★★☆☆☆

2009/11/14

相棒 Season1第2話「妄言の果て」

相棒season1(朝日文庫)
相棒 スリム版 シーズン1 DVDセット
脚本:輿水泰弘ほか
ノベライズ:碇卯人
★★☆☆☆

亀山が同棲中の美和子と待ち合わせをしていたフレンチレストランで待ちぼうけを食らっているとき、ふと外をみるとビルの屋上に女性が立っていた。今にも飛び降りそうな雰囲気で!
急いで駆けつけ、何とか確保した女性が発した言葉は...。
「私、人を殺しました」

相棒の杉下右京を呼び、彼女・神林淳子が言う殺人場所である駐車場へ向かうと、そこには死体はなかった...。彼女は確かに殺したと言い張る。自分の車の助手席で男の胸を刺したと。
しかし、死体はない...。
右京は何か引っかかるものを感じるが、無いものは無いのだ。
血痕が残っていないか調べてみたが、反応は出なかった。

そのうち、特命係の二人は刑事部長に呼ばれる。
なんと淳子の夫・神林寿一朗は、国家公安委員を務める大学教授だったのだ。
彼が言うには、「妻は精神的に病んでいまして、殺人事件は妄想の産物です。」とのこと。
これで一件落着としたいらしい。

だが、言うまでもなく右京はそれで納得するような男ではない。

なかなか大がかりなトリックだ。
権力に屈しない右京の姿勢が改めて感じられる作品でもある。そして、右京の度胸の良さも。
亀山くんはまだ一刑事のまま。
相棒になりきれていないのかな。
そんな雰囲気が漂っている。
立派な「相棒」になるのはこれからだ。

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2009/08/30

贅肉 - 短篇セレクション

贅肉―短篇セレクション サイコ・サスペンス篇〈2〉
著者:小池真理子
解説:藤田宜永
★★☆☆☆

4つの短篇が収録された短編集。
表題作「贅肉」をはじめとして、「刺繍の家」「終の道づれ」「どうにかなる」。そして、巻末エッセイとして「たおやかな狂気」。
以下、ちょっとネタバレになっているかもしれないので、未読の方はご注意を。

う~ん...。何だかすっきりしない読後感。
「贅肉」も「刺繍の家」も「終の道づれ」も、なにか少し足りないように思える。

「贅肉」は、幼い頃から才色兼備で、親戚中でもチヤホヤされていた姉の葉子が過食へと走り、その妹の裕美との関係を描く物語。
姉が過食へと走った理由は、母の死と失恋からだ。これは納得がいく。両親が死んでしまい、過食のため太りすぎて満足に動けなくなった姉の面倒を見なくてはならなくなった裕美。彼女は、姉に対して歪んだ優越感を抱くようにもなる。
しかし、姉の死後の裕美の行動は...。
そこなのだ。そこへのつながりが、あまりに唐突すぎて、頭の中は「?」になる。
いろいろ考えてみると、幼い頃からの姉へのコンプレックス、その後の姉の介護中に抱く歪んだ気持ち。それらが合わさって...など、思いつくことはできるのだが、できればそれを考えさせないように、自然に妹の変貌を受け入れ恐怖を感じさせる。それが必要なのではないだろうか。
やはり、その流れをスムーズにする何かが足りない。

「刺繍の家」は、結婚もせずに40年を生きてきた菜穂子が、25年ぶりに幼なじみのえり子に出逢うところから始まる。25年前、幼い頃、鍵っ子だった菜穂子は、毎日のようにえり子の家に遊びに行っていた。えり子の両親からも可愛がられ、楽しい日々を送った懐かしい日々。
ただ、その時間の流れで菜穂子は大人になっていたが、えり子は昔のままだった。そのはしゃぎぶりに少し戸惑いながらも、えり子の家を訪ねることを約束する菜穂子。
さて、この作品も何かが足りないのだ。
結末としては、面白いと思う。書きようによっては、すごく恐怖感を抱かせる内容だ。ただ、素直にそこへと気持ちが流れていかず、唐突さの方が先に立ってしまう。とてももったいないなと思う作品だ。

