫌がった気持ちがわかった。亡骸は、かつての母のように美しくは無かったのだ。
これで、母との決別を完全に果たしたエリック。
完全に一人で生きていくことができると悟った。

しかし、そこで知った「オペラ座」設計コンテスト!
既に終わったことを知ったエリックの怒りと言ったら!
自分こそがその設計にふさわしいと思っていたのに...。

エリックは諦めなかった。
コンテストで優勝したシャルル・ガルニエに近づき、共同製作することへと話を持って行った。

数々の困難を乗り越えて完成したオペラ座。
その地下室に、やっと自分の最後の居場所を見つけたエリック。
これで、安らかに暮らせるはずだった。
他の人間に顔を見られることもなく、邪魔されることもなく、大好きなオペラは聴き放題。エリックは満足していたはずだ。

しかし、神は冷酷だった。
エリックになおも苦難を与えた。
クリスティーヌだ。
かつて愛して欲しいと願い続けた母によく似た娘。
エリックが認めるほどの美しい声の原石を持つ娘。
彼が心を乱されずにいられようか。

そのあとは、ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」にある通りである。ほとんどは。
苦しいクリスティーヌとエリックとラウルの恋を巡る闘いが始まる。
エリックはファントム(怪人)と呼ばれはしたが、クリスティーヌに対しては最期まで紳士だった。
己を抑えるためにどれだけの忍耐を強いられようとも、紳士であった。

この物語の最後に納得されない読者の方もいらっしゃるだろう。完全なる著者の創作部分だ。
しかし、私はそこにエリックへの救いを見た。

さようなら、エリック。
またページをめくる日まで...。

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2009/10/16

ファントム〈上〉

ファントム〈上〉
著者:スーザン・ケイ
訳者:北條元子
★★★★★

この本と出逢った瞬間を今でも覚えている。
一目、表紙を見たときから、なぜか惹かれた。
手に取り、1ページを見た途端、自分のものにせずにはいられなかった。運命の出逢いだったのかもしれない。
それほどに、私はこの本に惚れている。
というより、この本の主人公エリック(ファントム・オペラ座の怪人)に惚れているのだ。

ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」のファントムの生涯を描いたのが本書である。
エリックはなぜオペラ座に潜み、人を怯えさせ、ファントムと呼ばれるに到ったのか。

エリックは、生まれてから一度も人間からの愛を受けずに育った。
母からでさえも。
原因は、その人間とは思えない醜悪な容貌のため。
誕生日のプレゼントに何が欲しいかと母から聞かれ、5歳の彼がこわごわ言い出したのは、「キスして欲しい」だった。息子がやっとの思いで言い出したその言葉から、母は背を向けた。二度とそんなことを言わないようにと彼に向かって叫びながら...。

ただ、彼にも友達はいたのだ。
彼の容貌も気にせず、無邪気に顔をなめてくれる犬のサシャ。
サシャだけは、エリックの心許せる友。

エリックは本当は敬虔なキリスト教徒だった。
それが教義を捨てたのは、天国へ行けるのは人間だけで、動物は行けないと牧師から言われたとき。
ただ一人の友と共に天国で逢うことが出来ない?!
エリックはそれが許せなかった。
そのときから、彼は神を捨て、悪魔に魂を売ったのかもしれない。

醜い容貌を持つ彼の噂は村中を駆け回り、不吉だと暴力をふるうものも出てきた。現にサシャが殺され、自分もナイフで刺されるに至って、自分がいては母の命さえも危ないと悟ったエリックは、わずか8歳で家を出た。母を守るために。
皮肉にもその日は、母がエリックへの真の愛情を自覚したときだった。
あと1日、エリックが旅立つのが遅ければ...。
あと1日、母が悟るのが早ければ...。

それからジプシーに混じって見せ物にされたり、そこを離れひとりでさすらうごとにエリックは、冷たく強く、そしてある部分でもろく弱い青年へと成長していく。

人間全てを憎むに到るだけの理由がある。
エリックは人間から人間として扱われて来なかった。
たまに容貌を気にせずエリックに好意を持ってくれる人間に出逢っても、いつも最悪の結末がやってくる。
それを学び、ますます人間を憎み蔑むようになる。

残忍な殺人も行うエリック。
それでもなお、惹きつけられずにはいられない。
何度、この本を読み返しただろう。
読み返す度に、切なく哀しくなる。
本をそばに置いているだけで、落ち着かなくなるのだ。