「終の道づれ」は、このなかでは一番流れが良かったと思う。ただ、やはり足りない部分が...。家政婦である佐知子の過去に、このミステリの最後に繋がるようなエピソードが1つ2つ入っていると、より怖さが増すかなと思う。
だが、このままでも充分、面白いサスペンスになっている。

「どうにかなる」は、ほんとに「どうにかしちゃった」物語。
ここまでどうにかしちゃっていいのだろうか?(苦笑)
主人公の行動は、確かに驚異だし恐怖も感じる。しかし、サスペンスとしてはどうだろうか?
最後の始末を放り投げてしまった結末にしか思えない。

以上、少々つれない書き方をしてしまったが、小池真理子氏の小説は、とても読みやすいのである。だから、屁理屈野郎の私だからこその感想なのかもしれない。素直に読んでいけば、とても面白いものだと思う方も多いだろう。
小説を読むのに理屈は要らないのかなぁ。しかし、どうしても気になってしまう私なのであった...。

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2009/03/15

贖罪〈上〉

贖罪〈上〉
著者:イアン・マキューアン
訳者:小山太一
★★☆☆☆
(★1つ半にしたいところだけれど、下巻の展開に期待して★2つ)

映画「つぐない」の原作。
この映画を観たかったのだが、観る機会を逃してしまったので原作を読んでみることにした。
ちなみに、Amazonでの映画の紹介文は以下の通り。

*****紹介文引用*****

1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。政府官僚の長女に生まれた美しいヒロイン・セシーリア。兄妹のように育てられた使用人の息子・ロビーを、身分の違いを越えて愛しているのだ、と初めて気づいたある夏の日、生まれたばかりの二人の愛は、小説家を目指す多感な妹・ブライオニーのついた哀しい嘘によって引き裂かれることになる。 生と死が背中合わせの、戦場の最前線に送り出されるロビー。彼の帰りをひたすらに待ち、「私のもとに帰ってきて」と手紙をしたため続けるセシーリア。そして、自分の犯した罪の重さを思い知らされるブライオニー。セシーリアとロビーは、再び会えるのか?ブライオニーが罪を贖える日はやってくるのか?三人の運命は、無情な時代の流れの中に呑み込まれていく…。

*****引用終了******

上巻は、性的暴力事件が起こり、ブライオニーがついた嘘によって、ロビーが逮捕されるところで終わる。

正直、読んでいて疲れた。
映画の予告編を観て、この物語に興味を持って読み始めたのだが、文体が私のリズムと合わないのかなんなのか、とにかく読みづらかった。
登場人物が多いうえに、どんどん別の人物の目線へと移動していき、今は誰の目線で描かれていて、誰と誰が話しているのか、それについて行くのに必死だった。
とてもストーリーを楽しむどころではなかったのだ。
それにいろんな修飾が多くて、ストーリーの展開自体が遅い。
矛盾しているように思えるけれど、そう感じたのだ。
同時期に起きたことを、いろんな人の目線で、いろんな修飾をつけて語られていくので、頭の中がこんがらがってしまう。

たぶん読んでいるときの私の調子が悪かったせいもあるだろうけれど...。もう一度、調子の良いときに読み返したら、違う印象を持つかもしれない。

ブライオニーは、嘘をつこうと思ってついたのではなかったのだと思う。ただ、思春期の少女の無垢な正義感からくる思いこみ、家族を救えるのは自分しかいないという思いこみで、たくましい想像力を駆使して組み立てた物語を現実のものとして話しただけなのだ。
しかし、それが間違いであり、その間違いによって大切な人を苦しめ続けていたと知ったときのブライオニーは、この罪をどう償おうとするのだろう。いや、償うことなどできるのだろうか...。

とても興味はあるが、ムズカシイ本はしばらくお休みしてみよう。
もうしばらくしてから、下巻の感想などをUPしたいと思う。
その前にDVDを観ようかなぁ...。

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2009/02/04

ガラスの仮面 43巻

ガラスの仮面 (43)
著者:美内すずえ
★★☆☆☆

一体いつまで続くんでしょうねぇ、この作品。
今回は4年待たされた。その前の42巻の時は6年くらいだったっけ?
小学校の頃から、足かけ30年弱は読み続けてるんだよね、このコミック。
しかし、最近は同じパターンが繰り返されてない?
亜弓と比べられるマヤ。両方が相手の演技に圧倒され、紅天女への情熱をさらに燃えあがらせる。
そこにちょこっと散りばめられる速水真澄とマヤ、マヤと桜小路くんのコイバナ。
で、次に繋がる展開に少し足を踏み入れたところで、次巻へ...。

前は1巻から42巻まで持ってたんだけど、結婚するときに全部コミックは処分しちゃったんだよねぇ。
なので、42巻の内容がはっきり思い出せない(苦笑)。
次は今年の夏あたりに出る予定らしいけど、お願いだから43巻の内容を覚えているうちに発行してほしい。

とか何とか言いながら、結局読み続けてしまうっていうのはなぜだろう?
やっぱり好きなんだよねぇ。「ガラスの仮面」の世界が。

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2009/01/17

恐怖はこうして作られる

恐怖はこうして作られる
著者:藤ダリオ
★★☆☆☆

小さい頃は怪談が苦手だった。部屋を暗くして、子どもたちを集めて、父が怖い話をすることがよくあった。そんなときは、手で耳をふさぎ、コタツに潜り込んでいた。
大きくなるにつれ、ミステリが好きになり、本の中の怖い話は、克服できた。
しかし、お化け屋敷は相変わらずNGである。あと、スプラッタものの映画もNG。サイコ的なサスペンス(そんなもんがあるのかどうかわかんないけど)は、好き。
なんだかねぇ、いきなり「ワ~ッッ!」っつって驚かされるのが苦手なのであって、じわじわ的な怖さは好きなのである。

本書の著者は脚本家であるということもあって、そこからの目線で書かれている。
脚本ができたにもかかわらず上映中止になったりすることもあるのだそう。ま、出演者のスキャンダルであったり、経済的な問題だったりすることだってあるんだけれど、映画の中とかぶるような事件が実際に起きた場合なども、上映中止されることがあるそうだ。事実は小説より奇なりとはいうものの、映画の内容とかぶっちゃう事件が起きたりしたら、やっぱり上映できないよねぇ。

内容は、ホラーにかかわらず、いろんな作品の脚本の描き方に通ずるものなので、ホラーに興味がない方でも読んでみて欲しいと思う。

一番面白く読めたのは、最後に古典落語の「もう半分」を例に挙げて、脚色の仕方を説明している部分。脚本・演出次第で、同じ物語が全く違った印象を与えることになるんだなと驚いた。

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2009/01/12

騙されるな!偽装する日本語90

騙されるな! 偽装する日本語90
著者:吉野秀
★★☆☆☆

タイトル買いしてみたものの、ちょっと失敗したかな。
これまで読んだ本と、大差ない内容だった。

第1章 このペテン語にきをつけろ!
ここでは、いわゆるオトナ語に、上手く切り返そうということが述べられている。
たとえば、「誤解を承知で話すと...」という言葉の裏は「別に誤解されても構わないんだけれど」と言うことになるらしい。聞き手の冷静さを失わせようとするものであるという。
なので、その術中にはまらぬよう、落ち着いた様子で「いえいえ、きちんとお伺いいたしますよ」とにこやかに応対する。決して言い返さず、話が終わったら「いくつか確認してもいいですか」とここでもニコリ。

第2章 横文字言葉にご用心
ここでは、現在のビジネス界に氾濫するカタカナ語について、チクリ。
本当に意味がわかって使ってるのか?という人への対応法がいくつか紹介されている。
ま、私も知らない言葉が出てきたので、少し勉強になったな。