著者もエリックを愛していたのだろう。
だから、エリックは読者である私をも非常に惹きつける。

上巻はペルシャで王室にとどまるところで終わる。
傲慢で我が儘で、残忍な后の欲望を満たすためにペルシャに呼ばれたのだ。
生まれつき正邪の区別がつかないエリック。
殺人自体を厭うことはしない。しかし、意味もなく人に苦しみを与えることを、良しとも思わないはずなのだ。
新しい拷問の道具を作れと言われれば、器用な彼は片手間にでも作ってしまう。本当の彼は美しいものが好きなはずなのに。醜く人間を死に導くものなど作りたくないはずなのに。
自分の意に染まぬ残忍な拷問方法を考え出すようにと、后から命を受ける度に、エリックの心は傷ついていった。それをごまかすために、后に与えられた麻薬に身をゆだねるようになっていく。
自分の心の醜い部分をあらわにさせられることに、エリックは耐えられなくなっていったのだ。

下巻ではさらに新たな苦しみを味わう。
あの運命の少女、クリスティーヌとの出逢いが待っている。
そこへ行くまでの旅も決して楽なものではない。

エリックに救いは訪れないのか...。
神を冒涜するエリックには、神も救いを与えないのか。
ただただ、哀しみと切なさが漂う物語である。

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2009/09/22

非定型うつ病-パニック障害・社交不安障害

非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害 よくわかる最新医学
著者:貝谷久宣
★★★★★

私が3年前に心療内科に通い始めた頃、確かに「うつ病」だったとおもう。不眠が続き、休日になっても何をする気も起きず、ただ不安だけを抱えて、一人でベッドで泣いていた。
その後、薬を処方してもらって治療を始めたのだが、今までただ漫然と薬を飲み続けるだけで、治療に積極的になっていなかったのではなかったかと自分で自分を戒め、今は治療のための本を探しているところである。そのときに見つけた本の中の一冊が本書である。

「うつ病」と「非定型うつ病」との違いを、本書はこう述べている。

うつ病:ずっと気分が落ち込んだまま低空飛行が続く。
非定型うつ病:度を超して気分が浮き沈みする。アップダウンが激しい。

うつ病:物事に興味や関心が無く、喜びを感じることができない。
非定型うつ病:好ましいことや嬉しいことがあると気分が晴れてスッキリする。

うつ病:食欲が無くなり、痩せることが多い。
非定型うつ病:食欲が増し、特に甘いものが欲しくなり、その結果体重が増える。

他にもいろいろ掲載されているが、今の自分と照らし合わせて考えると、非定型うつ病に当てはまるものが多いのである。非定型うつ病と、社交不安障害(2009年から社会不安障害は社交不安障害と言い直されたらしい)を併発しているようだ。

症状の特徴や、それへの対処の仕方、薬の種類、治療への進め方が、比較的大きな文字で書かれており、イラストも多く使われ、非常に読みやすかった。その割に、内容は非常に濃いものだった。素人である私が、なるほどと納得できるまで説明されているということだと思う。

うつ病と非定型うつ病、治療方法として、同じ部分もあれば違う部分もある。なにより、自分がこれだ!と確信できたことが大きい。
次の診療時には、この本を持って行って、主治医と話してみたいと思う。

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2009/08/29

ジュールさんとの白い一日


ジュールさんとの白い一日

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書評/海外純文学

★★★★★

本が好き!」から献本いただきました。

結婚してから数十年、子供も独立して、二人っきりで暮らしているジュールさんと妻のアリス。
アリスの一日は、ジュールさんの淹れるコーヒーの香りで目覚めるところから始まる。
いつものようにコーヒーの香りに誘われ、リビングへと向かった彼女を迎えたのは、ソファで座ったまま硬く動かなくなってしまったジュールさんだった。冷たく、二度と動くことのないジュールさん。アリスは、ジュールさんの死をすぐには受け入れられなかった。

そこで、思いついたのは、ジュールさんと二人っきりで、いつものように一日を過ごしてみようということ。今まで言えずにいたこと。たとえばジュールさんの浮気にどれだけ傷ついたか、自分がどんなこそくな手段を使って二人の逢い引きを邪魔したか。そんないろいろなことをジュールさんと話しながらアリスは1日を過ごす。

息子に、あるいは他の誰かにジュールさんの死を早く伝えるべきだったのかもしれない。
けれど、そうするとアリスとジュールさんとの時間が、最後の時間が奪われてしまう。ジュールさんと静かに過ごしたいアリスの気持ちを無視して、段取りよくジュールさんをこの家から連れ出してしまう。ジュールさんの淹れたコーヒーの香りはまだ漂っているのに。

そこへ一人の少年が現れる。
同じアパートに住んでいるダビッドだ。彼は自閉症。いつも決まったことを決まったとおりに行わないと混乱してしまう。彼は、毎朝10時にジュールさんとチェスをすることを日課としていた。
当然この日もやってくる。
アリスはいろいろとごまかしてみせる。しかし彼はジュールさんはもういないのだと気づいてしまう。そして言うのだ。ここにいるのはジュールさんの外側だと。
彼ら自閉症と診断された人々の発する言葉は、時に真実をぐさりと言い当てる。

最初は混乱と静けさの中で混沌としていたアリスは、ダビッドと話すうちに落ち着いてくる。ここにいるのはジュールさんの外側。外側は冷たいけれど、中は温かい。

アリスさんの心の動き、戸惑い、ジュールさんへの愛、ジュールさんからの愛、遠い昔の思い出、いろんな事を通してこの2人のつながりがよくわかる。
アリスのジュールさんとの最後の1日を邪魔しないで!という気持ちも。
アリスにとっては必要な儀式だったのだ。ジュールさんを見送る大切な大切なセレモニーだった。それは、ありきたりのお葬式ではなく、アリスとジュールさんだからこそのセレモニー。
色彩豊かなこの世界から、白い世界へとジュールさんを送っていく大事な通り道なのだ。

夫を失った妻の物語。
こう書いてしまうとただの安っぽいお涙ちょうだいの物語になってしまう。
ジュールさんとアリスの関係はそうではない。
二人で一緒に歩んできた長い旅の終わり近くで、ジュールさんが先に下車してしまったのだ。アリスは、これからもジュールさんとの思い出を胸に抱きながら旅を続けるのだろう。

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2009/07/28

聖ロザリンド

聖ロザリンド
著者:わたなべまさこ
★★★★★

ホラーコミックである。
初めて読んだのは、小学生の頃だっただろうか? それとも中学生だっただろうか?
一度読んだら一晩中は明るくしなければ、眠れないくらいなのに、何故か何度も読んでしまうのである。

主人公は可愛い美少女ロザリンド。
金色の髪、バラ色のほほ、天使のような微笑みが美しい少女。
しかし、彼女には「人の死」というものが理解できないのである。
自分の欲望を満たしたい、あるいは、その人を助けたい、そのために選ぶ手段が殺人なのだ。だが、「人の死」が理解できない彼女には悪いことをしたという罪悪感は全くない。無邪気に殺人を繰り返す。そこがゾッとするところだ。また、子供であるがゆえに殺人の手段が残酷だったりするんだ。
人を助けたいと思うがゆえに、その人を殺したりするんだよ。
たとえば、何かの弾みで「もう死んでしまいたいわ」なんて言ったりすると、殺されちゃう。
あぁ、怖いよ~、ロザリンド。

1970年に描かれたコミックなので、現在では入手は困難。中古であればまだ手にすることは可能である。私も今回、中古本を購入。思ったよりキレイだったのでホッとした。

ホラーコミックの頂点だと思う一冊だ。

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2009/06/14

ペットの命を守る


ペットの命を守る―いまからでも遅くない病魔からこう救え!

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書評/ルポルタージュ

著者:坂本徹也
★★★★★

本書の「はじめに」から引用したいと思う。

****引用開始*****

この本は、解説書でもハウツウ本でもなく、ルポタージュです。

*************

著者がいろんな分野のプロと呼ばれる方々にインタビューしてまとめてはいるけれど、こうしなさいという文はひとつもない。いろんな意見を聞いて、自分の家族である犬・猫に対してどうしてやるのかを決めるのは一緒に暮らしている飼い主自身なのだ。