第3章 重複言葉はマヌケに見えるぞ
いわゆる「馬から落ちて落馬する」的な言葉を、知らないうちに使っていないですか?と注意を諭している。
たとえば「違和感を感じる」「最後のトリ」「今の現状」など...。
ちょっとおかしな日本語だよね~。

第4章 自分をバカに見せる軽率フレーズ
これは「若者言葉」に対するものかな。または「アルバイト言葉」とか。
「~みたいな」「~の方になります」「やっぱし」「何気に」など。

第5章 誤用言葉もご用心
この章では、よく使われている慣用句の誤りについて述べられている。
「おっとり刀で駆けつける」。のんびりとやってくる、のように思っている人はいないだろうか?
取るものもとりあえず、駆けつけることをいうのだ。

ただ一つ、ここで述べられている言葉で引っかかるのがある。
「とんでもないです」を誤りとし、「とんでもございません」を正しいとしているのである。
「とんでもない」の「ない」は、「とんでも」と切り離せるものではなかったと記憶しているが...。
「きたない」という言葉を「きたある」と言わないのと同時に、「とんでもない」は、これだけで一つの形容詞となっているはずなのだ。
なので、「とんでもないです」を誤りとするならば、正解は「とんでもないことでございます」となる。
誰か、著者につっこんでみてもらえないだろうか。
私にはそんな勇気はございませんので(苦笑)

という感じで5つの章にわけて、日本語にありがちなフレーズにチャチャを入れている感じ。
最後の章で、安倍元総理、福田前総理の辞任会見文を、著者が添削しているので、なるほど文字にしてみると、なかなか性格が表れていて面白いなと思った。

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2008/12/16

ここまで「気がきく人」

ここまで「気がきく人」―文句なしに凄い!
著者:山形琢也
★★☆☆☆

社会人としての気のきかせ方などについて述べられた本である。
具体的な事例がいくつも掲載されていて、わかりやすいとは思う。ただ、新しい発見というものはなかったように思うし、事例自体もなにやら気のきかせすぎというか、「そこまでやるか、普通?」といった感じで、個人的には受け入れがたいものがいくつかあった。ま、だからこそ「文句なしに凄い!」ということなんだろうけれど。

もちろん逆の「気のきかない人」の具体的事例も掲載されている。
この手の本を一冊も持っていないという方には、お勧めできるかもしれない。

社内の上司・同僚・部下に対して、また顧客に対して、取引先に対して、いろいろと気を遣わなければならない社会人って、しんどいなぁと改めて思った。
これが無理なく無駄なくこなせるようになると、「仕事ができる人」になるのかな。

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2008/11/25

複数の時計

複数の時計
著者:アガサ・クリスティ
訳者:橋本福夫
解説:柿沼瑛子
★★☆☆☆

正直言って、つまらなかった。
クリスティ作品、特にポワロものに甘い私でも読むのがつらかった...。
やっぱりスパイやなにかが絡んでくると面白くない。
ポワロが安楽椅子探偵に徹しているせいもあるかもしれない。なんだか歳をとってひがみっぽくなった感じがして、ポワロが好きなだけに読むのがしんどかった。クリスティ自身、あまりポワロが好きじゃなかったのか...。

冒頭部分はとてもよかった。
タイプ引受所から派遣されたタイピストがある家を訪れると、沢山の時計があり、全てが4時13分を指している。実際は3時過ぎにもかかわらず、だ。そして床の上には男の死体...。それが何者かもわからないときている。

第一発見者であるシェイラも出生の秘密を抱えているし、その家の持ち主である盲目の女性もなんだか謎めいているし、とても期待を持たせる始まり方だったのに、読み進めるにつれて段々とつまらなくなっていくのだ。
何故だろう?
たぶん飾りが多すぎたんだな。謎のてんこ盛りって感じだった。

読み終わったあとも「やっと終わったか...。」という感想しかなかった。登場人物にも魅力を感じなかったし。

ただ、ポワロが語るミステリ談義は読む価値有り。この部分が一番楽しかった。クリスティのミステリ感が出ている。

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2008/11/18

マギンティ夫人は死んだ

マギンティ夫人は死んだ
著者:アガサ・クリスティ
訳者:田村隆一
解説:仁賀克雄
★★☆☆☆

スキャンダルなどとは何の縁もなさそうなごく普通の掃除婦が自宅で撲殺され、30ポンドの現金が盗まれた。ただ一人の間借人ベントリイの服に彼女に血が付着していたことから、彼が逮捕され、死刑が確定する。
しかし長年の刑事の勘から彼は犯人ではないと感じたスペンス警視は、ポワロに再調査を依頼することに。

一番問題なのは「動機」だ。
財産を持っているわけでもなく、痴情沙汰に巻き込まれそうもない老婦人を殺そうと思う人間がいるだろうか。確かに30ポンドの現金が盗まれているが、それが果たして殺人の動機になるかどうか...。
「動機」を見つけるキーポイントは、彼女の職業。彼女は「掃除婦」だった。いろんな家に出入りすることができたし、その家の秘密も知り得る立場にいたのだ。彼女に秘密を知られてしまった人物、それが犯人である。
(「家政婦は見た!」シリーズみたいだな(苦笑))

確かに二転三転する展開に驚かされるが、私の評価はあまり高くない。15年ぶりくらいに読み返したのだが、詳細はほとんど記憶に残っていなかった。
オリヴァ夫人が登場していたことも忘れてしまっていた。
クリスティ作品の中では少し長めの作品なのだが、話のテンポが遅いというか、なんというか...。
つまりは冗長なのだ。謎解きよりもポワロの愚痴に付き合わされているような、そんな印象を受けた。
トリックはそれほど悪くないのに、少し残念。

クリスティ後期のポワロシリーズは、こんな感じのものが多い気がする。

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2008/11/07

愛国殺人

愛国殺人
著者:アガサ・クリスティ
訳者:加島祥造
解説:小森健太朗
★★☆☆☆

クリスティお得意の童謡殺人の一つ。マザー・グースをよく知っていたなら、もっと楽しめるんだろうなと思う。
日本の童謡(子守唄、手鞠唄)をモチーフにした殺人が、横溝正史氏の金田一シリーズでもある。童謡の持つ無邪気さと、殺人の残忍さのギャップがあればあるほど、恐怖を感じる。
マザー・グースにあまり親しみを感じていないためか、この恐怖の部分が味わえなくて、残念だった。

英国ではタイトルが「One,Two,Buckle My Shoe」だったそうだ。それが米国版では「The Patriotic Murders」に替えられた。日本での「愛国殺人」というタイトルはここから来ている。最初は内容とちぐはぐな気がして、意味がわからなかったのだが、小森健太朗氏の解説を読んで納得した。なるほど、よく考えられたタイトルである。

しかし、そのタイトル通り、政治色が少し強くて、私の好みには合わなかった...。そうではなくて、遺産狙いや痴情沙汰と絡めるとかだとしたら、もっと面白かったのに。

トリックとしては、派手なものがあるわけではないのだが、いろんなところに細かな伏線が張られていて、読みながら何度も、前の方に頁を戻したりした。この点、犯人がわかった後に読み返してみても、楽しめる作品である。

ポワロに真相を突きつけられたとき、自分以外の命は虫けら同様に価値がないと言う犯人に対し、ポワロが言う。

「私のたずさわっているのは自分の命を他人から奪われない、という権利を持っている個々の人間に関することです。」

例えどんな理由があろうとも殺人は認めないというポワロの一貫した姿勢に改めて感動する一作。

物語の最後に心地よい"オチ"があることの多いクリスティ作品だが、この作品でも、それがある。ある人物にポワロがしてやられるのだ。
ずっと何かを隠しているらしいということは感じていたのに、それを突き止められなかったポワロ。本人からその真相が告げられたとき、ポワロはさぞかし悔しかっただろうな。

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