本書は4つの章からなる。

第1章 あなたのペットは病んでいる?
ペットは人間と言葉を交わせるわけではない。彼らが何らかの身体の異常を感じたとき、必ず飼い主に対してメッセージを送っているはずである。毎日、共に暮らし、身体を撫でるなどコミュニケーションを取っていれば気づく。
観察力が大事。ただ何となく毎日を暮らすわけではなく、今日はどこか痛めていないだろうか、食欲はあるだろうか、そんなことを考えながら接していくことが大切だと、私は思った。
動物病院に連れて行ったときに、適切に症状を医者に伝えることができるだろうか。これは大切なことである。
どんな病気も早期に発見し、適切に対処すれば、障害は最小限に抑えることができるだろう。
ペットの健康に責任を持つ。ペットを家に迎えようとする人は、是非覚えておいていただきたい。

第2章 一体何を食べさせればいいの?
この章は一番、不安を感じながら読み進めた。ドッグフードの質の悪さ。それは散々言われてきたことである。開封して数ヶ月経っても腐敗することのないドライフード。どれだけの人工保存料が入っているのだろう。
手作りの食事を、といっても、そこまで手をかけられないのが現実だ。今は手作りの食事を通信販売している店もある。しかし、費用がかかる。自分の楽しみを削ってそれをまかなえるのであれば、そうする。しかし、生活までも圧迫させるほどの費用はかけられない。多くの飼い主の方が悩んでいるところであろうと思う。
これから先、ペットフードの安全基準が守られるような体制が整うことを祈るのみである。

第3章 ブリーディングが病気をつくる。
私はペットショップ反対派である。犬や猫に値段をつけることには反対だ。ただそれは、金儲け目当ての悪質なブリーダーがいるからという理由からである。
本書を読んで、ブリーディングがいかに難しいことか、沢山の知識が必要なことか、よくわかった。なのに、ただ金儲けのためだけに、なんの知識も無いくせにブリーディングする人間もいる。それが許せないのだ。
ペットショップの小さな部屋に閉じこめられている犬たちを見ると、切なくなる。人の目にさらされるのもかなりのプレッシャーだ。それに生まれてから3ヶ月くらいまでは母犬や兄弟と一緒にいて、今後生きていくために必要な知識を学ぶ時期なのだ。それなのに、2ヶ月足らずの子犬を販売したりしている。この子たちは上手く犬として生きていけるのだろうか...。
欧米ではペットショップで犬や猫を買うことはできないそうである。ブリーダーから飼い主として認められて初めて家族を迎えることができるのだ。日本は愛玩動物に対する接し方については、かなりの後進国だ。

第4章 問題行動はペットのSOS
ムダ吠え、咬みつく、トイレを覚えない、そんな問題行動。ただ躾ができていないだけではない場合があると言うことを初めて知った。
犬もうつ病になることがあるらしい。本来ならば母犬や兄弟と一緒にいるべきだった時期に無理矢理引き離された犬。そして、ただ小さな箱の中で人目にさらされた日々を送った犬。心に病を持っても不思議ではないと思う。
正しく犬を観察し、必要ならば獣医師やカウンセラー等に相談すること。誤った認識で悪癖を治そうとすると、さらにひどい結果になることもあるらしいので、注意が必要だ。

今、私は1匹の犬と一緒に暮らしている。この子は老犬で、あと数年を待たずして逝ってしまうだろう。
その後、また動物を迎えることは恐らくないと思う。一緒に暮らして、その子を100%幸せにしてあげる自信がないのだ。これまで天国に見送った犬たちも、本当に私のところにきて幸せだったのだろうかと、今でも気になる。
今から動物を迎えようとしている方々には、いろいろと勉強した上で迎えて欲しいと思う。
この本はそのヒントをたくさん与えてくれるだろう。

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2009/05/27

不安のしずめ方

不安のしずめ方―人生に疲れきる前に読む心理学
著者:加藤諦造
★★★★★

実は、まだ本書を読了していない。
ノートにメモしながら読んでいるので、時間がかかってしまい、読了までに数週間かかりそうだ。
しかし、失礼だとは思いながらも、途中経過として感想UPしてみたいと思う。

本書は「不安」がどこから来るのか、どうして「不安」になるのかを解明するのに重きをおいたものだという気がする。
読んでいるうちに、言葉がゆっくりと心の中に染みこんでいき、自分を納得させながら読み進めることができる。
読みながら心が落ち着いていくのも不思議だ。
私は経験はないのだけれど、教会で神父さんのお話を聞いている時やお寺でお坊さんの説法を聞いているときには、こんな気持ちになるのだろうか。

難しい話は一切なく、大事な言葉は繰り返し説明してくれており、本当に心の安定剤になる本だと思う。
興味のある方には、是非お薦めしたい。

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